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第33回 「ユニリーバのサステナビリティの取り組みからまなぶ」

2015月03月03日 更新
開催終了レポート
 
開催日 2015年2月10日(火)
対象

イーズ未来共創フォーラム企業・団体パートナーさま、オブザーバーでのご参加希望のみなさま

ゲスト

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 ヘッド・オブ・コミュニケーション 伊藤 征慶さま

ファシリテーター

枝廣 淳子

参加人数

29人(+学生6名)

開催レポート

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ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社ヘッド・オブ・コミュニケーションの伊藤征慶さまをお迎えし、ユニリーバのサステナビリティへの取り組みについてお話いただきました。

ユニリーバといえば、2010年に発表した、「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」が有名で、環境負荷を減らし、社会に貢献しながら、ビジネスの規模を2倍にすることを目指し、現在も進めています。目標の立て方から、プロセスの進め方など、業界を問わず、多くの企業が注目するユニリーバ。実際にどのように進め、実践しているのか、直接お話をうかがいました。

成長とサステナビリティの両立を目指す、あらゆる業種・業態の企業のみなさんに大変関心が高く、伊藤氏へは質問やコメントも多く寄せられました。また、今回は大学生も参加し、いっしょにまなびました。

<グループディスカッション> 2015年の振り返りと自己紹介

この1年、自社・自部署・自分が環境CSR分野において(学生は、自分の専門分野の学問や勉強において)できたこととやったことを個別に振り返ったあと、今後取り組むべき課題や今抱えている悩みを共有しました。

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<グループディスカッション> 今後の課題や悩みを共有

「今後の課題や悩み」の背後にある何らかの力や動向(世界の、国内の、地球環境の)として何が考えられるか? 個々の課題を共有しながら、日本の企業や組織で環境・CSR活動に取り組むうえで踏まえておくべきことは何か? を、グループごとに対話を重ねたうえで、キーワードを全体共有しました。

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<グループディスカッション> 伊藤さんのお話から得たいこと

伊藤さんのお話から何を得たいか? 知りたいこと、自分の活動に活かしたいことを、グループごとに共有しました。

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<講演>

「小さな積み重ねが、大きな力に」

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社  ヘッド・オブ・コミュニケーション 伊藤 征慶氏 

 

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【ユニリーバ・グループ概要】

ユニリーバは、1930年創業の世界最大級の日用品・食品メーカーである。現在世界190カ国で、「ダヴ」「ラックス」「リプトン」「ポンズ」「レセナ」「 アックス」「ジフ」「サーフ」「マグナム」などのブランド群を展開。日本には、1964年から市場参入しており、現在13ブランドを展開している。

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 【ユニリーバのビジョン】環境負荷を半減、ビジネスの規模を2倍に

よりよい明日を創るために、毎日よりよい未来を創っていくというビジョンを掲げている。心も体も元気で美しく、より充実した日々を送りたい人のため、環境や社会のために、優れたブランドとサービスを届けようという意気込みでビジネスを手がけてきた。人々とともに小さな行動を毎日積み重ねることが世界を変える大きな力になると信じ、今後は環境負荷を減らしながらビジネスの規模を2倍にすることをめざして、 新しいビジネス・モデルを創出する。

 

【ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン】解説

2010年、「すこやかな暮らし(健康・衛生)」「環境負荷の削減」「経済発展」の3つの分野で、9つの目標を設定。このプランはサステナビリティを推進するだけではなく、ブランドの利益ある成長やイノベーションの強化、コスト削減にもつながっている。

 

<<すこやかな暮らし>>

2020年までに10億以上の人がより衛生的で健康的な習慣を身につけられるよう、「健康」「 衛生」「食」の面で支援していく。目標は、2015年までに10億人に手洗いを啓発、2020年までには5000万人に歯みがきを啓発し、2020年までに5億人に安全な飲み水を提供する。2020年までにヘルシーな食品の割合を2倍に増やす、など。 

[衛生]

