開催日 | 2018年9月28日(金) |
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対象 | イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま |
ゲスト | なし |
ファシリテーター | 枝廣 淳子 |
参加人数 | 27社・団体51名 |
今回のテーマでは「ソーシャルインパクト」を取り上げます。ESG投資の後押しもあり、SDGsに取り組む企業が増えてきました。ソーシャルインパクトは単なる財務指標や、ある程度範囲を限定して算定できる環境負荷に比べ、測定や算定の難易度の高い領域でもあります。しかし、測ることのメリットから、支援への説明責任に使ったり、プロジェクトへの支援を集めたり、改善につなげようとする動きが、英国中心に広がっています。
今回のフォーラムでは、世界的な動向とともに、ソーシャルインパクトを測るとはどういうことなのか? どのような手法があるのか? 具体的にどのように使われているのか? 方法論と事例を紹介します。
SDGsのロゴを自社の取り組みに貼り付け、「やっている・やっていない」を示す段階から進んで、「その取り組みがどのような社会的な価値を生み出したのか」を見える化していくために、ぜひお役に立ていただければと思います。
(枝廣淳子)
国内のESG投資額は2017年、約136兆円となり、前年から2.4倍に急増しています(日本サステナブル投資フォーラム調査)。ESGの中でも、Environment(環境)はCO2やLCAの情報が開示されていることもあり、投資家が比較・判断しやすい内容になってきています。Governance(ガバナンス)も社外取締役の数、抱えている訴訟の件数など数値化しやすいものも存在します。しかし、S(Social)については、SDGsの目標のラベルを貼るところまでは来ているものの、見える化できるところまでできていないため、投資家にとっては、他社との比較や投資判断が難しいものとなっています。企業は次の展開として、社会活動でどれだけ価値を生み出したのか、または影響を与えているのか(減らしているのか)を数値化することが問われる時代になってきています。今日はその社会的価値の世界の動向とともに、手法や事例をご紹介します。
皆さんの「ソーシャルインパクト」への関心について
1)フォーラムに参加しようと思った理由 2)何のソーシャルインパクトを測りたいと思うか
3)それはなぜか 4)それができればどのような良いことがあると思うか
(定義の一例)
・ある介入(政策、プログラム、計画、プロジェクトなど)のもたらす社会的な影響
意図したもの/そうでないもの
ポジティブ/ネガティブ
環境、社会、経済的な面
・およびその介入がもたらす社会的な変化のプロセス
→つながりをたどって考えることが重要(システム思考)
社会的・環境的なインパクトの多くは、重要であるにも関わらず、これまで市場では扱われておらず、市場価値を持っていなかったため、企業は無視することが多かった。しかし、現在はソーシャルインパクトを測定することで、マネジメントの意思決定に使ったり、ESG投資家をはじめ、社内外に重要な情報として提供ができることがわかり、注目されてきている。
(変遷)環境評価→CSR→CSV→SDGs
ソーシャルインパクトは、営利、非営利、両方の組織活動を行うような社会的企業にも必要とされてきている。
これまで:社会的サービス
これから:経済のプレーヤーとしての期待(共助)
理由:人口減少に伴い、官民共に事業の担い手が縮小すると同時に、ニーズが多様化し、新たな需要が広がる中で、非営利団体の活躍が期待される領域が拡大している。
社会的インパクト評価が求められるもう一つの要因として、社会的インパクト投資(社会課題を解決しながら経済的な利益も同時に生み出す投資行動)の拡大の流れがあった。
・2013年6月:G8サイドイベントで「社会的インパクト投資を推進するためのタスクフォースの発足」の提唱、その後国内諮問委員会が発足
・2015年日本:社会的インパクト投資の拡大に向けた提言書を公表。この中では、拡大のための前提として、社会的インパクト評価の浸透が入っている
