エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2024年08月28日

データに裏付けられたまちづくり (2024年8月26日掲載)

 

島根県の離島・海士町は、先進的なまちづくりで知られる町で、私も2014年からお手伝いをしてきました。海士町の取り組みは、情熱だけでなく、しっかりしたデータをもとに取り組みを進めていることが特徴の1つです。特に、外から稼いでくるだけでなく、地元経済にいったん入ったお金が町の中にとどまっているのか、すぐに流出しているのかは、地域の経済にとって非常に重要なデータとなります。私の会社でも産業連関表を作成することで、お金の流れを見える化するお手伝いをしています。

海士町の産業・教育のキーパーソンの一人、大野佳祐さんに聞いたお話をご紹介します。

「ある時、町の産業連関表を見ていたら、年間3億円超が電気代として島外に流出していることを発見しました。地域主体で電気を生み出せれば、電気代の地域外流出を防ぐだけでなく、町内の自立を促すことにもなると考え、2022年に新電力会社を設立しました。2年が経過し、売り上げは1千万円規模になっています。流出金額の3%ほどですが、島内に留まり再投資する機会を創出できていることで、事業の方向性に手応えを感じています」

「副次的な効果も生み出されています。新会社に、地元の隠岐島前高校で授業をする機会をいただきました。学校で消費している電力でどれぐらいのお金が漏れているか、漏れを自分たちで止められれば生徒会予算を増やせるかも、という話をしたら、2人の生徒が、会社をつくりたいと立ち上がってくれたのです。社内に『高校生事業部』を新設し、県教育委員会と交渉するなど、学校に太陽光パネルを設置する準備を進めています」

「電力以外の漏れ穴をふさごうとする取り組みも進めています。私の妻が町唯一のパン屋が廃業するかもしれないという噂を聞き、週に2日ベイクショップを開くようになりました。するとパン屋さんに後継者が現れ、パン屋が二つに増えたのです。町では漏れ穴をふさごうとする人たちが増えています。私たちも新たな挑戦への伴走支援ができるよう、その方法を模索しています」

産業連関表からエネルギーの漏れ穴を見出し、漏れをふさぐために会社をつくり、実績を上げている! それが教育にも起業にもつながっていく! 本当にすばらしい活動と思います。

 

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