13年前から数十社の企業・団体と異業種勉強会を行っています。年初の勉強会恒例の「この1年の展望」で、今年は「際」というキーワードをお伝えしました。「際」とは「境目」で、「国際」とは国と国の間、「学際」とは学問領域の間ですよね。
これまでは温暖化は温暖化、生物多様性は生物多様性、人権は人権として取り組んできたけれど、別個の問題としてではなく、つながりあったものとして対処しなくてはならなくなっているという意味です。例を挙げましょう。
◇気候変動と生物多様性
温暖化は気温上昇などを通して、生物多様性に影響を与えます。また、温暖化対策が生物多様性を損なってしまう場合もあります。生物多様性の保全が温暖化対策にもつながる面もあります。温暖化と生物多様性は関連し合っているのです。両者はこれまで別々に研究されていましたが、昨年国連レベルで生物多様性と気候変動の科学者グループが合同ワークショップを開催しました。今後「気候、生物多様性と人間社会を一体のシステムとして扱おうとする」取り組みが増えていくことでしょう。
◇コロナと生物多様性
環境破壊が進んだがゆえに、人獣共通感染症が増えています。毎年3~4の新興感染症が発生しており、そのひとつが新型コロナだったのです。自然界にどんどん人間が侵入していくことが続く限り、新しい感染症の発生は終わらないと考えられています。
◇気候変動とマイクロプラスチック
藻場を再生してCO2吸収量を増やそうとしても、海中のマイクロプラスチックに邪魔される可能性もあります。医学雑誌ランセットには「プラスチックが存在する中、ブルーカーボン生態系の中で炭素吸収源に何らかのかく乱が起きれば、計り知れない量の蓄積された炭素が大気中に放出されかねず、グローバルな気候目標の妨げになる。その引き金を引くのがもしかしたらマイクロプラスチックかもしれない」という論文も掲載されています。
◇人権問題と気候変動
オランダの裁判所が昨年、シェルに対して2030年までにCO2排出量を45%削減するよう命じました。その判決理由は「危険な気候変動の影響からの保護も人権に含まれ、企業は人権を尊重しなければならない」。温暖化は人権問題にもなってきたのです。
「際」の時代、企業の対応も進化させていく必要があります。