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Short Forum【第3回】

エネルギー・気候政策シミュレーター「En-ROADS」の結果をシステム思考で考察する

2022月03月14日 更新
開催終了レポート
 
開催日 2022年4月11日(月)
対象

イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま

ゲスト

チェンジ・エージェント代表取締役 小田 理一郎 氏

ファシリテーター

枝廣淳子

参加人数

15名

開催レポート

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エネルギー・気候政策シミュレーター「En-ROADS」  

今回のショートフォーラムでは、チェンジ・エージェント社代表の小田理一郎さまから気候シミュレーター「En-ROADS」の解説をいただきながら、短めのワークショップで参加者の皆さんにも実際に触っていただきました。エネルギーのシステムも気候のシステムも直感的には捉えづらいシステムの効果や複雑性があります。それを実際に「En-ROADS」で体感いただきました。後半は企業での活用事例とともに、システム思考的観点からの洞察や意味合いについて、ポイントを教えていただきました。気温上昇を2℃(1.5℃)未満に抑えるためのどのような政策を組み合わせていけばよいのか、実現するためのシナリオ作成に活かすことのできなるツールですので、ぜひ皆さまも「En-ROADS」を自社で触って活用いただけたらと思います。


【ゲストスピーカー】

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小田 理一郎 氏(チェンジ・エージェント代表取締役)

オレゴン大学経営学修士(MBA)修了。多国籍企業経営を専攻し、米国企業で10 年間、製品責任者・経営企画室長として組織横断での業務改革・組織変革に取り組む。2002年に独立し、人財・組織開発、CSR経営などのコンサルティングに従事し、システム横断で社会課題を解決するプロセスデザインやファシリテーションを展開する。デニス・メドウズ、ピーター・センゲ、アダム・カヘンら第一人者たちの薫陶を受け、組織学習協会(SoL) ジャパン理事長、グローバルSoL理事などを務め、システム思考、ダイアログ、「学習する組織」の普及推進を図っている。サステナビリティの科学者と実践家たちの国際ネットワーク「バラトン・グループ」役員。大陸横断で持続可能な食料システムを目指すコンソーシアム「サステナブル・フード・ラボ(SFL)」の中心人物たちと親交を重ね、世界資源研究所(WRI)の生態系サービスレビュー実務などに携わる。また、JICA で国内外の専門家に研修を実施するほか、インドネシアなど途上国でのサステナビリティ・リーダー養成に携わる。


【当日の流れ】

  • En-ROADS紹介
  • 簡易ワークショップ
  • 気候・エネルギーに関するシステム洞察
  • QA・討議

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  • En-ROADSとは

エネルギー及び気候変動の政策レバーを調整することで、温室効果ガス排出量や大気中濃度、気温上昇、海面上昇、経済などにどのような影響が出るかをシミュレーションできるソフトウェアのこと。

使われるデータはIPCCの気候シミュレーションのモデル化したものと独自データを使っている。NPO Climate Interactiveとマサチューセッツ工科大学(MIT)の共同開発。このソフトはオープンソースなので、誰でもリファレンスガイドを確認することができる。

 「En-ROADS」の目的は気候問題の解決策を迅速に検証し、将来予測ではなく気候シナリオを創り出し、シナリオプラニングなどに活用することにある。

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エネルギー・気候政策シミュレーター「En-ROADS」  

  • シナリオプラニングに活用

シミュレーションは予測ではないので、実際の未来がどうなるかは、私達がどういう行動をとるかによって変わる。シナリオプランニングの基本の考え方としては、起こりうるいくつか未来の可能性をシナリオの形で考えていく。「En-ROADS」ではこのシナリオ作りも数秒で一つのシナリオが作成できるので、たくさんのシナリオを見ながら、学びの多かったシナリオに関して選んでやっていくといった使い方もできる。

 【使い方例:気候アクションシミュレーション】

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このシミュレーションを見ながら各セクターのロールプレイもできる。

ロールプレイは単純に数値目標を合わせていくことではなく、さまざまなセクターのさまざまな利害関係と相互の影響も考えることを体感してもらうことが、この気候アクションシミュレーションの目的。

  • C-ROADS/En-ROADS紹介

当日の解説は下記内容をご参照ください。

 システム思考でエネルギー・気候政策を考える(1)「銀の弾丸はない」

※皆さんには実際に個人でバーを動かしていただき、その後の結果ややってみての感想をグループで共有、その後質疑応答を行いました。

  • プロセス

個々人で政策を考えた後、グローバル規模のスケールでの効果予想しながら、En-ROADSでも試してみました。

  1. 2℃(1.5℃)目標に向けて、今までのなりゆきを超えて、自組織や自地域が展開する施策は何でしょうか?
  2. 2050年までに地球全体でネットゼロを実現するための施策を考える

 さらに考えるべきこと

  • マルチ解決策のレンズ(グローバルのモデルについて)

・先進国と途上国の関係、あるいは裕福な人とそうでない人の関係がある。温暖化・気候変動の影響は、周縁コミュニティといったより貧しい、リソースを持ってない人のところに大きな影響がでる場合がある、そのようにならないための方策も考える。

・提案から得られる共同利益を考える。CO2のためだけに何かするということではなくて、コミュニティではこういうメリットがあるといったことなどを考えていく。

例)石炭燃焼による大気汚染の影響で亡くなる方の数も非常に多い。死亡者数を減らせることは、非常に高いコベネフィットになる。

【企業研修事例:HSBC Bank USA】

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<シナリオ結果について>

それぞれの業界や会社のポジションにより影響が変わる。En-ROADSを使っていつかのシナリオで考えられる。21世紀末の温度上昇の結果が同じでも政策ミックスによって資産価値が大幅に変わる可能性がある。つまり、シナリオによって会社の価値が変わってくる。

