開催日 | 2015年12月2日(水) |
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対象 | イーズ未来共創フォーラム/ジャパン・フォー・サステナビリティ 企業・団体パートナーさま、オブザーバーとしてご参加の企業・団体の皆さま |
ゲスト | |
ファシリテーター | 枝廣 淳子 |
参加人数 | 5社7名、学生18名 |
枝廣ゼミでは、企業が就活生・学生の求めている情報をどのように、どの程度開示しているかの調査プロジェクトを行っています。その名も「地球と自分を幸せにする企業の情報の見つけ方」プロジェクト。結果をエコプロ展・プレスリリースで広く社会に発信する予定です(※)。今回のフォーラム(合同ゼミ)では、それに先立って、調査項目の設定や構成・対象企業の選び方、評定に当たっての基本的なスタンスなど、このプロジェクトについて説明したのち、調査対象企業の開示パターンを企業パートナーのみなさんと学生で分析しました。
企業の理念や活動に関する大事な情報が載っているCSRレポートですが、実は、一般の学生には存在自体あまり知られていません。このプロジェクトをきっかけに「学生が求める情報がCSRレポートにある」ことを伝え、より多くの学生に知ってもらうとともに、学生や就活生の求める情報を企業側にも知ってもらうことで、双方に役立つコミュニケーションにつながれば、と願っています。
9月のゼミ合宿で訪れた水増集落について、枝廣研究室の木幡くんが学生を代表し、発表してくれました。
水増集落は20年以上「0子化」が続き、総世帯数は、10世帯19人(平均年齢72歳)で、限界集落と言われています。このままだと集落が消滅してしまうため、集落の人びとは地域活性化活動によって若者を集落に呼び戻そうと動き始めました。
その活動のプロジェクトのひとつが、熊本県のテイクエナジーコーポレーション(新エネルギー開発のベンチャー企業)と組んではじめた、太陽光発電所の開設です。水増集落の3.4Haの牧草地に約8000枚の太陽光パネルを設置し、出力2MWの「水増ソーラーパーク」ができました(2014年5月)。
このプロジェクトの運営は、テイクエナジーコーポレーションから水増ソーラーパークの借地料収入のほか、売電収益の5%が還元されるしくみとなっていて、その資金で村づくりや村の活性化策に活用しています。その他のプロジェクトとして、集落独自で栽培している在来種の大豆「八天狗(はってんぐ)」を地域ブランド化しようと現在展開案を模索しています。
枝廣研究室では、こうした集落の活動をエコプロ展などで発表・PRしたり、地域活性化策を水増の人びととともに考え、お手伝いしていきます。
プロジェクトの説明と結果の共有
枝廣より、今回の調査の全容を説明させていただきました。
<目的>
このプロジェクトは、「就活生の求める情報開示度調査」です。ゼミ生は3年生かつ、就活生であるため、そもそも「どういう企業に就職したいのか」や「自分が働きたいと思う、いい会社」について考え、今学んでいるCSR・環境・サステナビリティといった視点で調査/分析を行うことにしました(「地球と自分を幸せにする企業の情報の見つけ方」プロジェクト)。
<プロジェクトの進め方>
まず、「就職したい企業の特徴」授業やゼミなど、併せて約200人にインタビューやアンケート調査を行い、次に、集めた「就職したい企業の特徴」に関する情報についての開示・発信度合いを調査しました(目標の高低や達成状況の評価など情報の中身の優劣ではなく、情報記載の有無だけを調調査)。
次に情報をさらに整理し、企業そのものの情報である【企業軸】(環境問題への取り組み、事業安定性、社会とのコミュニケーションなど)」と、従業員にとっての情報の【自分軸】(チャレンジできる環境か、柔軟な働き方ができるのか、休みがとれるのかなど)の2軸で分けて考えました。
さらにこの【企業軸】、【自分軸】を、心理学者マズローの欲求段階の枠組みに当てはめました。マズローの欲求5段階「自己実現」「承認」「所属」「安全」「生存・生理的欲求」ですが、晩年マズローは「さらにその上に、自己を超越し、他人やコミュニティの発展を願う欲求がある」と述べているそうです。今回集まった「就活生の知りたい情報」には、この「さらに上の欲求」に当てはまるものもあったため、マズローの欲求5+1段階説(図1)の枠組みを用いることにしました。それぞれの枠で「知りたいこと」とそれに見合った「チェック項目」を割り振ります(図2)。そして、個別企業ごとに点数を出し、チャート化しました(図3)。
今回の合同ゼミでは、チャート化した個々の企業から全体の41社の企業の開示傾向や傾向から何がみえてくるのかについて、実際に企業で働くパートナーさんからアドバイスやヒントをいただきながら、一緒に考え、分析しました。
(この内容の結果報告や詳細は12月9日(水)発表のプレスリリース・12月10日(木)発表のガイドブックをご覧ください)
(図1)
(図2)
(図3)
(各企業ごとに点数を割り出し、チャート化する元シート)
- 就活生・学生が就職に当たって企業について知りたいと思っている、主にCSRに関わる情報と、実際に企業が発信している情報がどの程度マッチしているのかを調べる
- 「学生・就活生が求める情報」をより網羅的に発信している企業はどこかを明らかにする
- 就活生・学生に、「就職にあたって知りたい情報の見つけ方」を伝えることで、より自分にとって大事な軸に沿って就職先を考えることにつなげてもらう
- 企業に「就活生の求める情報」を伝えることで、情報発信の改善につなげてもらう
<プロジェクトのステップ(まとめ)>
