エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2015年03月05日

地元への投資(2015年3月2日掲載)

 

 最近「スローマネー運動」という米国発の動きが世界に広がっています。

 これは「地元の小規模な食料業者への投資」を呼び掛ける運動で、これまでに3900万ドル(約46億円)が米国の367の小規模な食料事業者に投資されています。
 スローマネーと名付けた理由は、「お金を"地に足のついたもの"にしなくてはならない。速すぎるお金、大きすぎる企業、複雑すぎる融資――私たちはお金をスローダウンしなくてはならない」という問題意識です。

 スローマネー運動は2008年に立ち上げられ、2009年には投資を募るための第1回全国大会が開かれました。
 大会では、将来性のある食料事業者が自分たちの事業についてプレゼンテーションを行い、投資を集めます。
 このスローマネーのイベントは、米国の各地や米国外でも行われており、スローマネーの地域ネットワーク・グループは、全米に21グループ、そのほか、フランス、スイス、カナダ、オーストラリアにも誕生しています。

 そして「スローマネー原則」に署名した人も3万人を超えています(私も署名しました!)。
「スローマネー原則」とは、「食料安全保障と食べ物の安全性とアクセスを高め、栄養と健康を改善し、文化的・環境的・経済的な多様性を促進し、"地球から取り出して消費する"経済から、"保全と修復"する経済への移行を加速する」ことをめざすものです。
「20世紀は、『安く買って高く売る』『いま儲けて社会のためのことは後で』 という時代だったが、21世紀は、地球の扶養力、コモンズ(共有物)への配慮、 場所の感覚、非暴力の原則に基づく『育む投資』の時代となる」として、「もし私たちが自分の資産の50%を、住んでいる場所から50マイル以内に投資したとしたら、どんな世界になるだろうか?」と呼び掛けています。

 経済の再構築を投資という側面から追求するこのスローマネー運動は、クラウド・ファンディングなどと並んで、金融分野で5指に入る流行だと評価されるほど、大きな流れになっています。

 日本でも「地方創生」がブームのようになっていますが、「いかに中央からお金を引っ張ってくるか」だけでなく、「いかに地元の人々のお金を地元に投資してもらうか」も重要ですよね。
 政府からの補助金や大企業の誘致などは、頼れる間はラクですが、「ずっと安定して続くことは確実なのだろうか」と思うと、これからはどんどん難しい時代になってくるでしょう。
 そうしたとき、地元の人々のニーズに応え、地元の人々のお金を投資してもらって、地元の産業や経済の持続や安定性に寄与する事業者のあり方が、事業者にとっても地域にとっても大事になってくることでしょう。

 日本でもスローマネー運動のような流れが出てくることを願っています。

 

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