エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2015年11月18日

木質バイオマスで地方創生 オーストリア「ギュッシング・モデル」とは何か

 

出典:岩波書店「世界」no.876 2015年12月号


「去年1年だけでも、日本から350人もの方がいらっしゃったのですよ。何があったのでしょう?」。8月20日、ギュッシングの「ヨーロッパ再生可能エネルギーセンター」で、にこやかに私たちを迎えてくれたのはヨアヒム・タユメルさん。

「日本では、ギュッシング・モデルを大きく取り上げた『里山資本主義』という本が数十万部も売れているのですよ。人口減少社会に突入して、どの地域もどうやって生き残るかに必死で、地方創生を! というかけ声が広がっているんです。日本は、わずか4%というエネルギー自給率の低さが大きな問題なのですが、国土の70%近くが森林という、オーストリア以上の森林国ですから、バイオマスエネルギーを地域起こしの糧にできないか、と考えている地域がたくさんあるのです」と答えると、ウィーンから私たちを連れてきてくれたオーストリア政府の農業・森林・環境・水管理省のゴットフリート・ラマースさんは、「ギュッシングは、オーストリア国内より、日本での方が有名なんじゃないかな?」


かつてのギュッシング

ギュッシングは、首都ウィーンから160km、車で2時間ほど東へ行ったところにある人口4,100人の市です。面積は49.3 km2と江戸川区ほどの大きさの町が、小高い丘に立つ古城を取り囲むように広がっています。周辺地域も含めたギュッシング郡全体では、面積485 km2、人口は2万6,500人です。オーストリアの東端にあるブルゲンランド州の南部に位置しており、東へ10kmほど行くとハンガリーとの国境です。

ここは、1980年代終わり頃、「オーストリアで最も貧しい地域」でした。

第一次世界大戦後、ハプスブルク帝国が滅亡し、この地域はオーストリアとハンガリーに分断されたのですが、そのとき、ブルゲンランド州にあった大都市はハンガリーに属することになり、オーストリアにはギュッシングを含め、弱小の村しか残りませんでした。病院や学校といったインフラや施設も、ハンガリー側に行ってしまいました。

第二次世界大戦後に東西冷戦が始まると、この地域は、共産圈である東ヨーロッパ諸国との「鉄のカーテン」に接する地となりました。そのため、投資も事業開発も行われませんでした。

この地の南北をつなぐ道路ができたのも1965年のこと。1995年までの40年間、企業立地件数はゼロ。小規模農業で食べ物はほぼ自給していたものの、産業はなく、失業率も高く、7割の住民はウィーンなど都会への出稼ぎ労働者として働き、週末に帰ってくる生活をしていたといいます。町から出ていく人も多く、これが1980年代終わり頃のギュッシングの状況でした。


V字回復の転換点

『里山資本主義』では「1990年、ギュッシング議会は、全会一致で、エネルギーを化石燃料から木材に置き換えていくことを決定したのである」と、その転換点を紹介しています。また、別の文献では、「過疎化の進行に危機感を強めたギュッシング市長のペーター・バダッシュ氏が地域経済の状況を分析・検証した結果、地域にある再生可能な資源によるエネルギー自給をめざすことにした」と、市長の発案と強いリーダーシップが転換点であると紹介されています。

議会や市長のリーダーシップももちろん大きかったのですが、タユメルさんはこう説明してくれました。

「オーストリアで最も貧しい地域」を何とかしようと、オーストリア政府の地域開発協会が、ギュッシングの状況を分析しました。その結果わかったのは、「エネルギーを化石燃料に頼り、そのすべてを外部から購入する構造になっているため、大量のお金が域外に流出し、貧しい地域になっている」ということでした(ちなみに、日本は現在でもこの構造のままです)。

数字を見てみると、1991年にギュッシングが使ったエネルギーの量(電力、熱、自動車用燃料を合わせたもの)は、12万6,500MWhでした。そのエネルギーを入手するために、620万ユーロが域外へ流出しており、域内には65万2,700ユーロしか残っていませんでした。