- 就活生・学生が「就職にあたって企業について知りたい情報」を、約200名の学生から集めました。学生が知りたい情報は「企業についての情報【企業軸】」と、「従業員個人にとっての情報【自分軸】」に分かれることがわかりました。
- 学生から集めた「知りたい情報」を、【企業軸】・【自分軸】ごとに、米国の心理学者マズローの5段階欲求理論に「利他・コミュニティ発展の欲求」を加えた「欲求5+1段階」の枠組みにまとめ、スコアシートを作成しました。
- 独立した4つの「就職したい企業ランキング」のすべてに取り上げられていた企業を調査対象としてリストアップしました。
- 各社のCSR報告書、統合報告書などを対象に、(2)のスコアシートに基づき、情報の記載の有無を調査しました。
- 【企業軸】・【自分軸】の各欲求段階(6段階)のそれぞれの段階に10点ずつを割り当て、各報告書の点数をつけました(【企業軸】60点、【自分軸】60点、総合点120点)。同時に、全体の傾向を分析しました。
企業が発行しているサステナビリティレポートやCSR報告書、統合報告書などを資料として調査をすすめました。なお、多数の企業を比べるため、一覧性のある冊子や印刷したPDFの紙媒体を使い、ウェブサイトは対象外としました(2015年8月9日現在で最新版を使用)。
<グループディスカション:調査対象の41社についての開示パターンを分析・発表>
まず、各グループで、調査対象である41社の結果分析をする前に、調査についての質問・感想等意見交換をしました。その後、企業名を伏せたまま、41社の結果(グラフ)を見比べ、その開示パターンを探り、纏め、各グループから発表しました。
<分析対象報告書の解説(枝廣解説)>
今回対象の冊子は、単に「給料」だけを基準にするのではなく、「入社してからその企業で自分らしく生きられるのか」、「その企業は地域や地球のためになるような活動を真に行っているのか」、といったことも考え合わせたいとの思いから選び取っています。そういう面で、情報源としてはCSR報告書とサステナビリティレポートが適切でしたが、いずれも発行していない企業からは、統合報告書やアニュアルレポート、環境報告書(【自分軸】0の可能性は高い)を対象としました。
41社中、統合報告書(4社)、アニュアルレポート(5社)、環境報告書(1社)、その他はCSR報告書かサステナビリティレポートでした。実際の各企業のチャートを報告書の種類ごとに分けて、何か特徴があるかみてみました(ワーク)。
<企業のみなさまからのコメント、グループ内質疑応答、振り返り>
パートナー及びオブザーバーのみなさまから、企業の立場からコメントをいただきました。
分析作業をするうえで感じたこと、マズローの欲求5段階説を基盤にした枠組みや、【企業軸】【自分軸】という枠組みを作ったことに関してや、その枠組みの構成や調査方法についてどう思うか、当プロジェクトそのものについての意義や疑問など、率直なご意見ご感想をいただきました。
その後、グループを変え、プロジェクト全体・今日のゼミを通しての感想やお互いの疑問質問に答える時間をとり、最後振り返りをおこないました。
関連する情報は下記のとおりです。
・プレスリリース :就職活動中の学生が知りたい情報がもっとも開示されているCSR等報告書は 「サントリーグループ CSRレポート 2015 詳細版」
エダヒロの共創日記 :合同ゼミ(企業 X 枝廣研)を開催しました!
また、今回のフォーラムについて、ご参加いただいた、パートナー企業「彩生舎さま」のブログでもご報告頂きましたので、ぜひご覧ください。
彩生舎さま(ブログ):東京都市大学「合同ゼミ」~イーズ未来共創フォーラム
次回フォーラムは、来年2月を予定(内容未定)しています。内容が決まりましたら、こちらのサイトでご案内いたします。
懇親会のようす
次回フォーラムは、2016年2月を予定(内容未定)しています。内容が決まりましたら、こちらのサイトでご案内いたします。
参加された方の声から
☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか☆
学生が企業の情報開示に何を求めているのか? 学生の生の声を聞くことで今後の指針にする。
企業と学生の方々の考えに「ズレ」がないかどうか、意見を伺いたいと思っていました。
環境学部という意識の高い学生さん達が、CSRレポートにどのような情報を求めているのか、生の声が知りたかった。
当社は新卒社員なども居ないので、若い方の率直な考えを聞きたかった。
学生の目線で必要とされるレポートはどういうものか、どういう情報が必要なのか、学生のみなさんが何を求めているのかを知りたいと思っていました。
☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください☆
普段、考えることのないテーマで幅が広がったと思います。マズローの欲求段階説を切り口にレポートを評価するという視点が新鮮でした。最後に業種までを開示していただければ、より参考になると思いました。
大変有意義な時間をありがとうございました。学生の方々と直接対話ができて良かったです。
【企業軸】【自分軸】という新鮮な視点でCSRレポートの評価をしている取り組みが知れて、非常に有意義であった。とても楽しかったです。
率直なご意見を聞くことができて大変勉強になりました。
☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください☆
今後のレポート作成に活かしていきたい。CSR、人事にも情報提供したい。
2016CSRレポート作成の参考にさせて頂きます。
今後のCSRレポートで新たに情報公開すべき内容、情報の深さについて、大いに参考にしたい。
早速、今夜のうちに社員へ報告します。
今後の情報開示の内容等も学生の要望に答えて[応えて]いきたいです。