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異業種勉強会 イベント・フォーラム

第34回 重なる被災地と地域の課題一企業支援のあり方を考える(2015年4月24日(金)開催)

2015月03月24日 更新
開催終了レポート
 
開催日 2015年4月23日(金)
対象

イーズ未来共創フォーラム企業・団体パートナーさま、オブザーバーでのご参加希望のみなさま

ゲスト

NPO法人ETIC. 山内幸治さま

ファシリテーター

枝廣 淳子

参加人数

11名(11社・団体)+学生1名

開催レポート

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                                          (ETIC. 理事・事業統括ディレクター 山内 幸治 さま)

3.11から4年ー。
震災から4年を経て、東北の復興や課題のかたちが変わりつつあります。

当初のインフラのようなハード復興のフェーズから、まちづくり、地域活性、教育、 コミュニティ、仕事づくりなど、ソフト(人材)をいかすフェーズへ。その土地で生み出したい「新しい価値」とは何かを皆で考え、試行錯誤を繰り返しながら、「新しい価値」をめざし、歩みを進めています。

その時、企業として、ともにできることは何でしょうか。

今回は、社会課題の解決や若手起業家やリーダーを育てることで多くの実績がある、NPO法人ETIC.の山内さまをお招きしました。多くの人材を東北に送り続け、いっしょに歩んできたからこそ見える課題、企業だからこそできること、また、各地で生まれつつある新しい価値など、語っていただきました。

震災や被災地への関心が、世の中で風化しつつある今だからこそ、自社がどう役立つことができるのか、しっかり立ち止まって考えるよい機会になりました。

<アイスブレイク:共有タイム> 「被災地支援」に関し、どんなことを期待して何を学びに来たか

被災地支援に関して、社会的にどんなことが課題なのか、自社の活動や自身の役割においての悩みを共有しました。

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<講演>

重なる被災地と地域課題 ―企業支援のあり方を考える

NPO法人エティック 理事・事業統括ディレクター  山内 幸治 氏

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 <目次>

1.自己紹介とNPO法人エティックの活動
2.重なる被災地と地域課題
3.東北から生まれているモデルと右腕派遣プログラム
4.企業支援のあり方 ~みちのく復興事業パートナーズ

 

1.【自己紹介とNPO法人エティックの活動】

設立当時(1993年)は、自分たちで起業する、インターネットを通じて事業する、ということはまだ浸透していなかった。1997年からはじめたインターン派遣が、団体の活動の柱に。ネットベンチャーを支える動きが徐々に生まれる中で、起業したい若者やリーダーを集め・育て、派遣活動を重ねてきた。被災地支援においても、当初から震災復興リーダーのもとに右腕となる有能な若手人材を派遣する「右腕プロジェクト」や企業がコンソーシアムを組んで支援する「みちのく復興事業パートナーズ」など、個人・企業をつなぐ活動を積極的におこなっている。震災から5年目に入り、東北の震災への意識が社会全体では薄れてきているが、ETIC.としては2020年まで東北支援として活動していきたいと思っている。

<事業内容>

1)長期実践型インターンシップ事業 
2)社会起業家インキュベーション 
3)地域活性化事業 
4)震災復興リーダー支援プロジェクト

2.【重なる被災地と地域課題】

<背景:震災から4年を経て見え始めた復興のかたち>

  • 震災支援活動に関わるきっかけ

2004年からETIC.のような組織を全国に拡げようと、一緒に活動をしてきた仲間が東北にいたため、震災翌日からそのメンバーを中心に復興支援活動をおこなってきた。2011年3月14日には被災地のリーダーを支える人材を全国に呼びかけて派遣する、「震災復興リーダー支援プロジェクト」が立ち上がり、寄付などの活動とともにすすめてきた。

  • マイノリティへのケア

被災当時は全員が弱者であるため、難病やアレルギー疾患のある方、乳幼児をもつ家族や高齢者の方などマイノリティの方々へのケアがどうしても行き届かない。そのため、阪神淡路の震災経験のあるETIC.の仲間と仙台のNPOや医療機関専門家が避難所を巡回し状況を確認し、延べ900カ所、1000人のボランティア派遣をすることができた(2011年3末から5月GW活動実績)。

  • 「右腕」派遣

優れたリーダーのいる避難所はマネージメントがしっかりしているがゆえに、地元ニーズも外からの支援が殺到し、パンクしてしまっていた。このリーダーを支えるための右腕が必要になる、ということで、すぐに動ける大学生を中心に、右腕派遣を開始しした(今の右腕派遣の原型)。

