年初からドジをしてしまいました。さきほどのメールニュースで、ハーマン・デイリーのピラミッドについて、「図を見ていただいたほうがわかりやすいので、こちらをぜひどうぞ」と書きつつ、リンク先を忘れていました。こちらからごらんください。失礼しました〜。m(_ _)m
http://www.es-inc.jp/lib/archives/090105_080650.html
というだけの、「史上最短のメールニュース!」で終わってもよいのですが(そう望んでいる方もいるのではないかと思いますが ^^;)、まあ、せっかくですので、昨年末の100万人のキャンドルナイトの「キャンドルホルダー・ミーティング」での発言からご紹介します。
ちなみに、キャンドルホルダーとは、年会費10万円でキャンドルナイトの活動を支援して下さっている企業の方々と、辻信一さん、竹村真一さん、大地の会の藤田さん、マエキタミヤコさん、私といった呼びかけ人代表やスタッフ、事務局との懇談会・懇親会です。このメンツを見てもお分かりのとおり、とっても刺激的で面白い時間です。
キャンドルホルダーについてはこちらをごらんください。
http://www.candle-night.org/jp/support/index.html
(今度はリンク先を忘れなかった〜。^^;)
ホルダーミーティングでは、まず呼びかけ人代表から数分ずつ、最近思っていること・考えていることなどを話しました。私が話した内容は以下です。
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年の瀬なので、今年1年どんな年だったか、来年どういうふうになっていくのかなと、私も最近よく考えているんですが、辻さんがいろいろお話ししてくださった、さまざまな危機が明らかになったのが今年だと思っています。
その中で、まだ政治家はわかってくれていませんが、草の根のレベルで言うと、これまでのような、小手先で表面的に何か変えるだけでは本質的な問題は解決しないということを、それぞれ感じるようになってきているんじゃないかと思います。アインシュタインが言った「問題をつくり出した思考方法では問題は解決できない」ということを、それぞれの言葉で、あちこちでみんなが言っているようになってきたと思います。
私はいま、主に温暖化という課題に関して活動することが多いですが、企業の中で講演しても、一般の方々向けに講演しても、いちばん最後に強調するのは「温暖化というのは問題ではない」ということです。「温暖化が問題ではなくて、もっと大きな問題がある。温暖化はその症状にすぎません」という話を必ずします。
そのもっと根源的な問題というのは、有限の地球の上で無限の成長をしようとしていること。地球の大きさは変わらないのに、人の数はどんどん増え、経済はどんどん大きくなり、地球がもう支えきれなくなっている。地球が吸収できるCO2の量という限界を超えてしまったから温暖化という症状が起きているのであって、温暖化が問題なわけではない。
私たちが考え直さないといけないのは――もちろん温暖化対策もしないといけないですが、成長そのものを考え直さないといけない。たとえばGDPが増えればいいというけれど、本当にそれでいいんだろうか。本当の幸せって何だろう、という話をするわけです。
この1、2年、特にこの1年でしょうか、すごく潮目が変わってきたなと思うのは、そういう話をしたときの反応です。何年か前でも、市民の人は「そうですよね」というふうに聞いてくれていたのですが、最近は、企業の中で話をしたときにも、そういった話がとても響くようになってきています。企業のトップと話をしてもそうだし、現場の人に話をしてもそうです。
私は講演のあと、必ずアンケートを書いてもらうのですが、どうやって温暖化対策を進めたらいいかという前半の話よりも、本当の幸せって何だろう、企業の存在価値って何だろう、自分たちは何で働いているんだろう――そういった問いかけをする後半が、非常に響いてきているなというふうに思います。なので、変えていく風土ができてきているんだろうと思っています。
その一方で、物事を変えていこうとしたときに、やはり抵抗勢力はあるし、いまのままのほうが都合のいい人たちもいます。もうひとつ言うと、いまのようにさまざまな危機が出てくると、これは仕方ないのですが、人として、どうしても近視眼的になってしまう。いま目の前のこれをどうするか、というふうになる。ますます刹那的な生き方や対応になっていくと思います。
そういうときに、私がキャンドルナイトはとても大事だと思うのは、「ちょっと立ち止まって考えましょうよ」という呼びかけだからです。ほんとに何が大事なのか、この2時間だけでもいいから、テレビや電気を消して、ゆっくり自分に向かい合いましょう、という機会を提供している。そのときに、これまで気がつかなかった本当の幸せって何だろうとか、そういったことを考えたり、感じたりすることができる。
もうひとつは、何でもそうですが、変化するということは、自分から起こしても、周りが起こすものであっても、多くの人にとって、基本的に怖いものだと思います。その変化を、怖いものとして出すのではなくて、キャンドルナイトのように、楽しいものとか、ロマンがあるものとか、そういったポジティブなものを通じて変えていけるというのは、たくさんの人にとってとても受け入れやすい。変化が怖くなくなる。そういう道でもあるのだろうと思っています。
