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先日TBSテレビの「ビビット」という番組から電話インタビューを受け、短いコメントが番組でも使われました。テーマは「レジ袋有料化」。「海洋プラスチック汚染」ではそれほど響かなくても、「レジ袋有料化」となると、ワイドショーも取り上げ、お茶の間にも届くトピックになるのだなあと思いました。
さて、この「レジ袋有料化」話題の源は、私も参加していた10月19日開催の第3回の中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会で出された「プラスチック資源循環戦略」の素案です。
ちなみに、8月に開催された第1回の議事録がようやくアップされました。
http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01a.html
今回の資料等はこちらです(議事録はまだアップされていません)
http://www.env.go.jp/council/03recycle/post_148.html
プラスチック資源循環戦略(素案)
http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-d1.pdf
この戦略素案は以下の構成になっています。
1.はじめに:背景、ねらい
2.基本戦略:3R+renewable
3.重点戦略: 実効的な①資源循環、②海洋プラ対策、③国際展開、④基盤整備
4.おわりに:今後の戦略展開
「レジ袋有料化」の言及があるのは、「3.重点戦略」の冒頭部分です。
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
ワンウェイのプラスチック製容器包装・製品については、不必要に使用・廃棄されることのないよう、消費者に対する声かけの励行等はもとより、レジ袋の有料化義務化(無料配布禁止等)をはじめ、無償頒布を止め「価値づけ」をすること等を通じて、消費者のライフスタイル変革を促します。
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~
具体的な数値目標案が出されているのは、「4.おわりに」です。
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
本戦略の展開に当たっては、以下のとおり世界トップレベルの野心的な「マイルストーン」を目指すべき方向性として設定し、国民各界各層との連携協働を通じて、その達成を目指すことで、必要な投資やイノベーションの促進を図ります。
(リデュース)
消費者はじめ国民各界各層の理解と連携協働の促進により、代替品が環境に与える影響を考慮しつつ、2030年までに、ワンウェイのプラスチック(容器包装等)を累積で25%排出抑制するよう目指します。
(リユース・リサイクル)
2025年までに、プラスチック製容器包装・製品のデザインを、容器包装・製品の機能を確保することとの両立を図りつつ、技術的に分別容易かつリユース可能又はリサイクル可能なものとすることを目指します(それが難しい場合にも、熱回収可能性を確実に担保することを目指します)。
2030年までにプラスチック製容器包装の6割をリサイクル又はリユースし、かつ、2035年までにすべての使用済プラスチックを熱回収も含め100%有効利用するよう、国民各界各層との連携協働により実現を目指します。
(再生利用・バイオマスプラスチック)適用可能性を勘案した上で、政府、地方自治体はじめ国民各界各層の理解と連携協働の促進により、2030年までに、プラスチックの再生利用を倍増するよう目指します。
導入可能性を高めつつ、国民各界各層の理解と連携協働の促進により、2030年までに、バイオマスプラスチックを最大限(約200万トン)導入するよう目指します。
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~
岩波書店「世界」2018年11月号に、「海洋プラスチック汚染とは何か」という記事を書いています。
https://www.iwanami.co.jp/book/b378103.html
執筆者からのメッセージ(『世界』2018年11月号)も書かせていただいたのでご紹介します。
https://www.iwanami.co.jp/news/n26636.html
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本でも急に盛り上がってきた「海洋プラスチック汚染」.今春のG7サミットで米国と共に「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった日本は,批判の矢面に立たされ,来年のG20議長国として,何らかのビジョンを打ち出さなくてはならない.
しかし,そもそもプラスチックごみ問題とは何か? なぜこれほど大きく扱われるようになってきたのか?
世界各地でストロー配布の取りやめやレジ袋禁止令が出されている.今の時代,どんな人も企業も,プラスチックを使わずに過ごすことはほぼ不可能だ.つまり,プラ問題は,プラ業界だけの問題ではなく,あらゆる企業にとっての問題なのだ.世界の企業がいち早く動き出したのは,「競争優位性の次の戦場」だと考えているからだろう.
