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第44回 ビジネスと人権 ~身近な問題から考え、自社が取り組むべきことを理解する~

2017月02月14日 更新
開催終了レポート
 
開催日 2017年3月15日(水)
対象

イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま

ゲスト

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
渉外部門チーフ/土井 陽子 様

有限会社エコネットワークス
代表取締役 野澤 健 様

ファシリテーター

枝廣 淳子

参加人数

9社・団体9名

開催レポート

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「人権」と聞いて、どのようなイメージをされますか。

「人権」には明確な基準がありませんし、時代や社会背景で内容も常に変わるため、難しく捉えられてしまう傾向があります。特に日本では、日常的に意識することはあまりありません。一方で「人権」は、政府主導の働き方改革にもつながる身近で喫緊な問題となっており、すべての企業・組織のあらゆる部署の人が学び、それぞれで考えていくテーマになっています。

 今回のフォーラムでは、国際人権NGOアムネスティ・インターナショナル日本の土井さまと、異業種勉強会会員でもいらっしゃる、エコネットワークスの野澤さまを講師にお招きして、概念からしっかりと学んだ上で、いくつかのケーススタディを用いて「人権」への理解を深めていきました。

 今回のフォーラムで、「誰の」「何の」権利を侵害しているのか、深く考察することができたのではないでしょうか。本日の学びをぜひ活用いただけたらと思います。


 

1. 問題意識や課題の共有

<グループディスカッション>

人権問題に対する自社・団体の取り組みについて共有

  • どれくらいの意識を持って人権問題に取り組んでいるか?
  • マネジメントは意識を持って取り組んでいるか?
  • 取り組みの進捗は?(方針を作り始めている、社員へ研修を行っている、考えや活動について情報発信している、等)

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2.ワークショップ 「人権・多様性リテラシーを高める~世界で通用する表現、しない表現」
有限会社エコネットワークス
代表取締役 野澤 健 さま

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 有限会社エコネットワークス 概要>

CSR・サステナビリティ分野専門の調査、言語、エンゲージメント支援を通じて企業や自治体、NGOの取り組みをサポート。個を起点に世界に広がるパートナーのネットワークを通じて各地の課題や動向をウォッチしている。

エコネットワークスさんは、働き方は個人がベースで、多様なバックグラウンドを持った、世界につながるネットワークで活動しており、人権をテーマに企業サポートする機会も多いため、今回アムネスティ土井さまとともに情報提供とワークをいただきました。

【CASE
性別・役割、人種、多様性、子ども、障がい者、歴史、文化 

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3.【講演】「ビジネスから人権を考える」

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本 

渉外部門チーフ 土井 陽子さま

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アムネスティ・インターナショナル日本で企業における人権の取り組みの推進を担当している。前職では、電機メーカーのCSR部門で人権方針の策定や「ビジネスと人権」をテーマとしたeラーニングの実施、人権デューデリジェンスの取り組みに関わる。

アムネスティ・インターナショナル日本
世界80カ国を活動の拠点とし、ほぼすべての国と地域で700万人を超えるサポーターとともに活動する国際人権NGO。活動内容としては、人権侵害が起きている国に調査団を派遣、実態を把握し、その内容を報告書等で世界に発信している。中立の立場から、国連や各国政府に対し、国際法を守り、人権を尊重する政策をとるように働きかけを行っている。アムネスティは企業と対立しているように見られがちだが、ビジネス界の人々(ヴァージングループのリチャード・ブランソン氏、エア・アジアのトニー・フェルナンデス氏ら)が国際評議員(企業でいう社外取締役)として参画しており、ファンドレイジングなどでも実はビジネスの視点が入っている。

日本での活動例:日本での死刑制度廃止の呼びかけ、紛争に対する武器貿易の廃止、表現の自由、政府による強制失踪、先住民の権利、難民の権利、企業の説明責任(コーポレートアカウンタビリティ)など

  • 経済的に大きな影響を持つ企業

世界の経済規模の大きさで国や企業をランキング化すると、上位100のうち、企業は51社、国は49カ国という結果になった。つまり、それほど企業の影響力が拡大していると言える。アムネスティとしては、国だけでなく、企業も「企業の説明責任」という観点から人権問題にしっかり対応していくよう、行動を促すための働きかけを行っている。

