エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2016年10月26日

産業政策としてのパリ協定(2016年10月24日掲載)

 

昨年12月にパリで開催された気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)では、京都議定書以来18年ぶりに先進国も途上国も含めた世界全体がまとまり、2020年以降の地球温暖化対策である「パリ協定」が締結されました。

それから1年もたたないうちに、EUの「一括批准」という異例のプロセスなどにも後押しされ、10月5日にパリ協定の発効要件が満たされ、11月4日の発効が決まりました。これまでにないスピード発効です。

日本政府は批准手続きが遅れていて、このままでは来月モロッコで開催されるCOP22でのパリ協定批准国の会合に参加できない見通しです。

日本の経済界はこの危機感を認識できているのでしょうか。なぜ経団連など日本の経済界は、『早く批准せよ!』と政府に圧力を掛けないのでしょうか。

経団連や従来型の経済界が「経済の足を引っ張るから」と温暖化政策に乗り気でないことは明らかです。しかし、そうだとしても、パリ協定後の世界のビジネスに大きな影響を与える「ルールづくり」には参加すべきではないでしょうか。

日本が批准を遅らせても、パリ協定は発効し、世界は先へ進みます。日本企業は(自国が後ろ向きでも)そのグローバルな土俵で戦わざるを得ません。だとしたら、一刻も早く、そのルールづくりに参加して、自国の産業界や企業に不利にならないようにすべきではないでしょうか。

私は安倍政権の「何をおいても経済政策を最優先する」という政治の考え方には賛成ではありません。しかし、百歩譲って、経済政策の最優先を目指すとしても、パリ協定を早く批准し、企業に大きな影響を与えるルールづくりに参加することこそ、将来を見越しての大事な経済・産業政策の一つであった、と思うのです。遅れての批准・参加になりますが、せめてその後の巻き返しに期待しています。

パリ協定だけではありません。例えば、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約COP10で合意され、日本の地名を冠した「名古屋議定書」。既に世界全体では発効要件を満たし、議定書は発効していますが、日本はまだ批准していません。

「エネルギーと環境」が企業や産業、国の競争優位性の源泉になりつつある時代にはこうした環境条約は産業政策の一環としても考えていくべきです。次の世界の動きを国や経団連、企業はちゃんと読んでいるでしょうか。

 

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