分析結果をもとに、「どうしたら状況が変えられるだろうか?」という議論が始まりました。地域開発協会の提案は、「自分たちのエネルギーを自分たちで生産し、それを購入することにすれば、お金は地域に残る」というものでした。

ギュッシングの当時の市長や行政のエネルギー担当者たちは、その「地元によるエネルギー生産」というコンセプトを取り入れることを決めました。「化石エネルギーに頼らない地域になる」という目標を掲げ、行政と投資家が協力して、実際に進めることになったのです。

「ギュッシング・モデルとは、ずばり何ですか?」と尋ねると、「地域に存在する再生可能資源を用いて、地元のエネルギー生産を分散化する戦略。地域の付加価値を強化するために、化石燃料からの自立を図ることをめざすものです。この戦略は資源が入手可能な地域ならどこでも、個々に適用することができます」

 

再エネによるエネルギー自給自足

エネルギー戦略として、省エネと同時に進めたのが「木材、農業残余物・廃棄物、太陽からのエネルギー生産」です。同時に、1996年にギュッシングに「ヨーロッパ再生可能エネルギーセンター」が設立されました。このセンターは、さまざまなオーストリア・ヨ ーロッパのパートナーやネットワークと協働しながら、「地域に根づいた省エネと再エネの生産・利用」のコンセプト開発を進めるとともに、ギュッシング地域のエネルギーに関するすべての取り組み(地域には30を超えるさまざまな再工ネ技術プラントがあるそうです)の中心的存在となっています。

取り組みはこのように進んできました。
・1990年~ 省エネ施策、バイオマスによる熱生産開始
・2001年~ 木質バイオマスと太陽光発電による電力生産開始、木材ガス化による合成天然ガス、合成液体燃料の生産開始
・2008年~ バイオメタン生産の実証プラント開始
これらに対する投資額は、地域熱供給プラントに800万ユーロ、バイオマス発電所に1,350万ユーロ、蒸気タービンに450万ユーロ、合成天然ガスプラントに950万ユーロとのことでした。

バイオマスと太陽光を用いて、電力と熱だけではなく、ガスや液体燃料までつくっているのはすばらしいなあ! と思います。そのための高度な技術開発ができる地として自らを位置づけ、投資を呼び込めたことが、ギュッシングの最大の成功要因でしょう。

すばらしい実績を挙げているもののひとつが、バイオマスによる地域熱供給システムです。1996年から少しずつ熱供給配管を延ばしており、現在の配管総距離は35kmだそうです。

「快適さを失うことなく、エネルギー価格は安定しているという説得力のある議論ができるんですよ」と示してくれた暖房コストのグラフ(図1)を見ると、1988年から2009年まで、石油価格は大きく変動・上昇している一方で、バイオマスによる地域熱供給による暖房費は安定していることがわかります。

       図1 石油価格と比較した暖房のコスト(1988-2009年)
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このような取り組みを進めることで、2005年にはエネルギー購入のために域外に流出するお金はゼロになりました。2005年時点で、ギュッシングの町が使った18万5,500MWhのエネルギーはすべて域内で賄い、その結果、1,360万ユーロが域内に残りました。1991年にはエネルギー代金として620万ユーロが域外へ流出していたのですから、「大転換」であったことがわかります。

「現在のエネルギー収支はどうなっていますか?」と尋ねると、2010年の熱、電力、自動車用燃料の需要と、2011年のエネルギー生産量を比べた数字を見せてくれました。

熱は、2010年の年間需要は60GWh(うち30GWhは民生用)、一方、生産量は4つのバイオマス地域熱供給と3つの熱電併給プラントを合わせて72GWh 。熱の自給率は120%となります。

電力は50.2GWh(うち8GWhは民生用、36.4GWhは産業用)の需要に対し、3つの熱電併給型発電所で100GWhですから、自給率は200%です。

自動車用燃料は、29GWh(うち17.5GWhは民生用) の需要に対し、メタン化による自動車用燃料生産量が8.4GWhですから、自給率は29%となります。

これがギュッシングのエネルギー収支です。現在は、自動車用燃料の自給に向けて、研究開発や実証・実用化の取り組みに力を入れているそうです。

このように、化石燃料から再エネへの切り替えを強力に進めた結果、1996年には年間3万7,000トンだったギュッシングのCO2 排出量(図2)は、2009年には年間2万2,500トンへと大きく削減されました(緑の線)。グラフを見ると、「そのまま化石燃料を使い続けた場合」(赤の線)に比べて、大きく減らしていることがわかります。

