エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2019年04月23日

長期戦略懇談会の提言(2019年4月22日掲載)

 

4月2日、私も委員を務める「パリ協定長期成長戦略懇談会」の第5回が開催され、昨年8月以来議論してきた提言を安倍晋三首相に渡しました。安倍首相は「大変野心的な提言を取りまとめていただいたこと、御礼を申し上げたい。関係大臣は本日の提言を踏まえ、政府としての長期戦略を(6月の)G20大阪サミットまでに決定すべく、その準備を加速してください」と述べました。

本懇談会が設置された目的は「パリ協定に基づく長期戦略を策定するにあたり、その基本的な考え方を議論し、新たなビジョンを策定する」ことでした。G7でまだ長期戦略を出していないのはイタリアと日本だけ。G20の議長国として「G20までに恥ずかしくないものを出さなくてはならない」ということです。

懇談会での論点は、①野心的な長期ビジョンをどこに定めるのか、②パリ協定の2℃目標より厳しい1.5℃目標の位置付け、③日本国内の排出量削減と海外の排出量削減への貢献をどう考えるか、④石炭火力の位置付け、⑤カーボンプライシング(炭素の価格付け)の位置付け-などです。私は「地域にとっての成長戦略でもあること」「人々の暮らし・豊かさ・幸せの視点や、先端技術だけでなく、汎用化のためのイノベーションも重視すること」などを強調しました。

論点①と②に関わる提言を紹介しましょう。昨年10月に発表されたIPCC「1.5℃特別報告書」をしっかり位置付けたうえで、「野心的なビジョン」として、次のように述べています。「最終到達点として『脱炭素社会』という『未来社会像』を設定し、それを今世紀後半のできるだけ早期に実現していくことを目指す。それに向けて、2050年までに80%の温室効果ガス排出削減という長期目標を掲げており、その実現に向けて、大胆に取り組む」。

最終到達点を「脱炭素社会」としていますが、これは提言書の中で「温室効果ガスの人為的な排出量と吸収源による除去量との均衡」と説明されています。つまり「排出量実質ゼロ」を今世紀後半のできるだけ早期に達成するというビジョンが掲げられたのです。他の先進国の長期目標は80%程度の削減が多く、「実質ゼロ」という日本のビジョンは野心的なものとして評価できます。

今後はその達成のための政策や手段の議論が進むことでしょう。どの業種のどんな企業もしっかり考えていく必要があります。

 

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