私は、首相の温暖化懇談会に出ていますが、この間、麻生さんのもとで初めての会議があったときにすごくうれしく思ったことがあります。前の日銀総裁を務めていた福井さんが委員として今回から参加されたのですが、福井さんが最初に、「いま、世界は金融危機ということで揺れている。自分が思うに、なぜああいうふうになっているかと言うと、地球の資源が有限であるということを、金融市場が初めて認識したんだと思う。それへの反応として、ああいう形になっている」とおっしゃったんですね。金融市場ですら、世界の資源の有限性を認識して、これまでのやり方では対応できない、どうしたらいいだろうかというところで、いま模索をしているのだ、と。
とすると、環境派がずっと言ってきたように、資源の有限性に、経済とか中核の金融がこれからは取り組まざるを得ないような状況になっている。それは、そこまで状況が悪化しているということでもあり、逆に言うと、経済や金融セクターがそういった有限性の認識を持つことで、きっと大きく変わっていくと思ってい
ます。
何しても、私たち一人ひとりが自分の頭で考えて、自分で選んで、自分で決めていく。その力を取り戻すことが、私はいろんな問題のいちばんの解決策だと思っています。「○○が言うから」とか、「お上がそうだから」とか、「みんながそうするから」ではなくて、「私はこう思う」「私はこれをする」と。
それを一人ひとりが考えて選んでいく力を取り戻すきっかけとしても、キャンドルナイトはいろいろな可能性があると思っています。そういった動きは、単なる2時間の省エネとかではなくて、本当の意味での、大げさな言い方をすると、民主主義を日本でつくっていくような、そのきっかけになる活動だと思っているのです。
ですから、皆さんのサポートをいただいて、一緒にまた来年度、さらにそれをもっと広げていくにはどうしたらいいか、考えていけることをうれしく思っています。ありがとうございました。
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呼びかけ人代表が一巡しゃべったあとは、ホルダー企業の方々からの熱い発言や質問が続きました。
そのひとつに、「どういうのが幸せの姿なのか、具体的に示してくれれば、もっと活動しやすくなる。具体的に教えてほしい」というような話が出ました。それに対して、私がふだん思っていること(私の基本スタンスでもある)を伝えたくなったので、以下のように発言しました。
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講演をしたあとの質疑応答とか、聞いた方が個別にあとでいらしておっしゃるのと、すごく似ているなと思いました。「枝廣さんはいろんな話をしてくれました。でも、枝廣さんが『これがいいです』『こうあるべきです』というのをもっと打ち出してほしい」と言われることが最近増えているんです。それはすごく面白いなあと思っています。
私の考えは、たとえば私だったら私が、「私はこうやっていると幸せだと思う」とか「私はこれがいい」ということは言うことはできる。でも、誰かが「答え」を持っていて、もしくはどこかで「答え」がつくられて、それをみんなに広げましょうというのは、たぶん昔のアプローチで、それ自体間違っているのではないか、ということです。
私がさっき、「一人ひとりが考える力や選ぶ力や決める力を取り戻しましょう」と言ったのは、たぶん、それは普遍的に言えることなのですが、その結果、「私はこれが幸せだと思う」とか「私はこれを望む」とか「望まない」とか、一人ひとりがつくっていかないといけない。
そして、そういった一人ひとりが自分の考えを持った上で話し合いをして、じゃあ、うちの会社は何を目指すんだろう。「社長はああ言っているけど、自分たちはこうだ」とか、「社長も合わせて、こういうふうにやっていったらいい」とか、そういう対話、本当の意味での話し合いができる力、それも身につけていかないといけない。
何となく、「これが答えです」というのを求める人が最近増えているなという気はしていますが、たぶんそういう意味での「答え」は出せないし、出すことが答えではないと思うんです。
私はこう思っている。こういうふうに言っている人もいる。じゃあ、あなたはどうなの? みんなは何をやっているとき幸せなの? 組織のなかに、たとえば「お金がやっぱり欲しい」と言う人もいると思うけど、じゃあ本当にそれって幸せなの? ということを話し合っていく、みんなで考えていくプロセス自体が、組織にとって大事なのではないかと思うんです。
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忙しく慌ただしくなればなるほど、立ち止まる時間と余裕を自分に作ること。
それは、入り組んだ複雑な問題構造を少しでも見抜いて、別の問題を引き起こさない真の解決策を考える上でも、また、ユングのいう「内的適応」(自分の心から離れてしまわず、そのペースや方向性を大事にすること)のためにも、大事なことだと本当に思っています。
『地球とわたしをゆるめる暮らし (Slow down,enjoy more)』も、そういう思いで出した本です。
今年は、特に前半は、景気後退やさまざまな社会的なしわ寄せをめぐる状況が悪化していって、ますますせわしく慌ただしくなってくるのではないかと心配しています。そういうときこそ、浮き足だったり、悲観や絶望に陥るのではなく、「立ち止まって、本当に大事なことを考え、自分の心に耳を傾ける」時間を持つようにしましょうね。