昨年11月に発売されたナオミ・クライン著『地球が燃えている』(中野 真紀子、 関 房江 訳・大月書店)の書評をエダヒロが書かせていただきました。今後、全国の新聞各紙に掲載される予定です。
ご了解をいただき、全文を掲載させていただきます。
環境正義? 温暖化に対して自分の取り組みなんて意味がない?グリーン・ニューディールって環境公共事業のこと? ナオミ・クライン著『地球が燃えている』へようこそ!
気候変動、富の集中、人種差別的な暴力などの問題が限界点に達している。それは「たまたま同時に起こってしまった複数の危機」ではなく「互いに密接につながっている重複した危機」であり、ヤマタノオロチの8つの頭のように問題の出方は多様でも、その根は同じだ(つまりみんなで同じ根本原因に取り組めばよい)ということを本書は鮮やかに示す。
危機の根本にある、自然界と人間の大部分の搾取を合理化する理論とは何か。(日本人も含め)裕福な人々はなぜ「犠牲になるのは他の誰かであり、それは仕方ない」と行動をとらずにいるのか。なぜ、気候変動のもたらす変化に気づけず、自分のライフスタイルを変える程度の広がりでしか解決策を考えないのか。
著者は「気候変動を止めるために個人としてできることは何もない」と断言する。「私たちが一緒になって、大規模で組織化された、グローバルな運動の一環としてこそ挑むしかない」と。これこそが著者の言うグリーン・ニューディールだ。
気候危機、経済的不平等が同じ根から出ている症状だとしたら、すべて全体として扱っていかねばならない。私たちの生存を脅かすものに「ノー」を言うだけでなく、望ましい別の選択肢を創りだし広げていく「イエス」の社会運動を展開していくのだ。これまで犠牲を強いられてきた人々に報い「石油やガスは地下に残すが、労働者はひとりも取り残さない」やり方で新しい経済へシフトしていくのだ。
本書は真の"敵"と具体的な"解決策"を教えてくれる。そして日本でも広がっているローカル化や社会的連帯の動きが(まだ点ではあるとしても)人類史的な意義を持っているのだと励ましてくれるのだ。
(枝廣淳子)
なお、本著を課題書とした読書会を1月27日(水)に開催します。
読んでみて感じたこと、考えたことを話しながら、一緒に考えを深めてみませんか。
みなさんのご参加をお待ちしております。
【第105回】
日 時: 2021年1月27日(水)18:30~20:30(開場18:15)
会 場: オンライン(Zoom使用予定)
課題書: 『地球が燃えている 気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言』(著:ナオミ・クライン)
定 員: 先着24名
資料代: 3,000円(税別)
お申し込み: こちらからどうぞ(外部サイトへ移動します)