昨年9月に、[No. 2135] で「ブータン王国「豊かさと幸福:新しい発展のパラダイム」に向けた国際専門家作業グループに参加します 」とお伝えしました。
http://www.es-inc.jp/library/mailnews/2012/libnews_id002762.html
この最初のワーキンググループ会合が1月末~2月初めにかけてブータンの首都、ティンプーで開催されます。国際専門家が50名近く集まり、メディアやオブザーバーは入れずに、議論を尽くす会合です。
私もメンバーの1人として参加します。「事前に読んでインプットできるようにしてきてください」という宿題の英語文書があわせると千ページ近く......!勉強になります~(^^;;;;
今回の会合には、マックス・ニーフ、ヴァンダナ・シヴァ、デービッド・スズキ、ハンター・ロビンス、フォン・ワイツゼッカーの各氏など、世界中からめったに一堂に会すことのないような屈指のメンバーが集まる予定で、とても楽しみです。
今回の会合での議論をベースに、4月に国連で発表する予定の「NewDevelopment Pradigm」(新しい発展のパラダイム)の準備が進められます。
会合の前に、ウェブとMLを使って事前の議論が交わされていて、これもまた勉強になります。そこでは何度か「世界の各地でそういった方向への取り組みや考え方が出てきている」ことが確認されています。
私が2011年1月に幸せ経済社会研究所を設立して活動を進めているのも、その1つの証左かもしれません。今回のブータン会合には、幸せ研・JFSの肩書きで参加しますが、3.11を経験した、そして世界に先駆けて人口減少社会に突入した日本だからこそのインプットが少しでもできれば、と思っています。
※私の日々の活動や暮らしの様子は、FBのほか、新しいウェブサイトの「えだブログ」でお届けしていますが、ブータンからもネット環境が許せば(これが不安なので、うまくいかなかったらごめんなさい!)、現地レポートをお送りしたいと思っています。
http://www.es-inc.jp/index.html
さて、同じく「そういった方向」を示すワールドウォッチ研究所からのプレスリリースを実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~
脱成長が世界の消費文化に代わるものを提示する
米国ワシントンD.C.-グローバル・フットプリント・ネットワークによると、もし誰もが平均的な米国人のような暮らし方をしていたら、地球がその物理的および生物学的体系を蝕むことなく維持できるのは、現在の人口の1/4にあたる17億人にすぎないだろうということだ。
産業化社会と新興諸国における過剰消費は、環境と人類に影響を及ぼし続けている。ワールドウォッチ研究所の主任研究員であり、『邦題:地球白書2012』(State of the World 2012)プロジェクトの共同責任者であるエリック・アサドゥーリアン(Erik Assadourian)は、同書の「過剰発展諸国における脱成長への道」と題する章で、「脱経済成長」を先取りすることの利点とそれがもたらすであろう好機を説明している。
ここでは「脱経済成長」は、過剰に発展した経済を意図的に収縮させることであり、より広義にはひたすら成長を追求する経済の方向性を改めることと定義される。
同氏は、経済成長と消費水準の上昇への執着が、債務負担、長時間労働、肥満率の上昇、医薬品への依存、社会からの孤立など社会的な害悪を招いていると言う。
一方、われわれは気候変動の暴走を阻止するチャンスを逃しつつあり、消費と化石燃料の使用を劇的に減らさない限り、地球温暖化の緩和はほぼ不可能になるだろう。温暖化が大幅に進めば、沿岸地域の洪水など自然災害に起因する大規模な人口の変動や、長引く干ばつ、疫病の新たな地域への伝播が予想される。これが、永遠に続く経済発展とは相容れないどころか、おそらく経済的・社会的な衰退にもつながる可能性のある将来のシナリオである。
成長を第一とする世界経済の破壊的な影響を前に、近年、脱成長が経済戦略として牽引力を発揮し始めている。イタリアとフランスには今や脱成長を唱える政党が存在する。世界規模でも、半年毎に開催される脱成長国際会議の第3回がヴェネツィアで閉会したところだが、登録参加者は700人を超えていた。
さらに広い範囲へ目を向けると、気候変動と天然資源の不足は生物物理学的に限りある環境で人類が永遠に成長を続けるのは不可能だという事実に起因することが理解され始めているが、それにともない、成長の終焉あるいは逆行が世界文明にとって避けられない通過儀礼になるだろうとの認識が高まってきている。