《ひとつの石鹸が、子どもの命を救う》

・石鹸で正しく手を洗えば、 半数の子どもたちの命を救うことができる。

・特に問題の深刻なインドから 石鹸の普及をめざす。

 《石けん:ライフボーイの戦略》

・ビジネス......製品・サービスを有償で提供すれば継続的に提供しやすい。

 ★ユニリーバでは、衛生面において【3つの挑戦】として以下の、1.製品、2.生活習慣、3.販路にチャレンジしている。

1.製品

インドでは、人口の約70%が農村部に居住していてその大多数が1日2ドル未満で暮らしている。彼らは都市部の裕福層と同じ製品を購入することができない。そこで、1回使い切りの小分け(サッシェ)パックを1個1ルピー(約2.5円)で販売。その結果、現金のある時に買える"手の届く贅沢"として1回使いきりの石鹸がインドで大ヒットとなり、シャンプーなどの製品も追随して小分けしサッシェタイプで発売している。

2.生活習慣

インド農村部では、手洗いの際に水だけか、または灰で洗うのが一般的。石鹸を知らないまたは石鹸を使わないとバイ菌が洗い落とせず病気の原因となることを知らない。「プロジェクト・スワチャテトナ」を立ち上げ、紙芝居や"グロウジャーム"などの楽しく分かりやすい教材を用いて子どもたちに手洗いの大切さを教えている。そうすることで、石鹸を毎日使うことを習慣づける。まずは新しいものに柔軟な子どもたちから家族への波及効果を狙う。2015年までに世界で10億人に手洗いの啓発活動をする計画。

3.販路

農村には店舗がなく販路がない。またTVやラジオなどが普及しておらず継続したコミュニケーションが図れない。そこで、「プロジェクト・シャクティ」を立ち上げた。農村の女性たちに個人事業主になってもらい、ビジネスの基礎について研修を受けた後、訪問またはキオスクでユニリーバ製品を販売してもらう。売上の一部が女性たちの給料になり、女性の自立や生活向上に貢献している。

 

★ 新しいビジネスモデル 


【ライフボーイ(ビジネスの拡大・成長)ー 地域社会(衛生状態の向上)― シャクティ事業主(経済的・精神的自立/生活の向上)】
=正しいことをして、ビジネスを良くする。 

[食]1杯の給食が、子どもたちの未来につながる:

学校で給食が出せれば、子どもたちは少なくとも 1日1回は栄養のある食事ができる。学校で教育を受ければ、仕事に就くこともでき、将来自分で食事を買えるようにもなる、といった観点から、国連世界食糧計画(WFP)の学校給食プログラムを支援している。

  •  「世界食糧の日」:10月16日に定め、 世界各地で、ラーマ(マーガリン)などの食品ブランドを中心に各地でキャンペーンを実施し、売上の一部を寄付。
  •  「栄養強化プログラム」:貧しくて栄養たっぷりの食事を買えない家庭向けに、安くからだに必要な栄養を摂れる食品を発売。

  •  「ウォーク・ザ・ワールド」:世界中で同じ日・同じ時刻に決められたコースを 歩くチャリティ・イベント。社員に参加・寄付を募り、参加費の一部が給食になっている。

 

<<環境負荷の削減>>

ビジネスを成長させながら、「温室効果ガス」「水資源」「廃棄物」「持続可能な調達」において製品の製造・使用から生じる環境負荷を2020年までに半減させることをめざす。

 [ユニリーバの製品ライフサイクル]

それぞれの段階での温室効果ガスの排出量 (ユニリーバ調べ)

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→ 2020年までに製品のライフサイクルからの温室効果ガス排出量の半減をめざす。

 

<<経済発展>>

ビジネスを成長させながら、2020年までに数百万人の暮らしの向上(人権・ 労働者の権利・女性のための機会・包括的なビジネス)を支援する。 

・経済発展の支援:

1)個人・小規模農家をパートナーに:生活の安定・向上をはかる

2)世界各国での活動 小規模農家への研修・支援

このように、ユニリーバは常にサステナビリティをビジネスチャンスとして活かしてきた。同時に、社内でサステナビリティビジネスを浸透させるための取り組みもおこなう。

★ 社内への浸透策例

  • 社員への気候変動・食など世界の今について、映像で研修
  • CEOからの全社員へのマンスリー・レターに必ずサステナビリティの取り組みついて紹介する
  • タウンホールなどでサステナビリティへの取り組みについて話す

 <<災害時支援>>

「よりよい明日を創るために」というビジョンのもと、世界各地の災害に際し、 積極的に緊急支援および中長期の支援を実施している。現地のニーズに合った支援をいち早く届けるため、4つのグローバル・パートナー(ユニセフ、WFP、セーブザチルドレン、オックスファム)のほか、様々な団体と協働している。

