社員の改善提案は年間500件以上!小林製薬に学ぶ、ESG/SDGsオンラインワークショップ「サステナビリティMeetUp!」とは
開催日 | 2021年10月20日(水) |
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対象 | イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま |
ゲスト | 小林製薬株式会社 グループ統括本社 経営企画部 サステナビリティ戦略推進グループ 関 雄さま |
ファシリテーター | 枝廣淳子 |
参加人数 | 15名 |
1.【小林製薬株式会社について】
1919年創立。売上高:1500億円規模、従業員数: 約3500人(連結)。本社:大阪市
「あったらいいなをカタチにする」をブランドスローガンに製品開発を行っている。経営理念:我々は、絶えざる創造と革新によって新しいものを求め続け、人と社会に素晴らしい「快」を提供する
ゲストスピーカー:関 雄さま
小林製薬株式会社 経営企画部 サステナビリティ戦略推進グループ
大学卒業後、NPO法人CANPANセンターにて東日本大震災支援に携わった後、公益財団法人日本財団入職。CSR・社会貢献活動コンサルティング、ファンドレイジングを担当。在職中には政府が推進する「子供の未来応援国民運動」における「子供の未来応援基金」立ち上げや、プロスポーツチームと連携したファンドレイジング、ミャンマーにおける学校建設などに従事する。
2018年より小林製薬株式会社にて、サステナビリティ経営戦略に携わる。主にサステナビリティ社内浸透、CSV事業造成、ソーシャルインパクト可視化などに取り組む。
<事業について>
<数字でみる小林製薬>
「ブルーレットおくだけ」はメガヒット商品。最近は「デコラル」、スタンプタイプ「スタンピー」も発売。「消臭元」「熱さまシート」「サラサーティ」「のどぬーるでぬれマスク」といった日常品も扱う。
関西圏では、カイロと言えば「桐灰」が浸透している。小林製薬は日本だけでなく、世界で最大のカイロメーカーでもある。
そのほか、ヘルスケア製品では鼻うがいの「ハナノア」、コンタクトを外した後や花粉症の時に目を洗う「アイボン」、「ブレスケア」などさまざまな種類の製品を展開中。
2.【小林製薬のサステナビリティについて】
2020年~22年の中期経営計画の中の3つ目に「ESG視点で経営を磨く」がある。全社を挙げてESGに最注力している。
<2020-22年ESG重要取り組みテーマ>
【E】
【S】
【G】
(事例)消臭元:エコ容器化
プラスチック製品の見直しの一つ-エコ容器化。「消臭元」のボトル本体は再生プラスチック100%、キャップは再生プラスチック30%のものに切り替えた。
(事例)命の母:CSV
女性保健薬の「命の母」ではさまざまな漢方生薬を使用している。そのうちの1つがカノコソウという生薬で、北海道の農家に栽培してもらっている。小林製薬では単に購入するだけではなく、カノコソウの栽培が地域にどのようなポジティブインパクトを出すことができるのか自治体の方と一緒にソーシャルインパクトの可視化の取り組みを進めている。
3.【サステナビリティーMeetUpについて】
サステナビリティMeetUpの取り組むきっかけ
<背景:従業員意識調査>
<サステナビリティMeetUp!>
3つのポイントで開催
<対象者>
小林製薬グループの全従業員。雇用区分や国内外の制限は一切なし。派遣社員、アルバイト社員の方も参加できる。工場や研究、営業などさまざまな職種の人が一堂に会することをコンセプトにしている。
<方法>
完全オンライン。国内外・ステージに関係なく参加できる。アメリカやオーストラリア、インドネシアなどからも実際に参加している。
<頻度>
月に2回程度。時間は1回あたり1時間半。同じ内容を業務時間内と業務時間外で2回開催。ポイントはこの受講時間は業務扱いにしているところ。
<KPI>
<MeetUp開催当日の流れ>
あえて接点の少ない部門の人同士をグループにすると、それぞれの立場からの気づきがあり、さらにそれをシェアすることで何か新たなものが出てくるような工夫をしている。
<テーマ>
ポイントは本業に近いテーマを取り上げること。SDGsのなかでも本業に近い「プラスチック」や「CSV」などを取り上げた。また、社内事例だけではなく、社外からもゲストをお招きした。CSVはLIXIL様に、持続可能なまちづくりでは北海道下川町様に、海外の教育と平和のテーマでミャンマーで学校建設に取り組むNGOの方からお話をいただいた。たまに社外の方にお話をいただくと、新鮮さから参加モチベーションを維持にもつながっている。
(事例)テーマ「ダイバーシティ」
3回実施。
- 人事部長から小林製薬が取り組む「ダイバーシティ&インクルージョン」
- アメリカの工場やインドネシアの営業所で働く現地の駐在員をゲストに「海外で感じるダイバーシティ」
- 8月はパラリンピックが開催に合わせて、小林製薬の「障がい者雇用の取り組み」について特例子会社の社長と人事と自社社長の対話を聞く。
(事例)テーマ「持続可能な街づくり」:北海道下川町
第1回Japan SDGsアワード内閣総理大臣賞を受賞されている下川町関係者をお迎えし、恵まれた森林資源を生かした街づくりの内容を伺った。SDGsゴール11の「住み続けられる街づくり」は自社との親和性があまり強くないこともあり、最先端の事例をお伺いした。自社としてどのような関係性を持てるか、また学びを企業活動にどのようにいかせるかの観点で勉強させていただいた。
