ホーム > 環境メールニュース > "定常型経済"へ向かって (2013.02.27)

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2013年02月27日

"定常型経済"へ向かって (2013.02.27)

新しいあり方へ
 
「ガスエネルギー新聞」で、「賢人の目」というコラムを月1回ずつ書かせていただいています。 http://www.gas-enenews.co.jp/ 特別にご了解をいただき、自分の原稿をイーズ共創フォーラムのウェブサイトにもアップさせてもらっています。 http://www.es-inc.jp/library/writing/index.html 2月4日号に掲載していただいた原稿、できたら皆さんのご意見もうかがいたく、ご紹介します。(データやキーワード解説のリンクを追加しています) ~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~ "定常型経済"へ向かって 最近、世界の経済界で「成長の終焉」という言葉がよく聞かれるようになってきました。ずばり「The End of Growth」という書籍も何冊か出ています。 経済成長が続けられなくなってきた状況を憂えて「どうすればよいのだ」ととまどう声も多くありますが、一方で「失われた20年と言われている日本は、実は今後の多くの国が向かう『新しいふつう』の姿を先取りしているのではないか?」という意見も出てきて、注目を集めつつあります。 幸せ経済社会研究所を主宰し、英語で世界にも情報発信をしている私にも、そういった観点からの取材依頼が増えており、世界の議論の展開を肌身で感じています。 世界に先駆けて人口減少時代に入った日本は、世界への新しい貢献ができる立ち位置にいる、つまり「人口減少社会としての持続可能性のビジョン」を示せるのではないでしょうか。 日本は、2004年に人口がピークに達してから、人口減少時代に突入しました。今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準に戻っていく可能性があるといわれています。千年単位でみても海外をみても、類のない極めて急激な減少です。 http://www.es-inc.jp/graphs/2012/grh_id003273.html 1990年代初めにバブルが崩壊してからのいわゆる「失われた20年」は、経済成長至上主義から見れば問題かもしれませんが、来るべき定常型経済の姿として考えれば、また別のものが見えてくるように思います。 定常型経済とは、「活発な経済活動が繰り広げられているが、その規模自体は拡大していかない経済」です。 日本は世界の先陣を切って、「人口が増えつづけ、経済規模もどんどん大きくなるという右肩上がり時代」から決別し、まちづくりや暮らしも、経済や社会の在り方も、人口減少をベースに考えるという大きな課題に直面しているのです。 これまで、政治は「経済が大きくなれば、みんなの取り分前は増えるから、問題は解決する」として、分配の問題を避け、パイの拡大に力を注いできました。 しかし、経済が拡大を続けなくなるとしたら、「いかに分配するか」という政治の本来の役割に戻ることになるでしょう。 世界の中では、「縮小都市」「smart decline」など、いかに賢く幸せに小さくなっていくかを研究・実践し始めているところもあります。 http://ishes.org/keywords/2013/kwd_id000782.html 考えてみれば、日本の得意な技術も、その多くが「縮小のための技術」ではないでしょうか。あんなに大きかったコンピュータが手のひらに載るほど小さなものになり、とても便利に使われるようになりました。 企業がしのぎを削って開発競争を進めている省エネ技術にしても、「減らす」ための技術です。 3.11を経験し、人口減少時代に入りつつある日本が、短期的な経済効率だけでなく、中長期的なしなやかな強さも重視した定常型経済へのシフトを試行錯誤し、その学びを伝えていくことは世界への貢献となります。そしてそのプロセスに資する日本の技術がますます世界に求められるようになると信じています。 ~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~ 「成長をしない(ゼロ成長)経済」というと、「自転車を漕ぐのをやめたら自転車は倒れてしまうように、経済が崩壊するのではないか」という心配(質問、詰問、批判)によく出会います。 自転車の例をとれば、ゼロ成長経済(定常型経済)とは、自転車を同じスピードで漕ぎ続けることです。倒れません。規模は一定ですが、活発な活動が展開される経済です。 成長経済とは、自転車を加速し続けることではないでしょうか。持続可能なのでしょうか。"どこまでも常に加速し続けなくてはならない"ことから、人々も地域も社会も疲弊しつつあるようにも思います。 多くの人が望んでいるのは、「経済成長か、崩壊か」ではなく、「経済持続」なのではないかなあと思います。私も経済が持続することを望んでいます。 といったことをじっくり考えるためにも、いよいよ来週となりました、幸せ経済社会研究所オープンセミナーがよい機会になりそうです。 「ブータンのGNHから何を学ぶか~その理論と現実」 ブータンのGNHとはどのような背景で始まったものなのでしょうか? その内容はどのようなものなのでしょうか? どうやって幸せを測ろうとしているのでしょうか?ブータンでの取り組みでこれまで何がわかってきたのでしょうか? 今後の展開や課題は?そして日本の私たちが考えるべきことは? ブータンで中心的に取り組んできた方々との意見・情報交換をはじめ、さまざまな角度から、GNHや幸福を社会と経済の中に位置づけていく動きについてお伝えし、みんなで一緒に考えていきたいと思っています。ご関心のある方、ぜひご参加下さい。(遠方の方、都合のつかない方に音声受講もあります) 楽しみにしています!
 

このページの先頭へ

このページの先頭へ