エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2019年02月28日

持続可能な地域の鍵(2019年2月25日掲載)

 

昨年7月に定められた第5次エネルギー基本計画の大きな特徴の一つは、「分散型エネルギーシステムの構築を進めていく」と高らかに宣言していることです。「再生可能エネルギーを用いた分散型エネルギーシステムの構築は、地域に新しい産業を起こし、地域活性化につながる」として、「地域に根差した分散型エネルギーシステムの経営を担える企業群を育成する」と述べています。

さらに「分散型エネルギーシステムの世界は、各地域に根差した経営マインドにあふれる新興企業が担い手として登場する可能性がある」と見通しています。ガス事業者はこうした動きにどう関わっていくのでしょうか。

ドイツには、電力やガス、交通などの公共インフラを整備・運営する「シュタットベルケ」と呼ばれる公社が数多くあり、近年日本でも可能性の模索が広がっています。エネルギーだけではなく、経済も人も「地域で循環する」ことが、時代の大きな流れであり、日本の地域や市町村の持続可能性の鍵を握っていると考えています。

日本には人口3万人未満の小規模市町村が900以上あります。これらの市町村の人口を合計しても、日本人口のたった8%ですが、これらの市町村の面積を合計すると日本全体の48%になります。8%の人々が国土の48%を守ってくれているのだと考えれば地方の小さな市町村に人々が住み続けられるかどうかは、その住民や地域の幸せだけでなく、国全体の観点からも重要なことです。

地域に人々が住み続けるためには、しっかりした地元経済が必要です。仕事がなければ若者は出て行き、Uターン者も戻れません。逆に地元経済に活気があれば、移住者や新しいチャレンジをする人々がどんどん入ってくるでしょう。地元経済は、まちづくりのいくつもの好循環の「鍵」を握っているのです。ではどうしたらよいか。

その考え方や手法、事例を伝えるために、昨年『地元経済を創りなおす』という岩波新書を出しました。この本のエッセンスを伝えるとともに私がまちづくりのお手伝いをさせてもらっている島根県海士町、北海道下川町、熊本県南小国町の3町の方々にご登壇いただき、具体的な取り組みと成果をお話しいただく機会として、3月16日に東京で『地域経済循環フォーラム』を開催します。エネルギーの取り組みについても聞いていただけますので、ご興味があればぜひご参加下さい。

 

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