エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2025年01月03日

【エネルギー基本計画とNDCへの提言】 策定プロセス改善を (2025年新春号特別寄稿)

 

日本の現在の温室効果ガス排出削減目標は「2050年に実質ゼロ、2030年に46%削減」だが、今年2月に国連に提出する次期の目標の議論が進んでいる。京都議定書ではずっと6%削減が目標だったが、パリ協定では、世界全体の進捗状況の評価(グローバル・ストックテイク)を5年ごとに行い、各国はその結果を踏まえて自国の温室効果ガスの排出削減目標を更新していく仕組みになっている。

2023年に実施された最初のグローバル・ストックテイクでは「1.5度目標までには隔たりがあり、さらに行動と支援が必要」とされた。具体的には「2035年までに2019年比60%の排出削減が必要」という結論が示されている。

昨年11月25日に開催された経済産業省・環境省の合同会合では「2035年に60%削減」という案が検討されている。国際的に求められている数値を打ち出しているように見えるが、日本の場合は2013年比であるため、
IPCCが基準とする2019年からの実際の排出削減は49%程度になるという。

見かけで惑わすことなく、実質的に必要な削減を目標として打ち出すべきだ。そして事業者は、削減目標がこれからもどんどん厳しくなっていくことを認識した上で、経営計画を立てなくてはならない。

エネルギー基本計画については、策定プロセスの課題を指摘したい。私が2011~12年に総合資源エネルギー調査会基本問題委員会で委員を務めた時も、「女性が少なく、全員が40代以上」という委員の偏りがあった。これを少しでも補うために「エネ女・エネ若の集い」を開き、担当者に意見を聞いてもらった。しかし、未だに委員の偏りや、委員以外の声が届きにくいなどの問題は変わっていないようだ。

国民がエネルギーについてしっかり学び、自分で考えて意見形成ができる場やプロセスを作らなければ、結局「専門家に任せる」ことになってしまう。エネルギーは誰にとっても重要なテーマだからこそ、みんなで考え、議論し、選んでいける国になっていってほしい。

 

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