開催日 | 2020年5月28日(木) |
---|---|
対象 | イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま、お試し参加希望のみなさま |
ゲスト | |
ファシリテーター | 枝廣 淳子 |
参加人数 | 17社・団体23名 |
今回のコロナ危機は、私たちに何を突きつけているのでしょうか? 企業や地域は、どのような新たな時代の要請に直面しているのでしょうか?
危機が過ぎれば元通りに戻るわけではないと、多くの人がはっきりとまたは薄々感じています。コロナの先に向けて、企業や地域のあり方やビジネスモデルをどう考えていくべきなのでしょうか?
事態が迅速に収束することを強く願いつつ、しかし、こういう時だからこそ、本当に大事なこと、ふだんは気がつかないが重要なことをしっかり見つめ、考え、「これまでやってこなかった新しいあり方・やり方」を試し、仕組みを変えることで、よりよい未来につなげる一歩にしていけたら、と願っています。
シンプルな解がある課題ではありませんが、コロナのトンネルの先に対して、どのように考え抜き、どのように準備をしておくかが、企業や地域の命運を分かつだろうと考えています。
今日のワークでもしっかりと考えて行きましょう。
解説『コロナの先を考える』 枝廣淳子
システム思考の「氷山モデル」とコロナ
「氷山の一角」という言葉があるように、私たちが日々見ているものはこの海から出ている氷山部分の「できごと」です。毎日報道される「今日の感染者は○○人」も「できごと」であり、企業の「前期の売上高」や「昨日のイベントの来場者数」も「できごと」。この「できごと」に私たちは一喜一憂しながら日々対処していますが、その時はうまく対応しても、結果的には根本的な解決につながらず、繰り返し同じ現象が起きていることも多いのではないでしょうか。
このように「できごと」に反応するのではなく、根本的な解決に近づいていくためにはどうしたらよいのでしょうか。そのアプローチ方法の一つが、システム思考の「氷山モデル」です。全体像を見て、働きかけを考えていくシステム思考のフレームワークの一つです。
「できごと」の下にあるのが、「時系列変化パターン」と呼ばれるものです。これは「今日の感染者は何人でした」というだけではなくて、過去に遡って考え感染者の推移を追うことで、変化のパターンが見えてきます。そして同じようなパターンが続くと、今後のおよその予測もできるようになります。
パターンが見えてきたとして、そのパターンを作りだしているものは何でしょうか。それは「構造」です。イベントの参加者が当日だけでなく、減り続けているならば、何がそのパターンを生み出しているのか。その「構造」は何かを探っていきます。そして「構造」のどこに働きかければ望ましいパターンを生み出せるかを考え、実際に働きかけを行い、変化を作り出していきます。
「構造」のさらに下にあるのが、「メンタルモデル」です。「メンタルモデル」とは私たちが意識・無意識のうちに持っている前提や価値観のことを指します。私たちが「これはこういうものだ」と思っていると、ある「構造」ができているのです。例えば、コロナ前であれば、「自分の業務ではテレワークはできないもの」と意識・無意識レベルで考えて人もいたかもしれません。
社員の安全や健康をどのように確保していますか?