(事例)テーマ「海外の教育と平和」:ミャンマーから学ぶ
学校建設や少数民族とのフェアトレードに携わっているNGOをゲストにこれまでの活動やミャンマーの現状、また日本企業がミャンマーに進出した際のCSR調達の点で国際NGOに厳しい指摘を受けたことの学びなど話していただいた。
<テーマ設定のポイント4点>
【MeetUpのPRと参加継続の取り組み】
<SDGsカラーのステッカー送付>
ミートアップに参加するたびにステッカーを送り、パソコンの背面やスマートフォンのカバーに貼ってもらう。会話が生まれ、参加者同士は仲間意識につながる、広告塔になってもらう。
<SDGsのゴールシール>
関連するテーマに参加した人は、そのテーマのシールを貼り、ネームホルダーの裏側に台紙を入れて貼っていってもらう。すべてのロゴが貯まるとSDGs バッジをプレゼント。
SDGsのゴールをすべて学んで理解して欲しいという個人的な思いがあり、全て学んだらバッジをプレゼントすることを始めた。1回では17ゴールすべて学べないので、何回か学びを深めるうちにMeetUpに参加することを習慣化してもらうようにしているので、バッジをもらってフェードアウトする人は多くない。
<自部署以外の巻き込み>
サステナビリティ戦略推進グループ室は6名体制のため、毎回運営を交代で企画を分担しているが回しきれないこともある。毎回のグループディスカッションのファシリテートの質を上げるためにファシリテーターをさまざまな部署の人にお願いをしている。
<累計参加者数>
昨年の8月から今年の7月までで1678名。全体で3500人従業員がいるので、1人あたり500人(1/7)くらいの人間が参加している。
<参加者の声>
<アウトプット>
年間約57500の新規アイデアを社員が提出している。アイデア提案、改善提案の点でESGサステナビリティ関係の提案が非常に増加している。
例)「香るStick」を売る際の店頭用香りサンプルを紙化
香りサンプルを紙に変更し、コストダウンとエコ活動を進める内容。香りサンプルはプラスチックで作られているので、紙原料にする改善提案があがり実現させた。これにより年間5トンのプラ使用量料が削減されただけでなく、個々の価格もある程度材質でコントロールできるのでコストダウンにもつながったこと、そして店頭では非常に見やすくなったという営業のコメントなど副次効果も。
<メディア掲載>
<今後の展望>
よりアウトプットにこだわった上級版の開催を検討中。MeetUp後の行動は受講者にお任せなので、部署横断でサステナビリティに関する取り組みを行ってみる予定。参加者でテーマの中からどのような活動ができるのかも検討中。
<実施にあたり気を付けたこと>
<実施してよかったこと>
4.【QA】※簡易版はQのみ掲載
【Q】毎回の参加者がどれくらいで、またそれは開始以降増えてきてるのか、変わらないのか。
【Q】部署により参加の傾向が違うのか。例えば営業の方などはどうか。また、何回繰り返しても結局参加されずに最後まで残っていく方々をどのように考えているのか。
【Q】テーマはどのように設定しているのか。
【Q】効果のところで具体的に商品開発や商品の改善につながった話があったが、例えば商品に直接関わらない間接部門などが行動変容した例があるか。
【Q】海外の従業員や外国籍の従業員への言語対応についてはどうしているのか。
【Q】上級版以外で今後コミュニティをどのように発展させていこうかと考えているか。
【Q】MeetUpでアイデアに直結する部分だけではない社会的な価値などは何か測っているか。
【Q】グループディスカッションは2段階で行っているとのことだが、自分・自部署での取り組みに落とし込むための具体的な「問い」を教えてほしい。
(当日のようす)
次回は2021年12月21日(火)予定しています。テーマは「人権」を予定しています。
参加された方の声から
☆実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください。(抜粋)☆
良かった点:話が具体的でとても参考になりました。たまたま上手くいったのではなく、まぎれもなく、担当者の影の努力と中途入社ながら社内に味方を増やしているコミュニケーション能力も鍵になっていると認識し、刺激を受けました。
良くなかった点:特にありません。包み隠さずお話いただけて小林製薬様への好感度が上がりました。
関様から具体例を示していただき大変参考になりました。
また、オンラインワークショップのファシリテーションおよびグループ分けなどの進行が非常にスムースで感動しました。あっという間の1時間半で充実した時間を過ごすことができました。
今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください(抜粋)☆
弊社内にある自主的な学び集団と相談して、弊社版の「サステナビリティMeet Up!」を考えられたらと思いました。小林製薬様でも社員の方々にサステナビリティを自身の業務に落とし込んでもらうことに苦慮されていることが分かりました。まさに弊社でも同じ悩みを抱えています。一緒に考えていけたら良いと思いました。
弊社ではまだまだ執行役員レベルでもサステナビリティより成長や利益を優先すべきという声が多き状態であり、小林製薬様のように組織がきちんとしていないなか、マイナスからのスタートですが、地道に一歩ずつ前進し、継続していこうというモチベーションにつながりました。