< ソーシャルインパクト評価をより大きな枠組みで考える >
これまで:企業活動は経済と効率中心で、そのなかで製品・サービスを生み出すことが目的だった。製品やサービスの原材料は地球から取り出し、地球に環境負荷というかたちでもどしていた。
現在:企業活動のが「幸せ」とどうつながり、社会価値を産み出していけるのか、考えるようになってきている。
これから:
幸せ・経済・地球をひとつのピラミッドに見立て、全体から真の効率を考える:ハーマン・デイリーのピラミッド(シンプル版)
例えば、「炭素1単位の排出で、どのくらいの社会的価値が創り出せたのか」で評価される時代に。
・測れるものを増やす。現在測れていないが大事なものなどが測定できるように。
・これまでも環境負荷を測定することで行動変容を求める動きにつながっている。
ESG、SDGsのうごき以外に、主観的で測れなかった社会活動が、科学が進みさまざまな方法で測定できるようになってきたことも測定ニーズを後押ししている。
Prove&Improve:過去からどれだけのインパクトを作り出しているのかがわかれば、投資家に伝えつつ、改善をしていくことができる。
< インパクトとは何か >
例)防犯キャンペーン
・アウトプット(直接的な生産物、数字として測りやすい):参加した人数
・アウトカム(活動の結果としておこる変化、数字とわかりにくいもの、変化):結果として理解がどれくらい深まったか
変化をつながりとして図に表す(システム思考がべース)。事業を通じて解決すべき課題や問題について、その課題や問題が引き起こされている構造・原因と、それを解決するための変化の法則を図示化したもの。図の形式は決まっていない。ポイントの一つとして、ステークホルダーといっしょにポジティブ、ネガティブ両面で洗い出し、図式化していくこと。
【海外】
Center for Theory of Change(企業) → Theory of Change japan(企業)
Goldratt Consulting(企業) → Goldratt JAPAN(企業)
NEF Consulting(企業) → イーズ
活動の社会的価値を貨幣価値に換算したうえで、投入した費用に対してどのくらいの社会的便益があったかを算出するもの。1996年、Roberts Enterprise Development Foundation(REDF)がソーシャルビジネスのパフォーマンスを測る指標として開発。その後、NEFがREDFのSROIを応用・発展させたSROIを開発した。健康増進といった代理指標を多く作り出している。これから代理指標となるデータベース作りが重要になってくる。
1.分析のスコープと、キーとなるステークホルダーの特定
2.活動の効果(アウトカム)のマッピング
3.活動の効果(アウトカム)の実証とその価値評価
4.活動によるインパクトの確認
5.SROI の算出
6.SROI 分析の報告ならびに組織への定着
ステークホルダーのマテリアリティを考え、どういう効果、変化がおきたのかをTOCで考え、測り、金銭換算をする。
<事例1>某社就業者支援事業
目的:若者に、ITスキル講習と就労支援を組み合わせて提供し、就労へ導く事業
評価期間:2013年 算定結果(SROI)13.18円
<事例2>:食のネットワーク支援事業
目的:地域社会の一体感を作り、レジリエンス力のある地元にするための食糧システム構築
評価期間:2014-2016年(2年) 算定結果(SROI):2.00円
株式会社リコー サステナビリティ推進本部 社会環境室室長
阿部 哲嗣さま
リコーが昨年4月に日本企業として初参加した「RE100」には環境省だけでなく、経産省が後押ししていることもあり、政府の対応にも変化を感じている。経産省としても「再エネの利用率の測り方」のルールを整理したい、という目的もある。今回のテーマでもある「測る」ことで、再エネ利用率が増えれば、企業の価値を測るモノサシにもつながってくる。
今や「RE100」「SBT」「JCI」「TCFD」などの日本の脱炭素に向けた動きは、政府から、と言うよりも、民間企業が、プレイヤーとしての意思表示・行動を起こし始めているといえるだろう。
