エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2021年12月15日

ブルーカーボンネットワーク (2021年12月13日掲載)

 

かつて、日本の海にはさまざまな海草や海藻が豊かに広がっていました。そういった藻場は、魚の産卵場所や餌場・逃げ場となり、海の生態系にとっても、漁業にとっても、大事な役割を果たしています。しかし、各地で「磯焼け」と呼ばれる現象が進行し、藻場の減少や消滅が進んでいます。海の生態系にとっても、漁業者にとっても、困った状況になっており、藻場を再生しようという取り組みが各地で進められています。

私も熱海の活動拠点・未来創造部で、漁業組合や行政、研究所や水産試験場などと連携して、藻場の再生・ブルーカーボンの取り組みを進めています。すべてが手探りで、知り合いをたどって、同様の取り組みをしている方々につながって、教えを請うている状況です。藻場の調査や観察のやり方も試行錯誤の連続です。藻場再生の方法論が確立されているわけではなく、各地での様々な取り組みもそれぞれ別個に行われていることが多く、残念ながら「お互いから学びあうことで効果的に進める」状況にまだないからです。

幸いなことに、少しずつ活動環境も変わりつつあります。これまでは潜水するしかなかった藻場調査も、現在では水中カメラや水中ドローンなども活用できるようになってきました。世の中の関心も高まってきています。

「各地の取り組みやさまざまな技術、制度をつなぐ場を作ることで、日本の藻場の再生・ブルーカーボンの取り組みを加速し、広げたい!」――そのような思いで「ブルーカーボンネットワーク」を立ち上げ、11月3日に設立シンポジウムを開催しました。ブルーカーボンや藻場再生に取り組む地域、自治体、気候変動・海の生態系などに関心を寄せる市民、ブルーカーボンクレジット等の動きを知っておきたい企業、関連技術を開発している企業等をつなぎ、情報を共有するためのネットワークです。ウェブサイトも立ち上げていますので、ぜひご覧になってください。

ブルーカーボンに関する基礎的な情報、国内外の取り組みや取り組みを進める上で参考になる技術、行政の支援制度、キーパーソンのインタビューなどを行い、情報発信をしていきます。シンポジウムやセミナー、現地見学会のほか、全国の小中学校に出前授業を行って、温暖化や海洋プラスチック汚染などの問題、豊かな海を取り戻すブルーカーボンの取り組みについて、次世代にもしっかりと伝えていきたいと思います。

 

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