 <東日本大震災>でも多くの支援(避難所・仮設住宅への製品支援、募金、社員ボランティア)を実施。

 【まとめ】
飢え、病気、環境問題、自然災害など、世界にはいろいろな問題があり、どれも大きすぎて、ひとりでは解決できない。それでも、1つの石けんが命を救うことはできる。1杯の給食が子どもの未来をひらくことも、1杯の紅茶が地球を守ることも、1回のクリックが笑顔につながることもある。小さなものや行動も、集まれば未来を変える大きな力になる。ユニリーバは、今後も「できることを、いっしょに、今日から」というメッセージを発信し続けていく考えだ。

 

<<枝廣との質疑応答>>

※抜粋

 Q.ビジョンはいつごろどのようなきっかけでつくられたのでしょうか?

 A.2010年にビジョンとともにそれを達成すべく枠組みの「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を発表しました。ユニリーバの目標は、持続可能な暮らしをあたりまえにすることで「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」は、世界が直面する前例のない変化に対する戦略的な取り組みです。またユニリーバの歴史は、1880年代に生まれた1つの石鹸「サンライト」から始まっていますが、この石鹸は、衛生的な習慣がまだ根付いていなかった当時の英国に「きれいになる」という新しい喜びを届け、人々の暮らしを大きく変えました。石鹸のように小さなものにも暮らしを変え、よりよい明日を創る力がある。創始者ウイリアム・ヘスケス・リーバ卿の新年は、今もユニリーバのビジョンに受け継がれています。

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Q.それはトップダウンで、ポール・ポールマン氏が就任する前に決まっていたのでしょうか。どういう人たちがこの具体的で大きなビジョンを立ち上げたのでしょう? 上部からの鶴の一声だったのか、NGOと連携してすすめたのか、社内のコミュニケーションで進めていったのか、実際にどうだったのかをお聞かせください。

A.ユニリーバのビジョンは、創始者も時代から受け継がれてきた信念にもとづき、新たな挑戦として掲げられたものです。創業時から社会問題を解決する製品を世の中に送り続けてきましたが、「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を導入した後はより体系だった取り組みが各国でもできるようになりました。

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Q.「売上規模を2倍に、環境負荷を半分に」というビジョンは、あらかじめいつまでに達成するかという目標の年限が決められていたのでしょうか。それとも、北極星のようにあくまでも方向性を示すものだったのでしょうか。

A.ユニリーバは、ビジネス成長のために環境を犠牲にすることはできないと考え、そのために成長とサステナビリティを両立するビジネスプランとして「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を発表しました。「健康・衛生・食」「環境」「経済発展」の3つの分野で2020年までの数値目標およびアクションプランを設けています。また目標に対しての進捗を毎年社内外に公表しています。

 

<グループディスカッション> 伊藤さんのお話を受けての感想、コメント、さらに聞きたいこと、質問などを出しました。


グループ・個人で出された質問を、ホワイトボードに貼り、伊藤さん自らピックアップしてお答えいただきました。

例)社員の年間評価基準とサステナビリティとの関連性は?
  これだけの取り組みを進められるくふうは?
  グローバル、国内ではどのような体制で進めている? などなど多数

 

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 <株式会社ビジネス・コンサルタントさま(会場ご提供)より、企業活動のご紹介>

「バックキャスティング経営の本質」セミナーの開催ご紹介

 

<事務局よりお知らせ>

次回フォーラムは、4月を予定(内容未定)しています。日時・内容が決まりましたら、こちらのサイトでご案内いたします。

 

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懇親会のようす

参加された方の声から

☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか☆

ユニリーバ様のSustainabilityが実際にどのように取り組まれているかを拝聴したいと思った

ユニリーバさんのお話、みなさまとのネットワークづくり

異業種のCSRに関して学ぶこと

サステナビリティに具体的な取り組みをしている人たちとの交流

企業のCSR部門の方々との交流、ユニリーバ様の取り組み方を聞きたくて

他社のCSR活動等を知ることによって知見を広げ、自社への展開の参考としたい

ユニリーバさんの先進的なCSR活動を深く知ること

大勢の方、特に学生さんも来られるとのことで、意見交換など楽しみにしていました。また、多くの企業の方がその活動を参考にされるユニリーバさんの話がどのようなものか興味をもっていました