リコーの再エネ活用目標:使用電力を2050年までに100%、2030年までに少なくとも30%再生可能エネルギーで賄う
<参加理由>
(中田さま)
全社員800人/1000人が技術者の会社であるため、環境・CSRに対応する人数も少なかったが、大事なところであるため、しっかりと伝えていこうと、昨年からCSRレポートを作り始めた。去年は業務紹介だったが、今年は、自社の6つの事業領域とSDGsとの紐付けができた(P13)。ひとつの見どころとして、環境グループで制作した、水の偏在性をテーマとした新作学習動画「水リスクラボ」を公開している。今回、新たな動画がアップされている。
(北見さま)
新プログラム:チェンジ・エージェント・アカデミー第6期 「変容型シナリオ・プランニングと変化の理論」開催(期間:期間11/20~3/20)
未来を理解するためだけでなく、未来に影響を及ぼすために、「シナリオ・プランニング」と「変化の理論」の方法論を基軸に進めていくゼミ。未来づくりや共創のアプローチを習得するための実践型・集中プログラムになっている。
<イーズよりお知らせ>
2日間のセミナーを通して、ソーシャルインパクト測定のプロセスに沿って豊富な事例と共に解説し、演習を通じて重要なポイントを体験していただくことができます。さまざまな方法論とそれらの背後にある原理原則を丁寧に説明することで、ソーシャルインパクト測定の実用的な手ほどきとなります。特に、インパクト測定の根本的な考え方や、真に役に立つソーシャルインパクト測定のための共創プロセスやスキルを重視し、丁寧に解説します。
< セミナー概要 >
2日間のコースを通じて、以下を学びます。
< 期待効果 >
本セミナー終了時には、以下のことができることを目指します。
< 募集要項 >
日時:2018年12月3日(月)ー4日(火) 9:30-17:30
場所:東京都内(JR線田町駅周辺)
募集人数:24人
参加費:一般:70,000円(税抜)NPO割引:49,000円(税抜)
※NPO割引は、フルタイム職員向けとなります
NEFコンサルティングが英国で提供する価格(約75,000 円)と同レベルですので、英国までの出張宿泊費用、通訳費用などの大幅な節減となります。
< お申込み/コース詳細 >
募集ページより詳細情報をご確認いただきお申込みください(有限会社チェンジ・エージェント社のページに移動します)
フォーラム終了後、みなさんと
次回は11月30日(金)の開催を予定しています。「環境省担当者に聞く「海洋プラスチック問題」~企業はどう対応すべきか」をテーマに環境省の井上さまをお招きし、お話いただきます。大変貴重な機会となっておりますので、奮ってのご参加、お待ちしております。
参加された方の声から
☆実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください。☆
大まかな流れ、測定における重要なポイントを学ぶことができた。
OutputとOutcomeの違いが、すごくよく分かった。ただOutcomeの定義(時間の部分)は、どう定めているのか気になった。
前半の話は不要で、後半を詳しく。
日本ではまだ始まったばかりというか、認知され始めたばかりという状況だそうなので、実際に導入するまでには少し時間がかかりそう。
英国での動きが良く理解できた。
半日ですべてを理解できてはいないが、ソーシャルインパクトを含めた事業の実践により、新しい展開を期待できる。
インプット→インパクトへの具体的ステップ、違いがわかった。全体として、自分が無知なこともあり、全体の概要の把握ができたまでで、内容の完全理解には至らなかった。
これまで、いろいろな所で聞いていたインパクト評価の話を整理できた。ただ、今の事業でのKPI設定ということでところにつなげられるかは、もう少し消化が必要。
体系的に学べたので良かった。アウトカムやインパクトを測る意義など。
前半のプレゼンは有意義だった。後半でインパクト測定のイメージがつかめた。
時間がないなかでは、ある程度ポイントを絞って説明いただけたと思う。
具体的な内容を事前に示して欲しかった。
一般論が多く、やや不満。
方法論(後半)をうかがうと、前半の重要性がよくわかった。