残念ながら,日本の動きは,政府も業界・企業も,まだ遅いといわざるをえない.海洋プラ汚染問題の本質を伝え,世論と具体的な動きを喚起できたらと願う.
枝廣淳子(大学院大学至善館)
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~
海洋プラスチック憲章に署名しなかったことを挽回できるビジョンや目標を打ち出すことが期待されていたわけですが、今回の戦略素案は、従来型の積み上げ方式ではなく、かなり野心的な目標を設定しており、委員からも高い評価が相次ぎました。
事務局からの素案説明の後、全委員が意見を述べました。私は事前に準備した資料と、素案へのさらなる注文を話しました。内容をお伝えします。
なお、私の資料はこちらからご覧いただけます。
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありがとうございます。1回、2回と出られなかったので、今日は参加できてうれしく思っております。参考資料3ということで、申し述べたい点、すでにまとめてきたことと、追加で、ご説明を聞いてお伝えしたい点をお話しさせていただきたいと思います。
今、世界の動向を見ていると、「3R」ではなくて「5R」だという声をよく聞きます。最初にReduse の前にRefuseを付けるというのが大きなポイントです。日本の取り組みは、使わないという選択もReduseの中にカウントしていると思うのですが、これは別立てで立てたほうがいいのではないか、というのが私の1つ目のコメントです。
リサイクルすればいいんじゃないかという向きもありますが、リサイクルの割合も低いですし、全部をリサイクルする処理キャパもないということで、減らしていくというときに、量を減らしましょうという前に、そもそも使わないということです。
たとえばレジ袋を禁止する国が増えているだとか、ストローを使わないお店が増えているとか、Reduseの中に入っているRefuseを別立てに立てることが、世界の動向にも合っているのではないかというのが1点目です。
その次は、皆さんからもコメントが出ている点ではありますが、包括的な取り組みということです。容器包装については今も法律がありますし、レジ袋など、まずそこをということは見えやすいです。
だた一方で、大きな部分である製品プラ、それから先ほど石川委員からもお話がありましたが漁具です。先ほどの資料の78ページを見ても、重量的にも容積的にも漁具が非常に大きい。漁業関係者からは、慣行的に、網はそのまま漁が終わったら海に置いてきていると聞いたことがあります。漁具への取り組みは漁獲量を減らすわけではないので、すぐにでもできることから始めることができるのではないかと思っています。
マイクロプラも、マイクロビーズに対する関心が高いですが、一方でフリース等、合成繊維から出るマイクロプラも非常に多いわけです。すでに化粧品業界ではマイクロビーズ対策を進めていると思いますが、まだそれほど打ち手が考えられていないと思われる合成繊維のところもしっかりと出していく必要があるのではないかと思います。
最後に、プラとどういうふうに付き合っていくかという位置づけと、長期的な日本としての方向性を大きくまず出した上で、個別の施策の説明をしていただきたいなと思っています。包括的にさまざまなすべてのプラを考えているということと、長期的に日本はどこを目指しているのかということがあってはじめて、個別の目標と取り組みの位置づけがわかるかなと思います。
あと、今の案でももちろん出ているのですが、これが今、世界のイノベーションの次の土台になってきている、競争力の源泉になりつつある状況ですので、もう少しイノベーションということ、その源泉として位置づけて、その取り組みを加速するということを出してもよいのではないかと思います。
追加で3点。1つ、先ほど石川先生もおっしゃったこととも重なるのですが、プラの問題というのは、恐らく3つの問題が融合しているので、特に一般の方々に伝えるときに、それをわかりやすく分類した上で伝える必要があると思っています。
1つはソース、資源側の問題です。これまで化石燃料からプラをつくってきたので、資源としてどうしますかということです。それに対する打ち手は、再生可能な資源とか再生材を使いましょうということになります。