       図2 ギュッシングのCO2排出量
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再エネ研究・実証のメッカに

「ギュッシングの再エネがうまく行ったとしたら、その大きな要因は研究開発の拠点となるよう、積極的に取り組んだことですね」とタユメルさん。

ギュッシングのヨーロッパ再生可能エネルギーセンターは、再エネに関するフィールドツアー(「エコ・エネルギー・ツーリズム」と呼ばれています)やレクチャー、トレーニングを展開しており、国や国際レベルでさまざまな賞を授与されるなど、その取り組みは高く評価されています。そして、このセンターの本部が置かれている「ギュッシング・テクノロジー・センター」は、多くのパートナー企業や機関と組んで、燃料電池、木材ガス化による水素やメタンの生産、熱冷房など、再生可能エネルギー分野の最先端の研究を進めている技術開発機関です。

センターで説明を聞いたあと、再エネ施設や技術開発施設を見学しました。バイオマスによる地域熱暖房プラント、バイオディーゼル工場、バイオマス発電所などが点在するギュッシングは、町全体が「再エネ研究・実証のフィールド」のようです。多くの人が訪問し、学んだり、共同研究したりする理由がわかるような気がしました。実際、そういった訪問・滞在客が大変増えたため、センターの隣に新しいホテルができているほどです。

 

ギュッシング・モデルの生み出したもの

再エネの技術開発・実証・実地での活用のメッカであるギュッシングには、これまで50を超える企業が新規に立地し、新規の雇用が1,100以上創出され、年間900万ユーロをもたらしています。出稼ぎに頼っていた貧しい地域が、今では、多くの企業や研究者、見学者の集まる魅力的な地域に変わったのです。

ギュッシングに立地を決めた企業は特に、「安価な熱と電力の安定供給」に魅力を感じているとのこと。「工場からの木屑や端材などのごみは燃料用に買い取ります」という呼びかけに、大手フローリング会社なども応じました。ヨーロッパ再生可能エネルギーセンターへ向かう道沿いに、広大なフローリング工場が見えます。木材を原材料として工業生産を行い、生産プロセスから出る木質系の廃棄物を燃料として販売し、その燃料で生産された熱や電力を購入する――地域でのエネルギー循環をすることで、エネルギーコストの域外流出なしに、外部へ販売できる付加価値を創造しているのです。

現在、オーストリア全体で66のモデル地域がギュッシング・モデルを進めています。なかでも、ギュッシング周辺の18の地域は「エコ・エネルギーランド」連盟を結成し、定期的に会合を開き、インターネットによる情報プラットホームを設置し、エネルギー管理者を置いてプロジェクトを進めています。そのめざすところは、「2020年までに化石燃料への依存をゼロにする」こと。オーストリア以外でも、ポーランド、スロバキア、スロベニアなどでもこのモデルを取り入れるところが増えているそうです。

「多くの周辺地域が同じモデルを取り始めたとき、森林資源は大丈夫なのですか?」と尋ねたところ、「現在の木材消費量は、年に4万4,000トンです。この地域では、1ヘクタール当たり年間に5トン以上森林資源が増加します。現在、木材を生産している地域でも森林蓄積量は減っていませんし、未活用地域の広さを考えると、まだまだ十分に回っていきますよ」との答えでした。


日本でギュッシング・モデルは可能か

全国で最も貧しい地域が、域外へのお金の流出を絶とうと、大きな流出源であったエネルギーの自給自足をめざし、その過程で、再エネ技術の開発・実証・実地での利用に関わる多くの研究機関や企業の誘致に成功し、多くの新規雇用を創出し、税収を増加させ、貧しさから脱却するとともに、エネルギーの自立による安心感やCO2排出の大幅削減を手に入れる――ギュッシングの事例は、日本の多くの自治体や地域がのどから手が出るほどほしいと思っている"地方創生"の華やかなサクセス・ストーリーに思えます。だからこそ、多くの見学者を日本から惹きつけているのでしょう。

