エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2023年12月13日

プラスチック条約 (2023年12月11日掲載)

 

温暖化に対するパリ協定はよく知られていますが、プラスチック問題についても国際条約の準備が進められていることをご存じですか。2022年2~3月に開催された第5回国連環境総会で、海洋プラスチック汚染をはじめとするプラスチック汚染対策に関する法的拘束力のある国際文書(条約)を議論するための政府間交渉委員会を立ち上げることが決議されました。今年9月には条文案の議論が始まり、来年末の合意を目指し、交渉が続けられています。

プラスチック汚染に関する国際的な目標としては、2019年のG20大阪サミットで「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにする(新たな汚染を増やさない)」ことが合意されていましたが、今年5月に広島で開かれたG7サミットでは「2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする」ことが合意されました。目標を10年前倒しにし、対象も海洋だけでなく、陸上や大気を含めたすべての環境となっています。こうした目標を設定することは重要ですが、同様に重要なのは、その達成のために各国の取り組みを進めること。そのために国際条約を作ろうとしているのです。

世界では、昨年ノルウェーやルワンダなど20カ国が「プラスチック汚染をなくす高い野心連合」を立ち上げ、「2040年ゼロ」目標を掲げています。現在は50カ国以上が参加し、日本政府も今年5月に参加を表明しています。

条約では、プラスチックの生産から消費、廃棄までのライフサイクル全体が対象となりますが、実際にどうやって目標を実現するのか、国による制度や状況の違い、途上国の支援をどうするかなど、課題山積の状況です。しかし温暖化と同じく、世界中の国が取り組まない限り解決できない、グローバルな問題なのです。

プラスチックは軽量で耐久性があり、好きな形に成形できる上、安価に生産でき、添加剤を混ぜることで望む特性を持たせることができるという、夢のような素材です。だからこそ、あらゆるところで使われるようになりました。私たちが身につけているものや部屋にあるものを見ても、日々どれほどプラスチックのお世話になっているかがわかるでしょう。

プラスチック問題とは、政府や条約が何とかしてくれる問題ではなく、私たち1人ひとりのライフスタイルや、企業各社のビジネスモデルや環境問題への意識・取り組みに関わる問題なのです。

 

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