脱成長を促進する取組みは世界中で始まったばかりである。その中には租税転嫁や、個人所有から公共財の利用への移行、「トランジション・タウン」の理念 (訳注:ピークオイルと気候変動という危機を受け、市民の創意と工夫および資源を最大限に活用しながら脱石油型社会への移行を目指すという理念)に基づく町づくりや、肉の消費量減少に役立つ「肉なし月曜日」といったより健康的で持続可能な消費習慣の促進などさまざまなものがある。
「脱成長へ向かうには、『豊かさ』の定義を根本から見直す必要があるだろう-健康、社会的なつながり、生活できるだけの収入を得ながらも労働時間を減らす自由という面で、『豊かさ』という言葉がもつ意味の従来の理解を甦らせることになるのだ」とアサドゥーリアンは述べている。
「脱成長が提案する新たな『豊かさ』のビジョンは、成長と消費を最大化することではなく、より少ないもので不自由のない生活を送ることを中心に据えている。脱成長は、もう地球の限界を超えることのない、安定した経済システムを確立しようとするものなのだ。」
脱成長を提唱する人々はまた、社会的利益を公平に分配しなければならないとも主張している。先進国では今後、過剰消費を抑制する必要があるが、その一方、 世界で貧しい方の1/3を占める人々は、資源の消費を少なくとも多少は増やす必要に迫られるにちがいない。衛生状態、水の安全性、栄養状態、住まい、交通手段を改善することで生活の質を向上させるためだ。
アサドゥーリアンは「経済上の優先順位を見直すことで、政策決定者は各人の幸福度を高め、地域社会がレジリエンス(困難にしなやかに対処する力)を強化し、地球の生態系回復に着手することができる」と述べている。
この『仮邦題:地球白書2012:持続可能な豊かさへ向かって』の第2章でアサドゥーリアンは、産業化社会における、脱成長へ向けた世界的な動きを拡大するであろう3つの改革を詳述している。
●消費文化を変容させる:食物、住宅、交通手段に関する社会規範の転換は、大きな変化になる可能性がある。各国政府は脱成長を促進するために、住まいを小さくし、歩ける範囲で生活を送り、食べる量を減らすと同時にあまり加工されておらず、食物連鎖で下位に位置する食物をとることが当たり前となるよう支援することができる。
地域社会もまた、小規模な農業、育児や老人介護、助産、修理や大工仕事といった基本的な技術を磨く支援をするなど、地域内で公的・私的な経済活動を行う機会を育むことで、脱成長を促し、レジリエンスを増すことができる。
●税負担をより公平にする:社会の富裕層、資源の汚染、広告、金融取引に課税すれば、過剰な経済成長と過剰消費を抑制することができるだろう。こうして新たな収入が得られれば、モノを共有できるサービスなど脱成長へ向けた取組みへのさらなる資金としたり、既存の必要不可欠なインフラ(上下水設備、公共交通機関など)を改善したり、屋上の緑化や再生可能エネルギー、自転車専用レーンなど持続可能性に寄与する重要なインフラ整備を援助したりできるだろう。
●ワークシェアリングを行う:一人当たりの実質的な平均週間労働時間は、失業者や非正規労働者、超過労働をしている者を考慮して計算するとかなり短くなる。実際、ニュー・エコノミクス財団によると、英国では2010年のこの実質的な平均週間労働時間は21時間だった。労働時間の分配を改善して週間労働時間を再編すれば、失業や貧困を減らすのに役立ち、一方では被雇用者の生活の質を大幅に改善することにもつながるだろう。
こうした改革は、世界が脱成長へ向かう動きを刺激するために各社会が実行できる多くの取組みの一部にすぎない。アサドゥーリアンの主張によると、 脱成長によって、今日国際社会を悩ませている社会問題や環境問題を捉えなおし、多くの解決策を得ることができるという。
2012年4月に刊行されたワールドウォッチ研究所の『邦題:地球白書2012』は、リオ+20で議論された、すべての人々が恩恵を受ける持続可能な発展という主題に焦点をあてている。これは、1992年に同じリオ・デ・ジャネイロで開かれた歴史的な地球サミットから20年後のフォローアップ会合である。この報告書では、人類の要求を満たし、雇用をもたらし、すべての人々の尊厳を保証しつつも、地球規模で環境の持続可能性を達成するための革新的な案と実施例を選んで紹介している。
(翻訳:野村、チェッカー:梶川)
~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~
ブータン会合は1月末からですが、そのまえの海外参加者向けのツアーにも参加するため、25日に出発します。民泊の予定も組まれているので、楽しみにしているところです(ただし、とっても寒~い!とのことですが、、、)