もちろん、ギュッシングの市長や議会、技術専門家たちのリーダーシップは大きな原動力となっており、工場との熱・電力と工場からの木質廃棄物のやりとりなど、地域でのエネルギー循環のしくみづくりもすばらしいと思います。

しかし、「では日本でも同じようなリーダーシップを発揮すれば、同じようにうまくいくだろうか」と考えると、「今のままでは難しいのではないだろうか」と思わざるを得ません。ギュッシングの成功を支える2つの要因が、日本には不在またはきわめて弱いと思うからです。

EUの高い目標

ギュッシングの成功は、地域が独力でがんばった結果ではありません。そもそも、全国で最も貧しい地域であるギュッシングを何とかしようと、現状を分析し、ギュッシング・モデルの土台を築いたのは、オーストリア政府の地域開発協会です。ヨーロッパ再生可能エネルギーセンターも、EU・国・州がギュッシングを選び、資金を投下して設立したものです。

今回、見学させてもらった地域熱供給プラントや再エネ研究施設などの多くに、星がぐるりと並んでいる欧州旗のマークがついていました。つまり、EUからの補助金が入っているということです。たとえば、地域熱供給プラントへの投資800万ユーロのうち3分の1は補助金で、利用者からの利用料金が3分の1、残りの3分の1が市の負担です。また、「バイオマス発電所は、EU、オーストリア、州がすべての資金を出しているので、ギュッシング市の負担はゼロ」だそうです。

EUが補助金を出すなどして再エネを推進しているのはギュッシングだけではありません。ヨーロッパの各地で、EUマークのついた再エネ設備が目に入ります。なぜでしょうか? それは、EUが「20-20-20パッケージ」と呼ばれている、温暖化とエネルギーについての目標を掲げ、その達成のために大きな力(政治力も資力も)を注いでいるからです。

「20-20-20パッケージ」とは、2020年までに、
・温室効果ガスは1990年比20%減
・最終エネルギー消費における再生可能エネルギーの割合を20%にする
・エネルギー効率を20%向上する
というものです。

このEU全体の目標を各国に割り当てているのですが、再エネの割合でいえば、オーストリアの目標は34%です。これを達成するために、オーストリア政府もEUも、大きな力を入れているのです。EUレベルでこのような高い目標が掲げられていなかったら、ギュッシングをはじめとする各地域への支援もこれほど大きくはなく、ギュッシングといえども、自力では現在の姿には到達していなかったのではないかと考えます。

日本には、温暖化や再エネに対する、これほど高い目標もこれほど強いコミットメントも現在のところはありません。これが「日本の地域もがんばればギュッシングになれる」わけではないと考える1つめの理由です。

国としての戦略があってこそ

もう1つの理由は、国としての戦略の有無です。

850万人の人口を抱えるオーストリアは、国土面積8万4,000 km2のうち、47%が森林です。オーストリアにとって、木材や家具、紙パルプの原料である木材チップは重要な輸出品目の1つです。林業と木材等の加工工場から発生する木質バイオマスの有効な利用は、木材のカスケード利用(木材を建材等の資材として利用した後、ボードや紙等の利用を経て、最終段階で燃料として利用すること)を通じて、林産業の利益アップにつながりますから、産業政策としても重要であると位置づけられています。

実際、オーストリアのバイオマスエネルギーは、林地残材や製材所での端材など、廃棄されるバイオマスのみを使っており、これまで廃棄していたものが燃料として売れることで、林業従事者にとって新たな収入源となっているそうです。

また、オーストリアがバイオマスエネルギーを推進する理由がもう1つあります。先ほど「20-20-20パッケージ」の下で、この国の再エネの日標は34%だと書きました。2005年時点で23.3%だったその割合は、2014年ですでに33%に達しています。その大部分を占めているのは水力です。水力のおかげで、電力に占める再エネ割合は、世界全体の19.5%に対して、オーストリアではなんと65%なのです。しかし乾季には水量が不足して問題になることがあり、他の電源が必要だという事情がありました。バイオマスなら年中安定してエネルギー源として使うことができます。

