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【誌面掲載】『しんくみ』(2020年2月号)にエダヒロの執筆記事が掲載されています

2020年03月18日
メディア掲載
 

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全国信用組合中央協会の機関誌『しんくみ』(2020年2月号)に、エダヒロの執筆記事が掲載されています。許可をいただきましたので、全文を掲載いたします。

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地域経済循環をしっかり回す

私は今、何カ所かの地域にかかわって、持続可能で幸せな地域づくりのお手伝いをさせていただいている。「未来は地域にしかない」と強く思っているからだ。

人口減少、高齢化が進む中、地方の若い人たちは「仕事がないから」東京に出て、「仕事がないから」地元に戻れない、という声をよく聞く。政府からの交付金は先細り、企業誘致も多くの自治体にとってはハードルが高い上、いつ撤退されるかわからない不安定さは残る。インバウンドをはじめ観光客を呼ぼうと思っても、観光資源がある場所ばかりではない。

地方経済の疲弊や人口流出・減少は、地方に住む人々だけの問題ではない。日本には現在、人口3万人未満の自治体が954あるが(平成27年国勢調査)、その人口を合計しても、日本の総人口の約8%にすぎない。しかし、これらの自治体の面積を合わせると、日本全体の約48%になる。つまり、日本の面積の半分近くをわずか8%の住民が支えてくれているのだ。

これらの地方で地域経済が回らなくなると、ますます人口流出・減少に拍車が掛かり、無人地帯が広がっていくことになるだろう。そうなると、日本の国土を保全することすらおぼつかなくなってしまう。地方の危機は日本の危機なのである。

地域内で経済循環をしっかり回すことの重要性をわかりやすく伝えてくれるのが、「漏れバケツ」モデルである。これは英国のロンドンに本部のあるシンクタンクNew Economics Foundation(NEF)が打ち出したものである。

地域を「バケツ」だと考えてほしい。バケツに穴がたくさんあいていると、水を入れても「漏れ穴」から出ていくように、地域にお金が入っても、その大部分が出ていってしまっているのが現状だ。では、どうするべきか? もちろん「漏れ穴」をふさぐことだ。「漏れ穴」をふさげば、残る水の量は増える。そうしたら、そんなにがんばって水を注ぎ込まなくても済むかもしれない。

地域経済も同じだ。これまでは、「どうやって地域にお金を持ってくるか」ばかりに目が向いていて、「どうしたら地域から出ていくお金を減らせるのか」は、あまり考えられてこなかった。しかし実は「地域からのお金の流出を減らす」こと、つまり、「一度地域に入ったお金を、どれだけ地域内で循環して長くとどまるようにさせるか」が大切なのだ。

具体的に計算をしてみよう。A町は、隣町にあるショッピングセンターやインターネット通販などで買い物をすることが多く、使うお金の20%しか地元に残らないとする。この町に1万円のお金が入ったとき、残るのは2,000円だ。それを受け取った人・事業者もその20%を地元で使うと400円が残る。こうして計算を繰り返すと、当初の1万円が町全体には1万2500円ほどの価値を生み出すことがわかる。

B町は、できるだけ地元で購入・調達することで80%が地元に残るとしよう。先ほどと同じ計算をすると、外部から入った1万円が最終的に生み出す価値は、約5万円になる。このシンプルな計算から、「いったん地域に入ったお金をできるだけ地域の中で回していくこと」が、いかに大事なことなのかがわかる。

地元経済が外部に依存している割合を下げることは、地域のレジリエンス(しなやかな強さ)につながるのだ。外部に翻弄(ほんろう)されない強さが生まれ、自分たちの足で立つことができるようになる。そうしてはじめて、ある程度自立した地域同士が相互に交換・交流するという、安全・安心な豊かさを創り出すことができるだろう。

今世界では、「ローカル・インベストメント」が大きな潮流となりつつある。地域の住民が自分たちのお金を地元の経済に投資すれば、利子やリターンを得ながら、自分の地域の経済を元気づけることができる。「地元の農作物を地元で食べよう」という地産地消と同じような考えで、「地元のお金を地元に投資をしよう!」という取り組みである。地域の住民が地元の小規模ビジネスに投資することで、自分たちの生活に必要な店舗や企業を支援するという、市民の手による新しい資本主義の形でもある。

域外や海外で事業をしている企業の株式や社債を買ったり、域外に投融資をする銀行や郵便局に預金したりするのとは違って、地元に投資したお金は地元経済にとどまる。投資の資金を地域から流出させない、地域経済の「漏れ穴」をふさぐ取り組みでもあるのだ。

このような「地域の、地域による、地域のための投資」を実現する主体の1つが、地元の企業への融資や支援を手厚く行っている信用組合などである。主な取引先は、地元の中小企業や個人であり、利益第一主義ではなく、会員すなわち地域社会の利益を優先する。営業地域は一定の地域に限定されており、預かった資金はその地域の発展に生かされる。

地元密着型の信用組合だからこそ、産業連関表を作成して地元経済の「漏れ穴」を見える化したり、その穴をふさぐための起業やビジネス開発、事業承継の支援もできよう。地元経済の「漏れ穴」をふさぐうえで、信用組合の果たすべき役割は大きい。

 

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