気候変動対策や未来のエネルギーとして、「水素」に注目が集まっています。日本をはじめ、水素戦略を策定し、水素産業支援に力を入れる国・地域が増え、「エネルギー源としての水素」に世界的な注目が集まっているのです。
日本の第6次エネルギー基本計画では、2030年度における電源構成の1%が「水素・アンモニア」と初めて明記されました。1%といえども、約90億kWhと、平均的な原子力発電所1基分と同程度ですから、かなりの規模です! 水素は、製鉄などの産業や輸送部門の燃料としても重要な役割を果たすと期待されています。
しかし、気をつけなくてはならないことがあります。水素は「エネルギー・キャリア」であるので、そのエネルギーが何で作られたかによって、環境に良いのか良くないのかが決まってくるのです。電気と同じですね! つまり、水素だったら何でも良いわけではなく、「その水素はどうやって作ったの?」と確認しないといけない、ということです。
「グレー」や「グリーン」「ブルー」など、水素自体に色はついていないのですが、製造方法を区別するための色分けがあります。現在、製造されている水素の主流は「グレー水素」です。天然ガスなどのメタンガスを水素と一酸化炭素に変換する水蒸気メタン改質を行って水素を取り出すもので、その過程で発生する二酸化炭素(CO2)がそのまま大気中に放出されてしまうため、「グレー」と呼ばれています。
この過程で発生するCO2を回収して、地中に埋めることで実質的なCO2排出量をゼロにしよう、というのが「ブルー水素」です。
「グリーン水素」は、再エネ由来の電力で水を電気分解して得られる水素のこと。製造過程からのCO2排出がなく、最も期待されている水素です。もっとも、電解には大量のエネルギーが必要なため、EUはグリーン水素が他の電力需要と競合しないように、新設された再生可能エネルギー発電所からの電力で作ることを義務づけています。
黒炭や褐炭を用いて製造される水素は、「ブラック水素」「ブラウン水素」と呼ばれます。天然ガスのほうが製造過程からのCO2は少なくてすみますが、メタンの掘削・加工・輸送などに関わるメタンの漏洩なども含め、ライフサイクル全体を見る必要があります。
「その水素は何色?」と問うて下さいね!