東京オリンピック・パラリンピック組織委員会で「街づくり・持続可能性委員会」の委員と「脱炭素ワーキンググループ(WG)」のメンバーを務めています。後者のWG、立ち上げ時には「低炭素WG」だったのですが、パリ協定もあり、「世界が目指しているのは低炭素じゃない。脱炭素だ!」ということで「脱炭素WG」に改名しました。
東京五輪をできるだけCO2を減らして開催しよう、というのが脱炭素WGの使命です。体重でも同じですが、減らすためには、まず現状を知る必要があります。それを基に、何をやればどのくらい減るのかを考えて対策を進め、実際にどうだったか測定することになります。
東京五輪を「対策なしで」(BAU)開催した場合、どのくらいのCO2が出るのか。先月下旬の脱炭素WG会合でこの算定結果が発表されました。それによると、東京大会の立候補時の想定に基づくBAU排出量は301万tでした。立候補後に会場を見直したことで8万t減り、現時点におけるBAU排出量の想定は293万tです。
ロンドン大会のBAU排出量は345万t、リオ大会は356万tでした。東京大会では、これらに比べて輸送インフラなどをつくらないため少なくなっています。それでも293万tは一般家庭60万世帯の年間排出量に相当するとのこと。五輪は大量のCO2を排出しながら開催されることがわかります。
ともあれ「対策を打つ前の数字」(BAU)が分かりました。ここがスタートラインです。あとは、さまざまな対策をとることで、この数値から少しでも減らす取り組みを進めていくことになります。
具体的には「回避」と「削減」を進めます。回避は環境負荷の小さい商品・サービスを優先して調達するグリーン購入の徹底、削減は省エネと再エネ導入です。これらの対策をとっても出てしまうCO2についてはグリーン電力証書などで「相殺」していく、という三つのステップになります。
ロンドンでは道路建設での再生骨材の利用や資機材のレンタルなどで排出量を1割強減らしたものの、観客が想定以上に多かったため(うれしいことですが!)観客の排出するCO2が増え、最終的な排出量は330万t、削減量は15万tだったそうです。
東京大会ではどのような対策をとるべきか、どのくらい削減できるのか、どうやってオフセットすればよいのか。脱炭素WGでさまざまな検討を進めているところです。