  • 進むインフラなどのハード面、これからはソフト面が重要

震災当初は仮設住宅やがれき撤去など、活動した分だけ成果が目にみえたが、月日が経つにつれ、ニーズも変化、だんだんと成果が見えづらくなっていった。そのため、現地の人びとも何を変えていいのかわからなくなってしまっていた。

 それでも幸い、この4年間で確実に種は蒔かれていると感じている。

「次世代の担い手を作る教育のしくみ」、「生産者と消費者の関係性を変える」、「高齢者の健康をコミュニティで支える」、「伝統産業の進化グローバル化」、「地域発の循環エネルギー戦略」、「官民の対話・連携によるまちづくり」といった、東北で新しいモデルが生まれてきているからだ。

こうした次のフェーズに入った復興支援のかたちを、これから企業としてできることは何か、またどう関わっていけばよいのかを伝えたい。

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<課題>

  • 人口減少と高齢化

東北は全国の課題の前倒ししたものだと言われている。
(たとえば、岩手大槌町高齢化率31%(2012年)。2030年には全国で32%。同じ課題を全国で迎えることになる。)

  •  地方の行政への「依存」構造

1.公共事業頼みの雇用 (依存度:東北12%、全国平均約7%)

2.農業・漁業に対する莫大な補助金

3.行政サービス頼みの介護・福祉

 →実はこれらの課題は東北が震災前からすでに抱えていた課題であり、震災によって、加速・顕在化させることになった。そのため、今の東北は地方の課題の集積地といえる。

  •  資源供給の起点としての地方

1.豊かな資源という功罪
  地方を支えた豊富な資源、単純作業を素早くこなすこと ( 例;牡蠣の殻取り)、そして、資源は枯渇、、、

2.大企業の下請け構造
  
顧客を見る文化の弱い産業構造(例;通販業者がなかった東北)

→震災によって人口減少・高齢化・産業衰退が加速した今、ハードへの投資は進んでいても、ソフト面の対策は進まないという、負のスパイラルはますます加速していった。

<生み出したい「新しい価値」とは?>

事例)アメリカ:ウィルミントン市 人口1万人

当時の状況:2008年大手物流会社のわずか3年の撤退により、街の1/3の雇用がなくなるという経済危機が発生。

結果:失業率 撤退前:5%→撤退後:20%近くとなる。

 地元ではない、単一大企業への依存、地域外への経済・富の流出。

 大手企業が入っていたときは、雇用は生み出すが、新しいビジネスを生み出す機会はない(流出)。

<ウィルミントンで経済が回るような施策をたてる>
バイローカルキャンペーン、ファーマーズマーケット、再生エネルギーの利用、地元の歴史的建築物のリノベーションなど

施策の重要キーワード:<レジリエンス>
地域の資源を活かし、地域経済や地域の暮らしを豊かにする、新たな事業の創出。

(経済・エネルギーを地域でまわすこと、人材教育)

 

<これからの東北で必要なこと>(これまでのやり方を再現しても、うまくいかない)

「人口減少社会における未来を共に創る」

単に人口が減っているというより、頭脳が流出しているという実態。この地域に集まって何かをするのではなく、才能を活かすために地域から出て行ってしまう現状に手を打たなければならない。

1.攻め:地域の新しい産業・雇用をどう生み出せるか

・使われていない地域資源を活かした事業づくり

・流通改革(都市と地方の新たな関係づくり)

・次世代の担い手を育成する など

 2.守り:地域の人が安心して暮らせる仕組みづくり

・支え合いの中で健康的な暮らしを守る

・働きやすさをデザインする(働き手にあわせる:子育て世代・障がい者(特に遅れている)・高齢者など)

・新しい自治の形 など

 3.戦略:「攻め」と「守り」をどう総合的・有機的にデザインするか

・まちづくり

・行政改革

 →いろいろな地域の課題と重なるので、ある意味東北が解決モデルの実験場でもある。

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3.【東北から生まれているモデルと右腕派遣プログラム】

ETIC.の「右腕プログラム」は、震災後に立ちあがった起業家・団体のリーダーのもとに、プロジェクトを共に推進し、有能かつ意欲ある人材を「右腕」として派遣している。5年後も10年後も若者たちが集い、起業家精神溢れる東北を目指す。