パワーポイントの資料は後でPDFを送るのではなく、あらかじめ印刷配布をして欲しかった。聞きながら書き込んだりしたかったので、有料のセミナーゆえにそうした配慮はしてもらいたい。
しっかりと話しが聞けてよかった。
レクチャーが多かったのが、大変勉強になった。
盛りだくさんな内容で、少し消化不良の感があった。ただし、概略は理解できたと思う。
とても情報量が多く、半日では学びきれない感じだった。またこのテーマで実施していただきたい。
大きな概念から体系づけてお話いただいたのは良かったが、実際に取り組むにあたり、まだわからないこともありそう。システム思考の本を読んでみたいと思った。
なんとなく概念は理解できたが、もっと深く知りたい。レクチャー中心だったが、時間が少なく感じられた。
第三者機関による認証や、海外の先進事例含め、必要な情報と考え方をとてもわかりやすく解説いただいた。
具体的な方法論をうかがうかと思っていた。だが、少し引いて全体像を知ることで、理解が深まり納得感があった。
質問2)「Outcomeを測る手法の手ほどき。例えば、当社だったらどんな手法が適しているか、より実務に沿った方法を期待」というのは、叶わなかった。
SROIのイメージができ、やってみたくなった。背景の部分では、なぜ欧米に比べて日本が進んでいないのか、会社の実利としてどんな良いことがあるのか、具体的に知りたかった。
前段のソーシャルインパクトとは、という部分が長く、よりもっと実質的な手法とワークショップを、事例などを使って行いたかった。そちらの時間がさらっと過ぎてしまったので残念だった。ただ、体系だって学べたのは有意義だった。
背景や潮流を詳しく、わかりやすく説明いただいたので、理解が深まった。
SROIは業界団体等で統一する必要があると感じた。各社が独自で算出しても、比較にならないので。
☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください。☆
たくさんのアウトプットがあったので、しっかり復習して身につけた。
まだ情報不足なので、ソーシャルインパクトについては勉強していきたいと思う。
基本情報として、理解の基礎としておく。
まずは自分たちが携わっている活動のImpact Value Chainを整理して、社内で共有することが重要だと思った。
小さな、身近なところから始めるとすると、前後の「つながり」をいいかにイメージすることからかな、と感じた。
生態系保全活動のソーシャルインパクトを勉強したい。
インパクト評価の手法を意識して事業を実施したい。
アウトカム→インパクト→評価ステップの理解が必要。
Theory of Changeは勉強してみたいと思っていたので、ぜひもう少し聞きたい。
定量化する前に、インプット→インパクトに至るまでの自社の活動の棚卸をもう少し丁寧にしたいと思う。
自社の社会インパクト評価の実施に向けて、社内の検討材料にしたいと思う。
事業計画をする際の視点として取り組みたい。
事業が社会に与える影響について意識しながら仕事を進めていきたいと思った。
ぜひ、プロジェクトの企業で実践してみたい。
ソーシャルインパクトの続編。
実際に自らの非営利法人活動に活かしたい。
枝廣氏に執筆いただいたサステナビリティレポートをはじめ、弊社のサステナビリティの取り組みをはじめとする情報の開示に取り入れていけたらと思っている。
欧州でのソーシャルインパクト測定の情報発信が積極的であると感じた。弊社も欧州系のKPIなどもあってよいのではないかと思った。
Outcomeを測る手法をさらに詳しく学びたい。
自社プロジェクトで算定、認証してみたい。
自分の携わっている仕事に、まずあてはめて考えていきたい。インパクトを見極める際に、どういう視点や視野を持ったほうがよいのかが気になった。
SROIの考え方を知らなかったので、活動にあてはめてみたいと思う。
自社の取り組みをTOCで整理することで、従業員のモチベーションや、業務のエンゲージメントが向上できると思われた。自社の取り組みをSROIで評価し、社外へ発信したい。
マテリアリティに対するKPIの設定。各事業に対するソーシャルインパクトの測定方法の検討。