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第47回 急拡大するESG投資――企業に迫るリスクと新たなビジネスチャンス(2017年9月27日開催)

2017月11月27日 更新
開催終了レポート
 
開催日 2017年9月27日(水)
対象

イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま、会員以外の企業・団体の皆さま(※)
(※)会員以外の企業・団体の皆さま:パートナー参加ご検討いただける企業・団体の皆さまで、参加は1社(団体)2名まで・1回限り有効とさせていただいております。

ゲスト

三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
クリーン・エネルギー・ファイナンス部 主任研究員 吉高 まり 様

ファシリテーター

枝廣 淳子

参加人数

14社25名、枝廣研究室の学生7名

開催レポート

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世界最大の年金基金である日本の公的年金(GPIF)が、日本株のESG指数を採用し、1兆円を投資したことは、金融のみならず企業にとっても大きなニュースでした。欧米では当たり前であったESG投資が年金基金などの長期的な収益向上に資する重要なツールであることがようやく日本でも認識されるようになり、一過性では環境・社会・ガバナンスの要素に配慮した投資が一気に加速しています。

今回は、長年気候変動に関して金融機関で対応した経験を有し、かつ昨今はESG投資の現場で様々なアドバイスをしている三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社の吉高まり様より、ESG投資の動向、気候変動交渉と企業・金融に関連する動きなどについて教えていただきました。


 

1. 講演

『急拡大するESG投資――企業に迫るリスクと新たなビジネスチャンス』

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三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 クリーン・エネルギー・ファイナンス部
主任研究員 吉高まり氏

私はこれまでエコファンド等の環境金融の仕事に携わってきましたが、ESG投資に関連した仕事が2014年から激増しています。ESG投資の急拡大によって、金融機関の状況も180度変わっていることを最前線で日々感じています。今日はESG投資の歴史と今後の動きもご紹介をしますが、なかでも最も大きな鍵である「SDGsとの関係性」とESG投資家が注目する「グリーンボンド」、そして最後に「気候変動との連動」の3つをポイントで、しっかりお伝えしたいと思います。

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1. ESG投資関連の動き、そしてSDGs

  • ESG投資は世界のメインストリームに

GPIFは年金基金の資産合計額において世界トップの140兆円を保有している。そのお金がESG投資に関わってくることは世界的にインパクトが大きい。すでに世界上位20の年金基金のうち、12基金がESG投資に取り組んでいる。今回、日本のESG投資に積極的に取り組みにより、ESG投資の割り当てが全体的に増加している。

 世界のESG投資残高:22兆円(2016年) 参考18兆円(2014年)

※JSIF(日本サステナブル投資白書2015年より)

  • 投資家と資産運用会社と企業の関係
    ~企業の財務部(IR)はESG投資家の総合評価にSDGsを活用する~

投資をする際の企業の総合評価の一つになっているSDGsは世界の共通言語になっていることもあり、投資家や資産投資家にとってわかりやすい。企業側も、例えば、教育支援活動はこれまでは途上国対象だったのが、先進国への支援も対象となるため、社内の理解を得やすく、取り組みやすさがある。

  • SDGsでCSV達成

グローバルコンパクトの参加企業はGPIFから良い統合報告書を出しているとお墨付きをいただいているところが多い。そのような企業の多い理由の1つは「SDGsはビジネスで」ということがトップダウンで着実に実施されていることが考えられる。

今の時代、環境規制について守るのは当然で、ビジネスソリューションとして何を顧客に提供できるのか、常にビジネスチャンスに活かす姿勢で臨むこと。そしていまや、「SDGsでCSVを達成せよ!」というテーマでテレビが取り上げようになったことは、時代的にSDGs(=ESG)の流れがきていることの表れである。

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2.ESG投資家とグリーンボンド

近年、ESG投資家がグリーンボンドを積極的に購入している。通常、企業が資金調達する場合は、債券や株を発行したり、融資を受けたりする。その中の債券で、資金使途をグリーンに特化したものがグリーンボンドである。