•在宅ワークが可能な社員への対応
•出勤しなければならない社員への対応
•コロナ感染が発覚した際の対応 等
コロナ対策で職場や社員向けに行ったことは適切だったか? 改善点は?コロナ後もつづくと思われるものは何か(フリーランスや個人の立場で働いている方は、ほかの組織、近所、地域などの視点で)
コロナで社会が分断される動きもある今、組織の中に感染者が出る可能性もあり、感染者への差別・バッシング対策をどうしているのか、先に考えておかないと出てからでは難しい対策だと考えています。感染以外の、例えば性的な嗜好性などさまざまな立場の人への差別・バッシングについてはどう考えているのでしょうか。SDGsの「誰一人取り残さない」というのをスローガンだけではなくて、組織で本気で進めて行くとするならば、どのようなことを考えてきたのか、そして今後何が考えられるのでしょうか。
(コロナ感染拡大を受けて)
自社がはじめた社会貢献活動や取り組みコロナの影響で社会的に厳しい状況に置かれている人たちに対し、クラウドファンディングや飲食店の後援や活動はすごく大事なことです。企業ではエタノールやマスクとかガウンとか、寄贈や寄付をあちこちで行われています。
事例紹介:<ソニー>1億USドルの新型コロナウイルス・グローバル支援基金を立ち上げ
主に、「医療関連」「教育」「クリエイティブコミュニティ」の3つの領域において、支援活動を実施
これはグローバル支援基金という形で、どこかに寄付して使ってもらうというよりも、ソニーがやっていることと整合性がある分野で大きく目的を定めて支援活動をやっていくという特徴があります。
(コロナ感染拡大を受けて)
社員の社会貢献活動を支援・応援する取り組み
出光興産:社員が社会貢献を行う制度を整え、広報部とサステナビリティ戦略室で社内外のエンゲージメントチームを立ち上げた
日立製作所:福利厚生制度の一環で社員に付与しているポイントについて、社員がポイントを新型コロナウイルス対策に寄付できる仕組みを導入
先日発表されたUNDPの人間開発レポート(※)について簡単にご紹介する。これはコロナが人々の幸せにどういう影響を与えているのを伝えている。
(※)人間開発指数(HDI)とは:Human Development Index
国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告書』の中で1990年から毎年発表されている指標。GDPで国のランキングをするのではなく、健康(平均余命)、教育、所得の3つの分野について測定し、各国の達成度をみるもの。
世界の金融危機の時ですら、HDIの増加率は下がったものの、マイナスにはならなかった。今回統計を取り始めて初めて後退すると考えられている。これは、死者が多いため平均寿命に影響し、また雇い止め解雇、家賃の支払いができず事業継続ができないところもでてきており、マイナスになると言われている。
インターネットへのアクセスができる/できないかで、教育の機会格差が生まれている。地域によっても取り組みや状況は異なる。今回のコロナの影響で、女性や非正規雇用者、その子供たちなどをはじめとした弱者がますます大変になってしまうという危機的な状況に陥ることを危惧している。
ただ、ネットへのアクセスが平等になれば、格差が縮まる可能性があるというのが、ひとつの救いだとは思っている。ネットへのアクセスは「新たな必需品」であるので、収入や国や地域によって変わることなく、それこそ「誰一人取り残さず」に使えるようにするために考えることが大きな課題になってくるだろう。
企業の対コロナ社会貢献
社員の社会貢献支援
世界、社会的弱者のために
•何ができたか?
•何を考え、準備しておくべきか?
これは言語化・意識化していないニーズを探る行動観察のことです。元々文化人類学で、ある民族の暮らしを調べる時に、行動を観察して記述していく時に使っていた手法のことです。
最近、このエスノグラフィがマーケティングの視点で注目されています。エスノグラフィではとにかく観察を繰り返し、それを描写していくことで意識化・言語化していない行動や意識を探っていきます。
ニーズを把握する方法として、昔からインタビューやアンケート調査がありますが、それは本人がはっきりと意識して、理解していることしか回答としては出てきません。しかし、私たちの中には意識化できていない、もしくは言語化できていない、考え方や行動があります。それを顕在化させるために、ありのままの行動を観察するというエスノグラフィという手法があるのです。
生活者は何に時間を使うようになったのだろう?
•何の時間は減ったのだろう?
•それは自社・組織にとって、何を意味するのだろう?
リスク?
チャンス?
変革の必要性?