  • ビジネスと人権に関する報告書

2016年、アムネスティ・インターナショナルが2016年に発表した「ビジネスと人権」の問題を扱った報告書の内容について紹介。

●  スマートフォンに隠された真実
●  サッカーワールドカップの裏側
●  経済の拡大で追いやられる人びと
●  拡大するエネルギー需要の影で
●  虐げられる鉱山労働者
●  買い物かごの中の犠牲者

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このようにアムネスティでは、人権侵害が起きている現地での調査を行い、人権状況改善のために市民と声をあげて政策提言やロビー活動につなげるキャンペーンやアクションを行っている。活動のポイントは、「権利に落とし込む」こと。「誰の」、「何の」権利を侵害しているのかを考え、国際人権法に沿って改善活動につなげている。

  • 日本企業の人権への対応は?

記事からみる日本企業の人権問題――2014年から2016年の間に変化

メディアでも特集記事が組まれ、実際にNGOから指摘を受ける企業が増えてきている。

  • 電子機器:  日本の大手電機電子機器メーカーのカメラが、イスラエルによるパレスチナ攻撃に使用されたロケット弾に使われていた。
  • アパレル:  日本の大手アパレルメーカーが中国で生産を委託している工場で過酷な労働環境がみられると、日本と香港のNGOが示唆。

 グローバルで展開している日本企業も増え、時価総額の大きさからも、世界も日本企業の動向や対応に注目していることの表れである。

  • 2016年:強制労働問題への企業の取り組みへのスコア化
  • 2017年3月:企業の人権に関する方針・取り組みを評価

企業は、取り組みを「方針」にするのは得意だが、それを体系化し、実践に移していくのが弱い。どのランキングを見ても同じような結果が出ている。対応が分からない点はアムネスティをはじめとするNGOに相談をして、自社の取り組みの推進にうまくNGOを使ってもらえたらと思う。

  • 人権とは

そもそも人権とは、「人間が人間らしく、尊厳を持って生きるために、すべての人が生まれながらに平等に持っている権利」であり、世界中どこにいても同じように守られるべきもの。だが、現実はそうなっていない。すでに国よりも企業の経済的な力が大きくなっている今、企業としての高い対応能力が求められている。

「人が関わるところには、人権が関わる。」つまり、企業の事業活動と関わる人がいるところでは、人権が関わることを念頭におかなければならない。

  • 「ビジネスと人権の国際基準」

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国連ビジネスと人権に関する指導原則(2011年)

保護・尊重・救済のフレームワーク

企業がもつ人権を尊重する責任
企業が求められる対応(プロセス)

国の人権の保護をする義務

国が求められている対応

  1.      領域および管轄内にある人権侵害を防止する手段の構築
  2.      国別行動計画の策定

国の政策として企業の人権侵害を防止するために、国としてどのように実行するのか文書として作成・公表するもので、G7では未策手なのは日本とカナダのみだったが、日本は数年内に策定することを発表(2016年11月)。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えたものと思われ、企業に対して政府から何らかの働きかけが出てくるものと予想。

ビジネスと人権」に関する法規制

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  • 2010年 ドット・フランク法(米)
  • 2016年11月 紛争鉱物規正法(EU)
  • 2015年 現代奴隷法(英)

国連持続可能な開発目標(SDGs)

17のゴールすべてに「人」が関わる内容であり、SDGsの考え方の前提に人権があると言える。グローバルコンパクトなどが出したSDGsコンパスは人権デューデリジェンスのプロセスと考え方は同じなので、SDGsと人権はセットで考えていくのがよい。

『経営』ではなく、『人権』への影響を考える

人権への取り組みが「付加価値」に

人権への取り組みを進めた企業には、社会的価値が加わる。

人権を付加価値にした例:

【日本】シチズン時計(2016年)

<新しい動き>

パナソニック、ソニー、ファーストリテイリング、栄鋳造所、パタゴニア

 

【海外】 ICT企業(アップル、フェイスブック、マイクロソフト、ツイッターなど)、ファイザー製薬、フェアフォン(オランダ)

3.(ワークショップ)人権リスクシナリオワークショップ(野澤氏)

「アパレル」「食品・飲料」「観光・リゾート」の3種、それぞれに書かれているシナリオに対して、どの種類の人権が侵害されているかを、グループごとに考えました(国連グローバルコンパクトのシナリオを参照)。35種類にわけてリスト化したビジネスと関係の深い人権に関する権利から、侵害されているものを選びました。

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4.質疑応答(抜粋)

Q.ある会社が独占的に仕事を請け負っている、など取引形態や契約的な要因で、人権につながることはあるか?