グリーンボンドは2008年に世界銀行が発行を始め、2013年度で115億ドルから2016年度には810億ドルと急増している。グリーンボンドの需要は2035年には2.26兆ドルと見込まれており、そのうち6230億ドル~7200億ドルがグリーンボンドの発行でまかなわれると予測されている(※)

グリーンボンドの主な使途はエネルギーの関係で、省エネ、再エネ、水関係が多い。グリーンボンドは社債だけでなく自治体債も多く、アメリカではインフラが非常に古くなっているので、新たなインフラをつくる際に自治体がグリーンボンドを発行してマーケットを作っているが、この点においても日本は遅れている。

(※)出典:OECD"A quantitative Framework for Analyzing Potential Bond Contributions in a Low-Carbon Transition

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  • グリーンボンド、国内の発行事例

事例1:東京都
事例2:MUFG

  • グリーンボンドになりそうな例

1)ダイキン:テクノロジー・イノベーションセンター
2)さいたま市

  • ソーシャルボンド

ソーシャルボンドとは、環境問題にとどまらず、社会的意義の高いプロジェクトに限定して資金を供与する債権のことを示し、ソーシャルボンドを発行する企業も増加している。日本ではJICAが発行している。1つの案件に纏める必要がないため、資金調達する際に複数のプロジェクト(教育、介護、食品ロスなど)を組み合わせることが可能となる。SDGsに関わる事業であれば、組み入れられるはず。

3.気候変動交渉と企業・金融に関する動き

パリ協定

パリ協定の合意の大事な点は、「温室効果削減目標の5年ごとの見直し」と「気候変動に対する適応計画及びプロセスの実施とイノベーション」が義務付けられている点にあり、ビジネスに関係が深い。5年ごとの目標見直しにより、厳しくなることはあっても緩むことはない。

トランプ大統領のパリ協定離脱の発言は大きな影響はないだろう。州や企業レベルで再生可能エネルギーへの投資による雇用や輸出ビジネスのポテンシャルが高く(RE100のうごきの例を見ても)、価格が安くなり活発化していることと、離脱の発言の効力が発生するのは次回の大統領選挙の次の日であり、状況が変わると予測されている。

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  • 環境技術を活用した海外展開の可能性(適応ビジネス)

現在、経済産業省の「温暖化適応ビジネス活性化ビジョン策定」に関わっている。日本の民間企業が国際的に貢献しうる適応分野を7つのカテゴリーにした。関連性の高いSDGsを表記し、どう貢献するのかをデータで提示し、どんな地域でどんな適応技術があるかについても、ケーススタディ集として作成している。気候変動はESG投資家にとって最初の一歩のファクターなので、たくさんの企業に参入してもらい、ブランディングの1つとして活用してもらいたい。

 <問題意識ワーク・共有>

 ワーク・共有(1)「ESG投資について、自社・自部門・自分は現在どのような状況であるか」「グループ内で共有後、現状をふまえて特に吉高さんに聞きたいこと」

 ワーク・共有(2)「感想・吉高さんにさらにお聞きしたいこと」

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Q:ESG投資家に損させてはいけないなかで、企業としての見せ方とESGのリターンについて。

Q: 資産運用側としての話だが、グリーンボンドは還付金のようなもので、ファンドより買いやすいのか。

Q:ESG投資家は統合報告書を読んでいるのか

Q:日本のESG投資は今後どうようなスケジュールで増えていくのか

Q:化石燃料を扱う企業へのダイベストメントの動きについて過去・現在・未来

 

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<枝廣からの解説・共有>

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<企業の存在意義>

企業というのは、時代や社会の要請に応えることで存在が認められている。創業当時は想像もしなかったような環境や社会問題が顕在化し、それにともない要請も変化している。その要請に対し、企業がどのように応え続けていくのかが、生き残れる企業だろう。そして、投資家やステークホルダーが要請を応えているかどうかを企業評価する枠組みのひとつがSDGsや、ESG投資といえる。