あと2つのプラの側面というのは、排出側、地球にとっては「吸収源」の問題になります。それが今、海洋汚染という問題になっています。海洋汚染という意味での排出側の問題に対しては、生分解性、特に水でも分解する生分解性というのが対策になります。その場合は、それが化石由来であっても、そこだけ見ている分にはどちらでもいいわけです。
3番目は脱炭素、温暖化という位置づけでの問題です。これも排出側の問題になりますが、これに関して言えば、バイオマス由来のものを使いましょうということになります。
今、上手に区分されていない感じがします。バイオプラスチックとバイオマスプラスチックがどう違うのかとか、どういう優先順位で考えたらいいかとか、一般の方にはわかりにくい形になっている。
このような3つの問題がプラにはあると整理した上で、それぞれの打ち手を説明する。一番良いのは3つとも解決する打ち手ですが、そういった優先順位をつけて、現状とどこに行こうとしているかをわかりやすく出す必要があるのではないかと思っています。
2つ目は回収についてです。今年3月に太平洋ゴミベルトの調査をしたオランダのチームによると、たくさんの言語のごみが浮かんでいて、9カ国語判読できた中で日本語が一番多かったという調査結果があります。
なので、これから出さないようにするというのも大事ですが、もう排出してしまった責任を日本としてどう取っていくのか。これは、ほかの国ではもうすでに、太平洋などに回収するためのものを――それこそイノベーションですね――送り込もうというさまざまな技術開発が進んでいたり、NGOの取り組みなどもあります。
これから出さないというだけでなく、沿岸とか漂着ごみだけではなく、もう出してしまったものに対する責任をどうするか、ということを打ち出していく必要があるのではないかと思います。
最後に、世界をリードするということで言うと、ワンストップとしての世界に対する発信をどうしていくかということを、しっかり考えていく必要があると思います。
特にアジアの国の方々と話していると、日本に期待しているのはそこで、全体的な廃棄物の仕組みを日本に学びたい、日本から導入したい、と。そのニーズは非常にあります。そこのところ、世界に対する、特にアジアに対する貢献という意味では非常に大きなポイントだと思いますので。今ももちろん書いておられますが、もう少し戦略的に位置づけてもよいのではないかと思っております。
以上です。
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~
プラ戦略小委は来月もう一度開かれ、そこで最終版となるか、何か揉める点があれば、12月ぐらいに終結すると思われます。
今回の委員会で、産業界からの委員からも反対意見など出なかったので、あらかじめ業界と調整できた数字が出ているのだろうと思います。ただ来月もう一度発言できる機会があるので、何かあれば伝えていこうと思っています。
さて、こういった世界の動向、日本政府の目標値やレジ袋有料化などの政策を受けて、企業はどのように対応していく必要が出てきたのでしょうか? さらにプラ問題をイノベーションや競争力につなげていくにはどうしたらよいのでしょうか?
プラ戦略小委の事務局の中核を担っている環境省の担当者の方をお迎えして、11月30日に異業種勉強会を開催します。プラスチックを使っていない企業はないと思いますので、どんな企業にとっても考えていくべき、取り組むべきこの課題をどう捉えたら良いのか、学びつつ、一緒に考えていければと思います。
第52回 環境省担当者に聞く「海洋プラスチック問題」~企業はどう対応すべきか(2018年11月30日開催)
イーズ未来共創フォーラムのパートナーの方々、ぜひふるってご参加ください。また、パートナー以外の方でも、1社・団体2名まで、1回のみですが、オブザーバーとしてご参加いただくことができます。
岩波書店「世界」の11月号につづき、12月号にも「海洋プラスチック汚染とは何か」の後編が掲載される予定です。今回の戦略素案への評価と今後の見通しなども書いていますので、よろしければお目通しください。
このメールニュースを書いている間にも、内外からプラをめぐる新しい動きや情報が次々と届いています。また、お伝えしていきたいと思います。