 事例紹介:陸前高田のバイオマス

 ■ マッチング事業

ETIC.は、インタビューを通じてプロジェクトの要点を明らかにし、最適な人材をマッチングすることを通じて、事業の立ち上げや拡大を加速させる。一部、団体側との直接雇用の形式を取っているケースもある。

 ■各種サポートの提供

プロジェクトに対して、主に20~40代の若手人材を3ヵ月~1年間派遣し社会人15万円~/月、学生10万円~/月の活動支援金に加え、担当コーディネーターによるモニタリング、合宿等の研修、現地でのサポート(ビジネスマッチング、情報発信)などを提供している。

 

<東北から生まれているプロジェクト>>

● 【新しい仕事づくり】

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・気仙沼地域エネルギー開発 :地域サイズでのエネルギー開発(成功事例が少ない)

・はまのね(蛤浜再生プロジェクト)

・東北食べる通信(東北開墾):非常時だけでなく、平時からつながるしくみ

・ATALATA(東北Rokuプロジェクト)

 ●【暮らしを守る】

・宮城県石巻市でデイサービスを展開(「りぷらす」):地域住民を「健康サポーター」に

・小高ワーカーズスペース

・放課後学校「コラボスクール」

・子育て中のママたちが安心して働ける職場づくり(「ピースジャム」)

<<右腕の成果>>

派遣中および東北で活動継続中のOBOGあわせて約120名

4.【企業支援のあり方 ~みちのく復興事業パートナーズ】

もともと花王さんからお声がけがあり、2012年6月に「みちのく復興事業パートナーズ」を立ち上げ、事業を通して復興に取り組む東北のリーダーを支える企業コンソーシアムを設立した。現在は7社が参画しており、現地のニーズを可視化し、企業の持つ人材や専門性、ネットワークとのマッチングを行う。連携した支援を行なうことで、東北の自立的な復興の流れを支えることを目指している。

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 <<連携と発信の取り組み事例>>

地域の事業者向けプログラムとして「みちのく創発キャンプ」を、企業コンソーシアムならではの情報発信として「みちのく復興事業シンポジウム」を開催している。

個社の取り組みとしては右腕に参加している現地団体との協働がある。

 (事例)個社の取り組み-損害保険ジャパン日本興亜株式会社

ビジネスパーソンのスキル・専門性を活かした貢献を社員派遣プログラムでおこなう

日頃の業務で培った社員のスキルやノウハウを活かして、現地の事業を支援することを目的としたプログラム。複数名の社員がチームを組み、2週間ずつ4-5人チームがリレーし、約3ヶ月間の派遣先の事業者とともに活動(社員研修の一環)。

プロボノのなかでも、ビジネスパーソンとしてのスキルが特に現場では必要とされている

特に立ち上がったばかりの団体にとって、組織の公式ルールのドキュメントをつくったり、ビジネスに必要な業務プロセスの進め方の整備が必要で、それには企業がアタリマエに持つ仕事の進め方のスキルが非常に役立つ

 (社員の反応:当たり前のように準備された環境で仕事をしているが、スタートアップしたばかりの団体にはその当たり前がない。いかに自分たちが恵まれたなかで仕事をしていることがわかったのと、そのスキルで貢献できることがうれしい。)

5.現地事業の変化とこれからの方向性

これまで(2012~2014年)は、被災地復興の希望の芽を育てることに重きを置いてきたが、これから(2015~2017年)は、地方創生も見据えた事業モデルへの成長に力を入れていく。

 <ニューオリンズの成功例>

もともとダウントレンド(高齢化・人口減少のうえにハリケーン・カトリーナ災害で市街地の約8割が浸水、死者・行方不明者2541名 被害総額100億ドル~250億ドル、全米史上最悪の自然災害(当時))の街が、今や米国でも起業しやすい街に変わった。

 印象的だったのは、企業が何をしてきたか。それはプロボノ。クリエイティブ人材もだいじだが、"ふつう"のビジネスパーソンの知識はもっと必要。これからの地方をつくっていくモデルにしていきたいし、企業側もスタートアップに触れる機会にもなる。

 

 <<山内さまのお話を受けて、質疑応答と感想など共有>>

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輪になり、ひとりずつ山内さまへの質問と感想を共有。山内さまにまとめてお答えいただきました。

 

 Q.「右腕」は、だれでもできるわけではない。募集と人選、最終的な評価はどのようにしているのか。


 Q.リーダー・ファシリテーターの重要性・必要性を感じる。自身が仙台出身なだけに特に気にかかる。大企業と被災地は美しく結びつくのだが、地元の中小企業はどのように関わっていったらよいのか。


