5月半ば過ぎに世界気象機関(WMO)より「世界の気温上昇が、今後5年の間に一時的とはいえ、1.5度を超えそうだ」というニュースが飛び込んできました。2023年から2027年の間に、世界の地表付近の年平均気温が、少なくとも1年間は産業革命以前のレベルを1.5度以上、上回る可能性が66%あるというのです。
そして、今後5年間のうち少なくとも1年の年平均気温が史上初の高温になる可能性は98%。ほぼ間違いなく、最高気温を記録してしまいそうなのです。
今後5年間に世界の気温が記録的なレベルに急上昇し、パリ協定で目標とされている1.5度を超えてしまうかもしれない状況は、進行中の地球温暖化に加えてエルニーニョ現象によるものです。
2022年の世界の平均気温は、1850~1900年の平均気温を約1.15度上回りました。
この3年間の大半は、ラニーニャ現象による冷却の影響で、長期的な温暖化傾向が一時的に抑制されていたそうです。しかし、ラニーニャ現象は2023年3月に終わり、今後数ヶ月はエルニーニョが発生すると予測されています。
地球の気温は、エルニーニョが発生した翌年に上昇するので、2024年に気温が上がると考えられ、2027年までの各年の世界の年平均気温は、1850~1900年の平均より1.1度から1.8度高くなるとの予測です。
気温を押し上げているエルニーニョが終われば、平均気温の上昇は再び1.5度以下に下がるだろうと考えられています。しかし、温暖化が止まらない限り、気温上昇が1.5度を超えることが増えていき、そのうち常時1.5度を超えるようになり、2度、2.5度、3度を超えるようになるでしょう。
京都議定書が議論されていたころは「温暖化は脅威だが、将来の脅威である」という見方が大勢を占めていました。しかし今や「温暖化は目の前に迫った脅威」となってきたのです。
企業も私たち一人ひとりも「気温がこれまでにない高さになっていく」時代に、どのように身を守ればよいか、事業や社員を守ればよいかを真剣に考え、態勢を整える必要があります。
同時に、二酸化炭素(CO2)排出を一刻も早く削減し、実質ゼロにすること。そして、すでに大気中に出てしまったCO2を植林やブルーカーボンで回収し、炭化などで固定化する取り組みを加速しなくてはなりません。