ユニリーバさんの取り組み、特に世界最先端企業の日本法人がどのように取り組んでいるか

不勉強であったため、特に考えずに参加してしまいました

ユニリーバさんのサステナビリティの考え方のフィロソフィーを知ること

ユニリーバの活動を中[ユニリーバ内部]の人の声で聞く

ビジネスとサステナビリティの両立のコツを学ぶ

企業がサステナビリティに取り組む際のマネジメントやリーダーシップについて知りたかった

CSRに関する社内コミュニケーション、共通認識の形成をどのように取り組んでいくか、お聞きしたかった


☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください☆

国内外でSustainabilityとBusinessを融合しながら、目標を決めて実践している内容を知り、すばらしいと思った

ユニリーバさんのお話は仕事に直結し、ほんとうに参考になりました。運営自体も工夫されていてよかったと存じます

いろいろな方の意見を聞き、モチベーションが上がった。時間が短かった(討議)

ビジョンから行動までの流れを知ることができて、とても勉強になりました

伊藤さんから生の話を聞けたこと

よかった点:イメージが具体的になってきた。社内浸透のさせ方が参考になりました

ユニリーバの取り組みにたいへん勉強になりました。ビジョナリティ、大きな目標への挑戦、不可能を可能にするアイデアと実現力は大きなお手本でした。ありがとうございます

ユニリーバの伊藤様のご講演をはじめ、当社にとって全く異業種である方々とコミュニケーションの場を持ててよかったと思います

とてもわかりやすく、ユニリーバの取り組みがわかりました。今後の参考にしていきたいです

いろいろな話を聞けて参考になった。また、ただ話を聞くだけでなく、workもあったので、activeに参加できてよかった

グローバル、日本、ポールポールマンさんの生い立ち、背景など、なぜサスティナ[ビリティ]へ

企業のサステナビリティとビジネスが直結というお話がとても印象に残りました

直接質問できる時間があってもよいような気がしました

グローバル展開の中で日本国内での具体的な展開、活動をもっと聞かせてほしかった

非常に勉強になりました。多くの示唆をいただき、CSRと広報が一体であると認識できました

ケースがお聞きできたことはたいへん有意義であった。もう少し質問への回答時間があるとありがたいです

海外の本部での取り組みがあっての話が中心でしたが、日本独自で始めたことについて詳しく聞きたかったです

実施していることの全体像はわかった。2009年にvisionがどう策定されたのか? リーダーシップの観点と、その後の浸透化のための具体的なプロセスについて知りたかった

知識がさらに増えたのでとてもよかったです

☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください☆

自分の会社では何ができるか、社員への啓発等、考えたい

社内向けの→動画作成etc.チャレンジすべきと感じました

ビジネスにも生きてくる独自の活動を展開していきたい

今後の学習に活かしていきたい(まだ、というレベルです)

ビジョン、目標の立て方、課題を解決するidea、事業でイノベーションを起こし、社会課題を解決することへ活用したいと思います。また、その変革を生み出す組織づくりを学びたいと思います

社内のCSR活動について活用を検討したいと考えます

日本企業のCSRやサステナビリティに関する活動を知りたいと思いました。就職活動中なので本日の講演を今後の企業選択の参考にしたいです。
今後、会社への提案に活かしていきたい(評価への取り組みなど)

映像等での社内浸透、COOからの月1回メールレター

企業理念を全社員に伝える力が大切ということがよくわかりました

当グループのグローバル展開の参考にしたい

ビジョンの建て方、その推進の仕方等

今後の中期計画作成の中に盛り込めたらと思います

他社の事例(サステナビリティ)

社内の会議でシェアします

ビジネスプラン策定に

環境、サステナビリティと事業戦略の融合、統合。トップへの働きかけ

ビジョンをつくり、運営させていくときに参考にしたいと思いました

確信がない中でも大きなvisionを立てるということの大切さがわかったので、Back Castingの考え方の事例になると思いました

貧困問題に対しての意識が深まったので、これからもっと注目していきたいと思いました

次回のイベント・フォーラムの予定

4月を予定(内容未定)しています。日時・内容が決まりましたら、こちらのサイトでご案内いたします。

 

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