日本では近年、固定価格買取制度が設定されてから特に、バイオマス発電所の計画や建設が各地で進んでいますが、オーストリア政府の担当者もギュッシングの担当者も「バイオマスの利用の鍵は熱電併給プラントだ」と繰り返し強調していました。熱だけ、ましてや電力だけ取り出すのはムダが多く、経済性が非常に悪化してしまう、と。

オーストリアの中規模の市町村では、バイオマスによる地域熱供給は"標準"であって、全国に数百のプラントがあるとのこと。「バイオマス熱電併給プラントでは、常時安価な熱が発生しますから、それを活用するために、つまりバイオマスによって生まれた産業もありますよ」

このように、バイオマスを活用して、電力とともに熱を生産しているため、現在オーストリアの熱需要をまかなっているのは、ガスに次いでバイオマスです。石油よりもずっと多くの割合をバイオマスがまかなっているのです。

オーストリア政府の農業・森林・環境・水管理省のラマースさんは、「バイオマスエネルギーは、特に地方での雇用創出効果が大きく、GDPへの効果も大きいから、政府としても力を入れている」と言います。

「国のGDPに対する実質効果は、発電量のGWh当たり80ユーロ、雇用創出効果はGWh当たり1.6です。再エネ分野の実質所得は年に15億ユーロで、3万9,000人の雇用が創出されています。

水力の場合は、建設段階、つまり当初の投資段階でのGDPへの貢献が大きいのですが、バイオマスの場合は、燃料を買い続けるため、投資段階よりも運用段階での地元での雇用や経済への貢献が大きくなります」

ラマースさんの資料には、「再生可能エネルギーの地域への効果のケーススタディ」がありました。ハートベルク市(人口1万2,600人)のケースです。

・100%化石燃料に頼っていた時:CO2排出量は年間5万8,500トン、雇用は8.5人、域外に流出するお金は年間1,510万ユーロ
・現在の47%がバイオマスの場合:CO2排出量は3万1,900トン、雇用は35人、域外に流出するお金は810万ユーロ
・100%バイオマスに切り替えた場合:CO2排出量は年間1,600トン、雇用は61人、域外に流出するお金は160万ユーロ

国の産業を育成しながら、地域のエネルギー自立を後押しし、それによって、国全体のエネルギーを化石燃料から再エネヘシフトするとともに、CO2を大きく削減し、地域に残るお金を増やして、地域の経済的な自立も後押しする――これがオーストリアの国としての考え方なのです。国の長期的・総合的な戦略があってこそ、国レベルでのさまざまな制度や支援と、地域のリーダーシップや創意工夫が相乗効果をもたらし、ギュッシングのような成功事例が生まれたことを痛感しました。


日本の真の地方創生へ向けて

日本の現在の地方創生は、国から各自治体に「地方創生総合戦略策定費用」が出され、「あとはそれぞれが勝手に戦略を作ってください」という絵に見えます。生き残れる地域と消減やむなしの地域との選別をしているのではないかという声も聞かれます。

ギュッシングに学ぶとしたら、地域のリーダーシップや創意工夫だけに頼るのではなく、EUのように、日本も高い目標を掲げて、強力に推進していく中で、それぞれの地域ががんばれるよう、さまざまな制度的・財政的な支援をしていくことでしょう。

また、日本はオーストリア以上の森林国ですが、林産業の位置づけが弱いのが現状です。さまざまな産業からなる生態系を創り出し、カスケード利用しないと経済的ではないバイオマスを"使い倒す"連鎖を育てていく必要があります。現在のように、「電力の国定価格買取制度があるから」と、バイオマスを発電用だけに使うやり方は、エネルギー生産の経済性から見ても、森林資源の持続可能性から見ても、中長期的に得策ではありません。

国としての温暖化戦略、エネルギー戦略、産業戦略、地域戦略を、ありたい未来に向けての相乗効果を生み出す形でしっかり打ち出してこそ、"日本のギュッシング"が生まれる可能性が拓ける。そして、経産省・環境省・農水省などの政府、産業界、地方自治体などが力を合わせてこそ、ギュッシングの事例から学ぶことができるのだと考えます。

 

 

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