通勤時間以外に減った時間は何でしょうか。生活者も自分たちと同じ状況にあるなかで、この時間の増減は自分たちにとってリスクか、チャンスなのか。何を意味する可能性があるのか。もしかしたら自分たちのビジネスのやり方を変えていかないといけないかもしれません。そこを考えておくことが大事でしょう。
(当日のようす)
次回は7月16日(木)を予定しています(オンライン開催)。詳細が決まりましたら、ご案内をさせていただきます。
参加された方の声から
☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか☆
・コロナの先の予想知見
・組織の大小、首都圏と地方との違い、通勤時間ほか働く環境の違いによりこのような状況下で受け止め方の多様性がどれほどなのか、興味がありました
・コロナの影響を、皆さんどの様に捉え、対応しているかを知りたかった
・Withコロナの社会で企業(弊社)が出来ることは何かヒントを得ること
・コロナ後の世界に向けてどのような準備を進めればいいか?
・アフターコロナにおけるサステナビリティの推進を、各社・各団体がどのように考えているかを知りたかった
・コロナの影響を受けての他業種との意見交換
・ポストコロナで地域活性化の機運がどう変わっていくのか
・アフターコロナで各企業・団体がどんなことを考え予想し対応しようとしているのかを知りたかった
・他業種の課題や視点を知りたいと思い参加しました
・自治体、NGOほかさまざまな立場の皆さんと、アフターコロナについての情報共有や意見交換をする。価値観の共有をはかる
・ポストコロナに関して枝廣さんのお考えを聞いたり、社外の方とコミュニケーションをとったりすること
・コロナ関連対応について、他団体、個人の情報
・企業の方が、アフターコロナ、ウィズコロナについてどのように考えているのかを知ること
・コロナ社会で企業に求められていることの情報収集と、企業にどんな貢献ができるか検討するための考え方の整理をしたかった
・これからWithコロナの段階に入っていく世の中において、求められていることや今やるべきことについて、異業種の方々と一緒に考える機会にしたいと思い参加いたしました
・withコロナの段階に入っていくにあたって、今取り組まれていることや求められていること、そして、今すべきことについて、色々な角度からご意見をお聞きしたいと思い参加しました
・異業種の方との交流を通し、多種多様な意見や考え方に触れ、自身の今後の活動に役立てるため
・誰もが考えるアフターコロナの考え方
・枝廣さんからの情報提供、及び、他業種・団体の方々が今の状況をどう捉えられているのかの共有
☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください。☆
・あくまでも、ステップの初期段階のセミナーなのに、目新しさを求めすぎた感があり、コロナ感染という大きな出来事に対する課題に見合った解を求めすぎた感があった
・分科会は3,4名でリアルに話が出来ている感がありよかったと思います
・休憩時間をもう少し長く取ってほしい。3分ではなく10分程度
・様々な方々のコロナ下での生活の様子が知れて参考になった
・オブザーバー参加でしたが、メンバーの皆様の雰囲気が良く、居心地がよかった
・コロナへの対応が、組織によってはチャンスになり、組織によってはピンチにもなるため、全体としてはバランスをとる方向に進む。その際、自社がどのような役割を果たせるのか、ということを考え実行する必要性を感じた。またそれは、今回のコロナが発生するしないにかかわらず、以前から自社が社会から求められている役割と同じであろうと感じた
・多くの業種の方と意見交換ができて勉強になった
・期待していたことは直接テーマには上らなかったが、出だしの考え方については示唆を得られた
・グループでいろいろ話せた点は良かった。どんな生活様式が生き残っていくと思うのかを聞いてみたかった
・グループワークで、もう少し他業種の方のお話を具体的に聞いてみたいと思いました
・2時間半という短い時間でしたが、数多くのWSが体験でき、たくさんの方と短時間ながら、非常に濃密に議論できたのは非常に良かったと思います。内容が濃い分、途中のブレイクタイム(5分ほどでもOK)が欲しかったです。最後の懇親会に参加する気力がわかないほどでした。ここは時間調整含めご検討ください
・期待していたことが得られました。また、時間配分もちょうどよかったです
・個別ワークの時間がもう少し欲しかった
