開催日 |
2014年7月2日
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対象 | イーズ未来共創フォーラム企業・団体パートナーさま、オブザーバーでのご参加希望のみなさま(先着10社・団体さま) |
ゲスト | 高知県 尾﨑 正直 知事 |
ファシリテーター | 枝廣 淳子 |
参加人数 | 23名 |
開催レポート

フォーラムメンバーの高知県から尾﨑知事をお招きし、人口減少問題について講演していただきました。全国に先行して人口減少が進む高知県。県の人口減少に歯止めをかけるためのさまざまなとりくみや活動についてご紹介いただきました。
自治体や地域の課題を共有していただき、企業・団体にとっての意味合いやできること・すべきことをいっしょに考えていくうち、それぞれの課題も浮き彫りになってきました。
<問題意識の共有>
まず 、「人口減少」に関する 問題意識と課題について共有しました。
1.人口減少が自社の事業に影響を及ぼしつつあるか?
2.人口減少の影響を踏まえて、それを事業(市場や労働力の面などで)に盛り込んでいるか?
3.所属部署ではどうか?

<講演>
「人口減少最先端 高知県の挑戦!」
高知県 尾﨑 正直 知事

(高知県 尾﨑 正直 知事)
1. 人口減少問題について
- 高知県は、人口減少の問題に、ずいぶん前から向き合ってきた。
- 人口問題研究所がまとめた「日本の将来推計人口」では、出生率が 1.35の場合、100年後の2110年には8000万人以上の人口が減って総人口が4000万人台、高齢化率41.3%に至るとの推計がなされている。 これを「高齢者1人を支える現役世代の人数」に置き直してみると、合計特殊出生率が1.60のケースでは2060年には1.30人で1人の高齢者を、合計 特殊出生率が1.35になると、1.19人で1人の高齢者を支えなければならないということになる。
- 子どもを産めない最大の理由は経済的理由である。
- 高知県が人口の自然減に突入したのは平成2年のことであり、全国に15年先行して人口自然減の現状に陥った。高齢化については、全国に10年先行して進んでいる。
- 人口減少、高齢化社会を迎え、経済が縮んできた。人口の減少にあわせて経済が縮小した。
- 足元の経済が縮むなら、外からお金を持ってくることが必要であるとして、【地産外商】の努力を続けてきた。その結果、有効求人倍率が、平成26年5月は過去最高の0.84になった。
- 地方の人口減少問題は、社会減問題もあるが主として自然減問題である。
- 自然減を解消するためにも、いかに若い世代が地元に残れるか、というのが重要な問題である。
2.高知県の基本政策について
- 高知県政は、すべてにおいて人口減少問題を基軸に政策がなされている。
- 5つの基本政策として、
「1.経済の活性化 ~産業振興計画の推進~」、「2.南海トラフ地震対策の抜本強化加速化」、「3.日本一の健康長寿県づくり」、「4.教育の充実と子育て支援」、「5.インフラの充実と有効活用」を挙げているが、その5つの基本政策に横断的に関わる政策として「中山間対策の充実強化」、「少子化対策の抜本強化と女性の活躍の場の拡大」を加えている。
- "人口減少の負のスパイラル"を真正面から受け止めて対策を推進してい る。"人口減少の負のスパイラル"とは、『経済規模の縮小によって若者がどんどん県外に流出してしまう。そうなるとますます過疎化高齢化が進行してしま う。そうなると中山間地域がどんどん衰退し、少子化が加速し、さらなる人口減少の危機に陥る』という悪循環のことである。
- 例えば、本来は子育てをしやすい地域だったはずの中山間地域が衰退してしまったことを受け、この部分を強化する政策を進めている。
- 事実上の政策ラインナップは、この人口減少の負のスパイラルにどう対応するかということで作成されている。
3. 基本的な考え方
1.自ら持てる強みを活かす
(例)森林面積割合が全国最高の84%(+豊富な日照時間水資源)であることを活かした林業の振興による中山間地域の活性化
2.弱みを逆手にとる
(例)多発する自然災害や南海トラフ地震で想定される甚大な被害を想定し、防災に取り組むことで防災関連産業の振興や地域の支え合いネットワークを強化
3.官民協働
-
- 県内企業と "ルビコンの川" を共にえる
- 県外企業と地産外商の太いパイプをつくる
4. 高知県産業振興計画
- "地産外商"を強化する。地産地消を推し進めすぎると、ジリ貧になっていく。
- "地産"の部分をいかに強くするか、中山間地域のもの(第一次産業)の水準を高めるためにどうするか、というのが非常に大きな課題。
- 自然を活かした観光商品を充実させ、プロモーションを強化する。
- 都市部からの「人財誘致」を本格化させている。潜在する人財ニーズの顕在化もすすめている。

