日本では1,000社を超える企業が環境報告書を出しています。
環境省の平成23年度「環境にやさしい企業行動調査結果」によると、1部、2部上場企業2,364 社及び従業員数500人以上の非上場企業を対象とした調査で、有効回答数2,794社のうち、1,016社が「環境報告書を作成・公表している」と回答しました。
米国でも発行企業は激増しています。
これまであまり環境・CSR報告書に熱心ではなかった米国でも、ここ1~2年驚くほど広がりつつあります。ある調査によると、S&P 500の対象銘柄である500社のうち、CSRレポートやサステナビリティレポートを発行している企業数は、2010年には19%だったのが、2011年には一挙に53%に増えています。
「サステナビリティはビジネスのボトムラインに直結する」という認識が広がっています。
米国で発行企業が激増している理由のひとつは、「ウォールストリートの投資家たちが、サステナビリティと財務パフォーマンスの相関に気づき始めたこと」です。
S&P 500を対象とした上記の調査では、「サステナビリティレポートを発行している企業は、そうでない企業に比べ、財務面でのリターンが大きい」との分析結果が発表されています。財務パフォーマンスにつながっているとくれば、投資家たちは企業のサステナビリティ関連のデータを求めるようになります。
サステナビリティレポートを作成・公開することは、ほかにも、「優秀な人材を引きつけ保持する」という人材面のほか、「リスクマネジメント」「ブランド差別化」「サプライヤーとの良好な関係性」「操業している地域への責任」等、企業の存続や競争優位にとって大事なメリットがあるとの研究・報告もいろいろと出されています。
「出せばよい時代」から「企業価値を高めるレポートを作る時代」へ
ここ1~2年の米国のビジネス界では「他社に遅れずに出そう!」という呼びかけが多かったですが、過半数の企業が出すようになれば、出すことは当たり前となり、いよいよレポートの質が問われるようになってきます。日本では多くの企業報告書を出し始めた時期は米国よりも早いので、すでに「出せばよい」時代でないことは言うまでもありません。
業種に関わらず、最低限押さえるべき要素があります。
私はこれまで、環境報告書大賞の審査委員をはじめ、多くの企業の環境・CSRレポートの第三者意見執筆、環境コミュニケーションのお手伝いなどを通じ、かなりの数の環境報告書やCSRレポートを読んできました。
うなるほどすばらしいレポートもあれば(まれに、、ですが)、「惜しいな、もったいないな」と思う報告書も多くあります。環境・CSR報告書は社会とのコミュニケーションのために作成するはずですが、「伝わっていない」「コミュニケーションになっていない」と思われるものもあります。
その違いは何なのでしょうか? 報告書のどのような側面が「すばらしい」と思わせたり、「もったいない」「足りない」と思わせるのでしょうか?
環境・CSR報告書は、各企業の属する業界の特徴、会社としての考え方などによって、作り方や最終的な冊子もさまざまに異なることは言うまでもありません。それでも、どんな業種であれ、どんな企業方針であれ、環境・CSR報告書として最低限押さえておくべき共通の要素があります。
言ってみれば、フィギュアスケートのようなもので、だれもが行うべきことをきっちりと行わなくてはならない規定演技の項目があります。その上で、それぞれの想像力と創造性を加味した自由演技ができるのです。
まずい報告書を出すことでかえって企業価値を下げてしまってはしかたありません。そうならないために、環境・CSR報告書の「規定演技」の審査項目はどのようなものなのでしょう?(「GRIなどのガイドラインを参照していること」=「規定演技クリア」ではありません)
企業価値を高める、つまり社会から信頼を勝ち得ることのできる報告書の要諦とは何なのでしょうか?