・企業同士の交流といっても、みなさんコミュニティーメンバーのようで、ざっくばらんに社内のこと、感じていること、コロナによる変化などをお話しすることができました。NGOとしても、企業と対立するのではなく、ほどよく連携、連帯していくことが大事だと考えています。貴重な機会となりました。ありがとうございます
・「システム思考の氷山モデル」を始めて知りました。コロナの現状を、この考え方で解説いただき納得感がありました。また、自己規律が高い人が生産性高く働ける人、というのは、最もだと思いました。他社さんとのディスカッションは、ニュースやネット情報しか情報を得ることができない中で、今現在の各社の動きを聞くことができたのは、良い機会になりました
・様々な業種の方の意見・状況を伺うことができ、とても勉強になりました。また、前回は代表者を決めて発表という形でしたが、今回のチャット形式での共有の方が気軽で参加しやすかったです。その分ディスカッションの時間に使えることや、文面で見た方が読み返せるのも良いと思いました
・オンラインでの開催で、業種の違いにとどまらず、地域性の違いなどにも触れることができて、とても刺激になりました
・働き方だけにフォーカスしたが、マネジメントの考え方も構造から考えるという点がとても勉強になった
・良かった点は、事前アンケート(私自身はWEB接続の問題できちんと回答ができませんでした、すみません)の共有含め、他の方々の現状認識や取り組みを知れたことです。ブレイクアウトセッションも頻繁にあり、「参加している」感がありました。チャットを積極的に促してくださったので、発言するタイミングを伺う必要もなく、快適でした
☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください。
・システム思考が重要と感じた
・地域に根差した活動を一層深めたい
・各組織の対応を自社にフィードバックしたい
・人と会話する中での知識。(弊社と同じ)BtoC企業の方々とWithコロナ戦略についてアイデアを出し合えたら良いと思う
・地方への移住や回帰が予想以上に早く起こるかもしれない、そのあたりを更に学びたい
・自社のサステナビリティ推進において、社内を巻き込むための追い風として活用する
・今後の施策などに生かせればと思う
・自らの事業活動に照らし合わせて将来のあり方と、そこに進むステップを考えたい
・コロナ情報は今後も変わっていくので、常にアンテナを張って将来予想をしていきたい
・企業の経営方針に大きな影響を与えていることが分かり大変参考になりました。需要と供給を意識しながら今後の活動に生かしたいと思います。移住・定住そしてワーケーションが今後のテーマになると感じているので、5G・住居・職業に興味があります
・まずはアフターコロナでの価値観変化踏まえた、時間の有効活用はさらに進めたいと思います。価値観の変容が、人々のどういうマインド変化から来ているのか、自社にとってすべきことは何か? 正直、このマインド変容を以て、社会貢献で当社が出来ることはまだまだ深堀り出来ていないことを痛感しました。また、疑問点として、幸福度の実感については、個人と一般の認識のギャップから進めて、日本人、グローバルでどういう傾向なのか、には興味あります。今回のワークショップをさらに深堀りできる内容に関心・興味があります
・業務だけでなく、自身の人生を見直す機会として活用したいと思います
・今後、徐々に対外活動が解除されたときに活かしていきたい
・企業のコロナ対策については、私たちの組織にも導入していくべきことが見つかりました。枝廣さんによる、在宅勤務が広い意味でどのような変化を生み出していくか(雇用や採用基準、マネジメントなど)の考察も大変参考になりました
・企業として社会に貢献できることを、現業の中から考えていきたいと思います
・様々な立場でのご意見を活かし、withコロナに関する情報発信をする際の参考にしたいと思っております
・withコロナに関する情報発信の際に参考にしたいと思っております
・業務にかかわらず、ものごとの中心を東京とおくことを当たり前のように思っておりましたが、これからの時代はそういった既成概念は切り離して行動をしていかないといけないのだなと思いました
・これからの市場予測やマネジメントに活用していきたい。さらに環境やSDGsの要素に対する思考・行動が変わったかをもっと知りたいと思った
・まずは社内で共有させていただきたいです。今回は、地方の可能性が広がる、という点に焦点が当たり、自分の問題意識を強化されるようで興味深かったです。一方で、海外の動きについてはもっと学びたいと感じました