5.林業振興の取り組み
- 84%の森林資源を活かすための取り組みをすすめている。
- 一本の木を余すことなく使い切る工夫をしている。
- 木材利用の効果をうたう。
- 都市での建築物に木材を使うことによって、都市に森をつくり、中山間も豊かに。
- 環境先進企業との「協働の森づくり事業」をすすめることによって、森林整備だけでなく企業と地域住民を結んできた。
6.教育の充実
大学の新設、学部の新設。高知県内には経済学部経営学部を設置している大学がないため、それだけの理由で県外へ出て行くひともいる。県内の大学に、志望する学部があれば県内に残りたいという希望は、県外の大学を志望する高校生の4割近くにのぼる。
7.長寿県づくり中山間対策
- 県民が健やかで心豊かに、支え合いながら生き生きと暮らせる県づくりをめざす。
- 過疎化が進んでいくなかで人々が暮らしていけるようにしていくために、中山間地域に支え合いのネットワークを意図的にどう作っていくかということは非常に大きな課題であるが、これは福祉政策上、非常に大きなネックとなっている。
- 施設サービスはこれまで単一で縦割りであったが、大事なことは一箇所ですべてのサービスを提供することである。これを実現したのが、小規模かつ多機能な「あったかふれあいセンター」の設立である。
- 廃校跡地などを利用して、小学校区単位に「集落活動センター」をつくり、集落の維持にも取り組んでいる。
8.少子化対策の課題
若い世代の人口と子育て環境の整備の充実度によって、課題や政策は変わってくる。
9.質疑応答
- NGO/NPOとの連携はどうなっていますか?
- 地域住民の思いをひきだすくふうは?
- 若者が林業に目を向けるしくみは

<グループディスカッション(1)>:尾﨑知事の話を受けて
1.学んだこと
2.自社にとって響いたこと
3.さらに知りたい、考えたいこと

<グループディスカッション(2)>尾﨑知事の話を発展させて
1.尾﨑知事へのエール、叱咤激励
2.さらにできるかもしれないこと
3.自社がかかわれるかもしれないこと(書いても約束ではないので安心して♪)

<グループディスカッション(3)>
自社で人口が減っていくことを考えに入れているか? (半数)
1.どういう側面を考えに入れていますか? どのレベル(経営者? 部署? 個人?)で考えている?
2.自社で考えなければならないこと

<枝廣よりまとめ>
- 人口が減ったとき、経済成長はどうなるか?
- 他社(競合)に勝つことで大きくなるのか
- 業態を変えていく(多角化していく)のか
- 国際展開、海外展開するのか
- 会社のあり方を、成長しなくて済むシステムにする(ビジネスモデルを変えていく)のか
<平和紙業さま(会場ご提供)より、企業活動のご紹介>

<事務局よりお知らせ>
次回フォーラムは、9月3日(水)を予定(内容未定)しています。

懇親会のようす
次回のイベント・フォーラムの予定
次回フォーラムは、9月3日(水)を予定(内容未定)しています。
参加された方の声から
☆本日参加して、よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください☆
尾﨑知事の話を聞いて、多くの気づきをいただきました。人口減少社会という現実をこれからもっとリアルに考えていこうと思っています。
不可避である人口減少問題に、6年前から取り組まれた実例を知事が出来て、有意義であった。
県知事のお話を直接聞く機会をいただき、地方の現状がよく分かった。積極的な政策を具体的に聞いたことはとても参考になった。
さまざまな業種の方とお話する中で、それぞれ人口減少に対する問題意識を持って、対策をとろうとしていたりしていることが分かった。
いろいろな、たくさんのアイデア、話が聞けて勉強になりました。
経団連等での活動とも併せて、日本の国勢の強化(維持?)について考える機会があるので、人口減少ならびに経済縮小に取り組む高知県の諸施設と、背景にある現状認識と構想力に強い印象を受けた。
高知県の現場で起きている問題を把握され、きめ細やかな戦略プランを持っておられ、たいへん勉強になりました。
企業さん方のそれぞれの視点からの人口減少の“読み”、対応策を聞くことができて良かった。
高知県の尾﨑知事の迫力あるプレゼンを直接聞くことができたこと。
知事の話を直接聞けてよかった。多様な取り組みをしていることが分かった。
県知事の生の声がきけた貴重な機会でした。
日本の「人口減少」問題について、あらためて考える機会をいただきました。
異業種の会社状況、立場を少しでも共有できて良かった。
普段きけない話を学べてとても勉強になった。
企業活動という枠をこえて、広い視点で考えることができ、頭の体操(視野を広げる)になった。
☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください☆
自治体が今、何に悩み、取り組んでいらっしゃるかということを生の声で聞くことができたので、今後、地域とくに自治体と協働した取り組みを行う際に参考にさせていただきたい。
不可避でありながら、具体策に着手していない現状を再認識させられた。人口減少を前提に、企業成長の目標値設定を考えなおしたい。
人口減少から考えられる、いろいろな企業の悩みや今後のマーケットのことなどを参考に、いろいろな指標をクライアントへしていきたいと思いました。
人口減少は、まだ紙面上の事としてしか認識がなかったが、他県より15年も先行して人口減少問題に取り組んでおられる高知県の話を聞いて、もう少し真剣な議論が社内でも必要だと感じた。
営業政策、商品開発等に、いかしたいテーマがずいぶんありました。
山間地域のビジネスモデルの展開に役立てたい。
人口問題と環境についてもっと学んでみたい。(世界では人口増加が問題、日本では人口減少が問題)これらの現象と持続可能性の関わりは?