<ESG投資のリターンの見通し>

<経営層への理解の深め方>

<生活者層へのアプローチ、対話、合意形成について>

●東急エージェンシープロミックス
POZI 奥田建蔵さんより活動のご紹介

東急グループは、神奈川と世田谷を結ぶ西南部に宅地を開発して数百年、街づくりに努めてきた会社。時代とともに街のなかでも高齢化や都市化、環境問題などさまざまな問題に直面する中で、課題に対して広告会社のもつクリエイティブなアイデアを出し合って一緒に解決していきたいとの思いでこのチーム「POZI」を作った。取り組みとしては、社会課題解決に取り組む企業と一緒に、市民の方々が参加してもらえるようなソーシャルアクションやモデルを考え、練りあげる際のコミュニケーションやプロモーションの戦略立案サポートや企画実施を行っている。事例としては、ソーシャルアクションアワード、クライメイトアクションナウ、太平洋の海ゴミに関する啓発活動など。詳しくはこちらをご覧ください。

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 <参考情報>

ESG投資 世界490兆円が向かう
三菱UFJモルガン・スタンレー証券主任研究員・吉高氏に聞く/ESG投資 【7面】

9月27日に開催しました異業種勉強会の吉高さまのご講演内容(ESG投資)を、ガスエネルギー新聞さまが講演ダイジェストとして、11月6日発行の記事で取り上げてくださいました。

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 懇親会のようす

参加された方の声から

☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか(抜粋)☆

ESG投資の評価

SDGsやESGをどう広めていけるか。世界はどうなっているか

ESG投資について世の中の流れを知りたかった(3)

ESG投資に関する(新しい)知識、情報

ESG投資でわかりにくかった選定基準やメリットなどを整理したい

ESGの全体像の理解と活用

公共投資からの知見を得たい

運用会社の現場の声を聞く

ESG投資はなぜ広まらないのか

企業は何に関心を持っているのか

自治体または企業としての新たな資金調達手法

プロジェクトの評価基準に関する新たな視点

ESGの日本における現状と課題など

ESG投資に関する展望

とにかく現状を聞きたい

(私はCSR部門だが)IR担当と状況を共有したかった

SDGsとのつながりを理解する

☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください(抜粋)☆

日本でのこのところの急な動きが想像以上

各企業の取組(先進的事例)

フランスの法律による劇的変化

世界の流れがよくわかった。対応するのにはスピードが必用だと感じた

SDGsを活用することについて聞けてよかった。弊社の取組における不足点が明確にできた

グローバルコンパクトよりもアットホームで、かつ自分で考える時間が多かったので受講しながら競りすることができた

刺激的でわくわくした

吉高さんの話がわかりやすかった

情報量も多く、ポイントがおさえられていた

グループ討論もあったので企業の悩みもわかってよかった

ESG投資やSDGsが世界的に大きな流れになっていることがわかった。これから何をしていけるのか考えていきたいと思った

ESG投資でわかりにくかった選定基準やメリットなどが整理できた

もう一度参加したい

いろいろな企業の話が聞けてよかった

知り合いが増えてよかった

長時間だったので腰が痛くなった

ESGのEよりの話を深く聞けてよかった

資料とパワーポイントが同じであればよりよかった

ESGがなぜ広まらないのか、企業は何に関心をもっているのか、などの事例や説明があり、わかりやすかった

吉高さんの講演は実務経験に裏付けされたもので納得できた

同じような悩みを持っている方々と話しができて有意義だった

ESG(特にE)についての展望が聞けた点はよかった

意識が高まった

インパクトを受けるとともに、黒船はどういう形がよいのか、どのように社内展開すべきか検討したい

難しい内容だったが、全体像について理解できたと思う


経営側の理解のために黒船を使うというのが印象に残っている

次回のイベント・フォーラムの予定

次回は来年1月(または2月)の開催を予定しています。テーマは昨年も好評をいただきました、枝廣とともに2018年度の企業経営・環境経営を進めていくために、押さえておくべきき国内外の最新動向や事例、大事なポイントやキーワードについてともに学んでいければと思っています。ぜひふるってのご参加をお待ちしております!

 

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