Q.部門横断的、全社的な取り組みとは

Q.土井氏の前職である電気メーカーのCSR部門でおこなった仕事について。どのように社内で人権への取り組みのプロセスを進めていったのかをお聞きしたい。

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<枝廣からの質問(抜粋)

 Q.アムネスティ(もしくは土井さん)から見て、世界全体の人権に対する動向はどうなのか? 先進的なところだけが動いているのか、それ以外の企業も動かざるを得なくなって動いているのか?

Q.日本の人権問題について。特に技能系研修生の問題など、どのような認識をもっているか。働きかけ方法と国内企業が考えるためのヒントを教えてほしい。

Q.インドネシアのパーム油の事例で、RSPO認証を取っていたのにも関わらず、人権侵害がおこっていた問題について。認証があるから安全だと、認証を頼りにしている企業も多いと思うが、今後の判断はどのようにすればよいのか。

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【枝廣のまとめ】

今日のお話を聞いての学びは主に4つありました。

①     人権侵害がなぜ起こるのか-「メンタルモデル」、つまり「思い込み」から

②    ①の状況に対して「それが問題だと気づかない」

③     自社がかかわっている実態を知らない

①     コスト・利益を最優先する考え、もしくは圧力

 

 <事務局よりお知らせ>

次回は5月17日(水)、テーマは「サーキュラー・エコノミー」を予定しています。
ぜひふるってのご参加をお待ちしております!

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  フォーラム終了後、みなさんと          懇親会のようす

参加された方の声から

☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか(抜粋)☆

自分の中で身近に感じていなかった人権問題について考えるきっかけにしたい

ビジネスと人権の考え方の理解を深めること

ビジネスと人権について。実務的な説明を拝聴すること

この10年間の「人権」認識の変化

「環境問題」の広がり、幅、スピード等の現況

ビジネスにおける「人権」の取り組み

日本企業の人権への取り組み方

企業の取り組みの中に人権の活動をどのように取り入れていくか?そもそも人権についての活動とはどんなものなのか?

人権に関する日本の現状を知る

☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください(抜粋)☆

一方的な聴講ではなく、対話や議論をするスタイルは非常に有意義でした

企業の実例を知れて良かった

具体的な企業の取り組みを教えていただいて、参考になった。人権について、何をどうすれば良いのか、全くみえなかったが、方向性が見えてきた

具体的でためになった

ビジネスにおける「人権」の取り組みを体系的かつ具体事例を交えて紹介してくださり、大変勉強になりました

CMの実例、何が問題なのか等は大変分かりやすかったです

企業の最新の取り組みを知りました

シナリオで考える人権リスクが良かった。実際にやってみることで、理解が深まる

いつしか、社内の研修でもやってみたい

もっと話を聞きたい

国連の先駆的活動(2016.11)

「人権」について知ることができた。人権がもつ権利も幅広く知らない権利もあったがシナリオから考えることで少し理解することができた

☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください(抜粋)☆

気づきの感覚を研ぎ澄ましていきたい

社内のCSR部門と共有したい

社内の意識を高めていきたい

人権に対する取り組みの重要性を社内で共有するとともに、社内の「人権」に関する取り組みを収集整理し、公開情報を整備したいと思います

北海道経済同友会の「環境委員会」の委員なので、話題提供をしていきたいと思います

社内に浸透、教育

自分ごとにしたい

次回のイベント・フォーラムの予定

次回は5月17日(水)開催します。テーマは「サーキュラー・エコノミー」を予定しています。ぜひふるってのご参加をお待ちしております!

 

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