 Q.震災直後、金融会社は入りにくいと感じていた。いつかはビジネスがたちあがってくると思っていた。もしかしたら、これからかもしれない、と今日話を伺って思った。自分は、高齢化が進んだ村で、バイオマスエネルギーの立ち上げを支援しているが、途上国でやる以上に難しさを感じている。

ETIC.は、NPOではなく、事業をするリーダーをどのように見つけているのか。プロボの感覚はまだ日本ではうすいし、人を送る費用はどのように説得しているのか知りたい。

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 Q.若者の流出=頭脳の流出である、というお話が一番考えさせられた。求められるもの、リーダーとのマッチングをどうつなげているのか。


 Q.大阪の企業です。企業にとって当たり前、組織のあり方、ビジネスの進め方が重要であることに気づき、びっくりした。お金でなく、もっているスキルで何かができるということ。

何ができるのかと考えたとき、東北と大阪の距離感をどう縮めていけばよいのか。支援のきっかけを考えるにあたり、教えてほしい。


 Q.システマチックになっていることに感銘を受けた。現在は、規模は小さめだが、今後どのように広めるのか。新しい起業家を発掘していくのか。市町村・地域の単位でみたときに、集積・コネクションはどう築いていくのか、うかがいたい。

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Q.ボランティアにはいろいろな形がある。リーダーの定義が自分のなかであいまいなので、知りたい。


Q.超高齢化社会、労働減少の流出、顕在化。本質がうかびあがった。おもちゃメーカーと重なる。おもちゃの本質を考える機会になった。「みちのく復興事業パートナーズ」に入りたいと思うときの、社内説得方法について知りたい。また、社内からはどういう質問 が出そうか。また、どういう評価を求められるのか。現在のパートナーへのフィードバックはどのような内容か教えて欲しい。


Q.被災地復興支援は「特殊なもの」との前提を持っているが、それは震災前からの東北の課題で、かつ日本全体の課題だとわかった。求められているのが、普通のビジネスパーソンのスキルということが気づきであった。

「普通」のスキルとはどんなものか、幅が広いので具体的に教えてほしい。CSRの予算はなく、派遣をするには会社の稟議を通すため、リターンは何かと聞かれるが、どのように答えているのか。事例を教えて欲しい。

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Q.ブランド発信力が東北の弱点で、どこも同じ課題だと感じた。発信力がなくてもその土地の良さをわかってもらうためには、定期的にその土地にきてもらう機会をつくるようにしているのだと感じた。通販事業が西日本で強いのはなぜか。

 

<自社の環境・CSR活動について発表>

株式会社タカラトミーさまより、環境・CSR活動の取り組みについて発表

質問:「震災へのお見舞い文」の掲示は今どのようにされているか、他社の現状を知りたい。

 

  <パートナーさまよりご案内>

株式会社彩生舎さま(第5回 水の彩うるおいひからびフォトコンテスト)、富士通株式会社さま(富士通フォーラム2015)より、開催イベントのご案内をいただきました。

<事務局よりお知らせ>

次回フォーラムは、7月を予定(内容未定)しています。日時・内容が決まりましたら、こちらのサイトでご案内いたします。

 

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懇親会のようす

参加された方の声から

☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか☆

被災地支援につながる、必要とされるモノ・人・コトとのつながり方に関する知見を教えていただくこと。

ほかの企業様の被災地に対する活動の現状など。

支援プロジェクトを社内でいかに浸透、理解させるか。

何となく、勉強させてほしいと、漠然と思っていました。

他社企業様との課題共有。

☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください☆

各社さんのかかえる悩みを知ることができたことと、各社さんの取り組みからヒントをいただけたことがよかった。

今回は参加人数も少なく、発言する機会も多かったので、アピールできたというより、自身の訓練になりました。

山内様の話、後の全員での議論にいくつも気づきをいただきました。

2つの多くの学びがありました。1)被災地の問題は特殊ではなく、日本がかかえる問題だったこと。2)求められるスキルは“ふつう”のスキルであること。

属人的→共有値-企業

☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください☆

社内外に伝え、何か新たな動きにつながればと思います。

社内への伝達をしっかりとしたい。できるだけ社員に現地を見てもらう企画を作っていきたい。

正直なところ、どう企業活動に落とし込むべきか悩みます。

復興支援「事業」→化

次回のイベント・フォーラムの予定

 

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