8月3日、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会」の第1回会合が開催されました。
この懇談会は、未来投資会議での安倍首相からの「パリ協定に基づく長期戦略策定に向け、金融界、経済界、学界など各界の有識者に集まってもらい、これまでの常識にとらわれない新たなビジョン策定のための有識者会議を」との指示で設置されたもの。私を含め10人の委員で構成され、初会合には安倍首相も最初から最後まで出席しました。
安倍首相は冒頭挨拶で「もはや温暖化対策は企業にとってコストではなく、競争力の源泉だ」と力強く断言しました。その理由として首相も言及したように、環境・社会・企業統治の観点を考慮する
「ESG投資」が世界全体で23兆ドル規模となり、温暖化対策や環境プロジェクトの資金調達を目的とする「グリーンボンド」の発行量も50倍に拡大するなど、世界のお金の流れが大きく変わりつつあります。
かつては「環境と経済のどちらをとるか」という議論だったのが、今では「環境問題への対応に積極的な企業に世界中から資金が集まり、次なる成長とさらなる対策が可能となる。まさに環境と成長の好循環とも呼ぶべき変化が世界規模で、ものすごいスピードで進んでいる」(安倍総理)のです。
残念ながら、わが日本はこの世界的潮流に乗り遅れている状況です。そこで「この好循環をどんどん回転させることで、ビジネス主導の技術革新を促していく。従来の延長線上にないイノベーションを創出し、日本経済の力強い成長につなげていく」ためのビジョンを描く――これが懇談会が設置された目的です。
パリ協定の締約国は2020年までに長期目標を提出することになっていますが、G7の未提出国はイタリアと日本だけ。日本は来年のG20議長国ですから、それまでにしっかりした長期目標を出す必要があります。日本の長期目標は「温室効果ガスを2050年までに80%削減」となっていますが、何年と比べての削減なのか、削減は国内だけなのか、海外での削減もカウントするのかなど、大事なところが決まっていません。
長期目標をしっかり世界にアピールしつつ「それは日本が今後どんな国になっていきたいからなのか」というビジョンを描く必要があります。成長戦略を考えるに当たり、私たちが「成長」させたいのは何なのか。根本的な議論ができることを願っています。