環境・CSR報告書の審査をする際、一度に何十社、累計では何百社分も目を通しますから、多くの審査員が自分用のチェックリストを持っています。私自身が審査や第三者意見を書く際に用いているチェックリストの項目を共有しながら、企業価値を高める環境・CSR報告書の作り方についてお話しするセミナーを開催することになりました。
GRIガイドラインや統合報告書の流れも押さえておく必要があります。
一方で、GRIなどのガイドライン自身も進化しています。2013年には第4版のガイドライン「G4」が公表されました。さらに、IIRC(国際統合報告評議会)が統合報告の国際フレームワークの構築を目指して、公開草案を公表しました。
統合報告とは、単に環境報告書やCSR報告書とアニュアルレポートなどを一冊にまとめる、といったことではありません。経営戦略やビジネスモデルに持続可能性への配慮を組み込む「統合思考」が求められるのです。それは、企業が生み出す価値とは何かを見直すことを意味します。
今回のセミナーでは、こういった世界の動向と日本企業のレポート作成の実情に詳しい高崎経済大学経済学部教授の水口剛先生をゲストとしてお招きし、GRIガイドラインや統合報告の動向、企業として気をつけるべきことなどをお話しいただきます。
せっかく作った報告書を企業価値につなげるために
また、企業価値につなげるためには、環境・CSR報告書を作成するだけでは十分ではありません。環境・CSR報告書はどこかに飾ったりしまっておいたりする"作品"ではなく、使われて始めて価値を生み出すツールであり媒体です。
多くの企業がせっかくよい報告書を作っても、印刷したところで終わってしまい、活用して価値を生み出すところまで行かないようすを見てきました。作成する努力の半分でよいので、活用する努力をすれば、生み出せる価値は何倍にも高まります。作成した環境・CSR報告書の活用方法についてもお話しします。
次の環境・CSR報告書、コミュニケーションに向けて
来年度の環境・CSR報告書作成に向けて、また、環境・CSRコミュニケーションの改善や社会価値創出力の向上に向けて、アドバイスや最新動向を聞くだけではなく、自社に引きつけて考えてみる機会を通じて一歩先へ進むことができます。この機会をぜひご活用ください。
~~~~~~~~~~~~~ここからご案内~~~~~~~~~~~~~~
『企業価値を高めるCSR・環境報告書の作り方・使い方』(10/31(木)開催)
http://www.es-inc.jp/seminar/2013/smn_id004363.html
○日時:2013年10月31日(木) 13:30~17:00(開場:13:10~)
○場所:東京都新宿区
※会場詳細は参加者に別途ご案内いたします。)
○参加費:8,000円(税込)
○募集人数:約50名(先着順)
※環境・CSR報告書を発行している企業、または発行を考えている企業の担当者
のためのセミナーです。報告書の企画・制作会社の方のご参加はご遠慮下さい。
○プログラム概要(予定)
13:10 開場
13:30 ご挨拶
問題意識や課題の共有
13:45 「企業価値を高める環境・CSR報告書の作り方、使い方」
幸せ経済社会研究所所長 枝廣淳子
14:30 「GRIガイドラインおよび統合報告書の動向と意味」
高崎経済大学経済学部教授 水口剛先生
15:00 質疑応答
16:00 自社の環境・CSR報告書の改善、向上に向けて(ワーク・ディスカション)
16:50 まとめ
17:00 終了
○ゲスト講師:高崎経済大学 経済学部 教授 水口 剛先生
○ファシリテーター:枝廣 淳子
○ お申込みの流れ:
下記申込フォームより、お申込をいただきますと、【仮受付票】を自動送信メールでお届けいたします。【仮受付票】にお支払いのご案内がございますので、ご
確認いただいたうえ、お振込み手続きをお願いいたします。
http://bit.ly/14p4ymB
※今回のセミナーは、イーズ未来共創フォーラム異業種勉強会のフォーラムとの
併催となります。パートナー企業・団体の皆さまはこちらからお申し込み下さい。
http://www.es-inc.jp/network/forum/2013/nwk_id004359.html
○お支払い方法:銀行振込・クレジットカード決済が可能です。
○お振り込み期限:2013年10月28日(月)
※銀行振込にてお支払いの場合、お振込手数料はお客さまのご負担となります。何卒ご了承ください。
※なお、ご入金後のキャンセルはお受けしておりませんので、予めご了承ください。 当日欠席される場合、
お申込みいただいたご本人さま以外による代理参加など、ご検討いただき、事前にご連絡いただければ幸いです。
※セキュリティの関係等でGoogleフォームをご利用頂けない場合は、
下記必要事項をご記入のうえ、事務局宛てのメールアドレス(info-partner(@)es-inc.jp)までお送りくださいませ。
迷惑メール対策のため、お手数ですが(@)を@に変更してお送り下さい。
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【件名】『企業価値を高めるCSR・環境報告書の作り方・使い方』(10/31(木)
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・お名前(ふりがな)※
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・備考
(※)必須記入項目
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※お申し込み後、折り返し参加票をメールにてお送りいたします。
※お申込後、数日たちましても参加票が届かない場合は、メール送受信のトラブルの可能性がございますので、
その際はお手数ですが、info-partner(@)es-inc.jp もしくは電話03-5426-1128までお問い合わせくださいませ。
○注意事項:当日の録音、カメラ、ビデオ撮影等はご遠慮ください。
○お問合せ
有限会社イーズ 担当 館岡
E-mail:(info-partner(@)es-inc.jp/電話:03-5426-1128
~~~~~~~~~~~~ご案内ここまで~~~~~~~~~~~~~~
以前から、報告書を通じての環境コミュニケーションについてポイントを教えてほしい、と問われることがよくありました。今回、内外の動向も踏まえながら、これまでの経験や考えをまとめて、「報告書作成で気をつけるべきこと」「すべきこと、してはいけないこと」「なぜなのか」をお話しできることを楽しみにしています。担当者の方、ぜひご参加下さい!
※有限会社イーズは、2017年12月25日に移転いたしました。
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