 <ワークショップの効果>

  • 気候変動について「話す」能力に自信
  • 自社コミットメントのより深い理解
  • 気候アクションを取るコトへの動機付け

 <さらなる波及効果>

  • 経営陣のコミットメント、オフィス・データセンター改革
  • 信用リスク評価に応用
  • 化石燃料関連アセットのリスク評価に応用
  • HSBCのEn-ROADSファシリテーターは、クライアントやステークホルダーによるワークショップ開催

【En-ROADSからの洞察:自分の周りでの活かし方をシステム思考で考える】

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  • 枝廣コメント:政策の高度化・時間的遅れ

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1)政策の高度化

一つの政策を打つといろいろなところに影響があることがよくわかったのではないか。政策を作る人達も私達も、実際はさまざまな影響をあまり考えずに目の前の政策を打ってしまっている。もう少しその政策の視座を上げて部門やセクター、そして時間軸を超えて一つの政策がどのような影響を与えるのかを考えて政策を作っていくような「政策の高度化」が必要だと感じた。そのための実験、実感をする上でもこのシミュレーションは非常に役に立つと思う。

 2)時間的遅れ

新技術のところでもスライダーを動かしてみると、新技術ができてもフルに効果が出るのに40年かかる。また他の技術との競争も引き起こすなどの影響が出てしまうこともわかった。この「時間的遅れ」による影響がどれだけ、どこまで出てくるのか。政策の優先順位付けが非常に重要であることを実感できたのではないか。このようにさまざまなことが可視化できるという意味でもEn-ROADSは非常に有効なツールである。ぜひさまざまなステークホルダーとともに対話をして考えを深め、2℃(1.5℃)目標を近づくシナリオを現実に落とし込んでしっかり進めていただけたらと思う。

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                (当日のようす)


【チェンジ・エージェント社関連記事】

エネルギー・気候政策シミュレーター「En-ROADS」最新版のご案内(2021年8月20日)

エネルギー・気候政策シミュレーター「En-ROADS」日本語版リリース(2021年6月3日)

参加された方の声から

☆実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください。(抜粋)☆

短時間にエッセンスを教えて頂けて、大変勉強になりました

解説が、色々な施策、パラメータのトレードオフ等についてためになるお話が多く、大変勉強になりました

短い時間でしたが端的に要点をご説明頂き、システム思考を基にしたシミュレーターの結果の読み方が少し分かりました。ガス関連の企業様も参加されており、グループワークでお話しできて良かったです

短いながら、とても気づきの多いセッションでした。ありがとうございました。事前にもう少し触っていればよかったのですが、触りながら理解が進む感じだったので、引き続きさわわりながら、周りにも伝えたいと思います

ツールが使いやすいにもかかわらず精緻で網羅的なツールであることが理解できた。ツールを使った分析結果の説明も、これまでモヤモヤ思っていた数々の疑問も解消され納得度が高い説明でした

様々な要素が連関(シナジー・トレードオフ)していることを改めて認識できたことがよかった

新たな視点を持って、気候変動であったり1.5度という数字を見ることができました。他の方の意見だったり気づきを聞くことで、1人で見ているだけでは気づかなかった課題にも気づくことができました。
 ・エネルギーコストが跳ね上がってしまうので現実的ではない。
 ・グローバル観点のものなので、国土の小さい日本でできることとできないことがある(植林など)
もっと他の人との意見交換の時間と、最後の小田先生の考察部分についてじっくり取り組めたらさらに学びが深まるなと思いました

シナリオ分析等を実施する上で非常に有効であったと思う

使い方の概要が理解できた

CO2削減効果がすぐに現れるもの/現れないもの、CO2削減策を選択する際に働くメンタルモデル、CO2削減効果が大きくても別のマイナス影響を引き起こすものなど、気温上昇抑制の難しさを痛感しました

説明のスピードが速く、画面からプログラム画面への転換をしているうちに説明が次に移ってしまって十分把握できなかった

今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください(抜粋)☆

社内での研修等に利用できないか、考えたいと思います

自分たちのチームで取り組んでいる政策提言に活かせると良いと思います

貴社の講演範囲外かもしれませんが、シミュレーターの構築方法には関心があります(こちらは個人的な興味の方が大きいですが)

少しでも希望ある未来を描いて、話せるようになる、そのためのツールとして役立てたいと思いました

各外部シナリオの実現のための当社およびお客様の施策(どこまでやる必要があるのか)の検討に使いたい

詳しく知りたいこと:En-ROADSの構造・ストック&フローダイアグラムについて、地域別(日本)のシミュレーション

再エネを増やせばいい、だけではなく増やした時にどのような影響を及ぼすのか、周りの他の視点も持てるようにEn-ROADSをさらに見てみる。システム思考の一つの影響が他に与える影響についても日常生活で考えてみたいと思いました
事業環境想定に活用したい

気候変動対策でのストックとフローを意識したいと思います。それぞれの要素がどう連動するのか、効果的な対策として何が良いかなど、機会があればワークショップを受講したいと思いました

施策等の作成部署には即使えるのでしょうが、学校林の現場でどう活動することが的確なのか、個別のフィールドでの方向性に対してはもう一段何かが必要な気がしました

次回のイベント・フォーラムの予定

次回のフォーラムは決定しだい、こちらのサイトでご案内します。

 

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