1月25日にアップした「一日一題」で、
http://www.es-inc.jp/1dai/2014/1dai_id004769.html
報道記事に基づき
> エネルギー基本計画、原発「重要」の文言削除へ
> 現在の原案では「基盤となる重要なベース電源」と位置づけられていますが、「重要な」の文言を削除する方向で調整するそうです。
> 調整する理由として「約1万9千件も寄せられた国民の声や、与党内の慎重な意見を反映して表現に修正を加える必要があると判断した」とのこと。
とお伝えしました。
おととい、エネルギー基本計画の政府案が発表されました。くだんの箇所を見てみると、あれれ?
「原子力 (前略) エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である」
「重要な」が入ったままですね。1万9千件も寄せられた国民の声を反映するのをやめたのでしょうか???
(ちなみに、「ベース電源」と「ベースロード電源」という表記の違いがありますが、両方とも、電力需要の変化に対応して、ピーク時に必要量を発電する「ピーク電源」に対して、「安定した一定の出力で発電を行うもの」の意味で、同じ意味だと考えられます)
エネルギー基本計画の政府原案はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/kihonkeikaku/140225_1.pdf
また、パブコメ(パブリックコメント)については、このようにあります。
新しい「エネルギー基本計画」策定に向け、下記要領にてパブリックコメントを実施いたしました。御意見の概要及び御意見に対する考え方は別紙のとおりです。
到達件数:18,663件
御意見の概要と御意見に対する考え方:別紙のとおり(全95ページ)
パブリック・コメントと回答(考え方)
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/kihonkeikaku/140225_2.pdf
パブリックコメントの資料を読むと、どんな意見があったのか、その幅や重点が伝わってきます。もっとも、私の出した意見は、項目として取り上げられていなかったので、すべて取り上げたわけではなさそうです。
多くの意見が寄せられたであろうポイントへの、「考え方」を見てみました。
(メール配信での読みやすさのため、改行を入れています)
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~
●(原子力は即時ゼロにすべきである/再稼働をすべきでない) というコメン トに対して
福島県においては、今なお約14万人の方が厳しい避難生活を送っておられます。国がこれまで原子力政策を担ってきたことに伴う社会的責任については、被災者の皆様に心からお詫びしたいと考えています。
原発に対する多様な意見があることについては、エネルギー基本計画の政府の原案の第3章第4節1.において「事故前に比べ、我が国におけるエネルギー問題への関心は極めて高くなっており、原子力の利用は即刻やめるべき、できればいつかは原子力発電を全廃したい、我が国に原子力等の大規模集中電源は不要である、原子力発電を続ける場合にも規模は最小限にすべき、原子力発電は引き続き必要であるなど、様々な立場からあらゆる意見が表明され、議論が行われてきている。政府は、こうした様々な議論を正面から真摯に受け止めなければならない」という形で記載しております。
エネルギー基本計画の政府の原案の第1章第2節2.に記載しておりますとおり、原子力発電所が停止した結果、「原子力を代替するために石油、天然ガスの海外からの輸入が拡大することとなり、電源として化石燃料に依存する割合が震災前の6割から9割に急増」しております。
「原子力発電の停止分の発電電力量を火力発電の焚き増しにより代替していると推計すると、2013年度に海外に流出する輸入燃料費は、東日本大震災前並(2008年度~2010年度の平均)にベースロード電源として原子力を利用した場合と比べ、約3.6兆円増加すると試算され」ています。
さらに、「海外からの化石燃料への依存の増大は、資源供給国の偏りというもう一つの問題も深刻化させて」います。「現在、原油の83%、LNGの29%を中東地域に依存しており(2012年)、中東地域が不安定化すると、日本のエネルギー供給構造は直接かつ甚大な影響を受ける可能性があ」ります。
こうした中、エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第1節2.に記載しておりますとおり、「国内資源の限られた我が国が、社会的・経済的な活動が安定的に営まれる環境を実現していくためには、エネルギーの需要と供給が安定的にバランスした状態を継続的に確保していくことができるエネルギー需給構造を確立しなければならない」と考えており、「各エネルギー源は、それぞれサプライチェーン上の強みと弱みを持っており、安定的かつ効率的なエネルギー需給構造を一手に支えられるような単独のエネルギー源は存在しない」中で、「危機時であっても安定供給が確保される需給構造を実現するため」には、原子力も含め、「エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが他のエネルギー源によって適切に補完されるような組み合わせを持つ、多層的な供給構造を実現することが必要である」と考えております。
このため、エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第2節1.に記載しておりますとおり、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」方針の下で、「我が国の今後のエネルギー制約を踏まえ、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、確保していく規模を見極める」こととしております。
また、エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第2節1.及び第3章第4節1.において記載しているとおり、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」こととしています。その際、いただいたコメントを踏まえ、「国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」旨を記載しています。
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(脱原発を目指すべきである) というコメントに対して
エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第1節2.に記載しておりますとおり、「国内資源の限られた我が国が、社会的・経済的な活動が安定的に営まれる環境を実現していくためには、エネルギーの需要と供給が安定的にバランスした状態を継続的に確保していくことができるエネルギー需給構造を確立しなければならない」と考えており、「各エネルギー源は、それぞれサプライチェーン上の強みと弱みを持っており、安定的かつ効率的なエネルギー需給構造を一手に支えられるような単独のエネルギー源は存在しない」中で、「危機時であっても安定供給が確保される需給構造を実現するため」には、原子力も含め、「エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが他のエネルギー源によって適切に補完されるような組み合わせを持つ、多層的な供給構造を実現することが必要である」と考えております。
このため、エネルギー基本計画の政府の原案の第2章第2節1..に記載しておりますとおり、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」方針の下で、「我が国の今後のエネルギー制約を踏まえ、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、確保していく規模を見極める」こととしております。
なお、エネルギー基本計画の政府の原案の第4章2.に記載しておりますとおり、「海外からの化石燃料に過度に依存するエネルギー需給構造を長期的視点に基づいて変革していくため」、原子力の安全性、信頼性、効率性を高める技術のほか、「再生可能エネルギー熱利用の低コスト化・高効率化や多様な用途の開拓に資する研究開発」、「我が国の排他的経済水域に豊富に眠ると見られているメタンハイドレートや金属鉱物を商業ベースで開発が進められるようにするための技術開発」、「国産エネルギー源を有効に利活用できる二次エネルギーである水素エネルギー」を実装化するための技術開発や「将来の革新的なエネルギーに関する中長期的な技術開発」などを推進することとしております。
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(パブリックコメントの意見をきちんと反映させるべきである)というコメントに対して
パブリックコメントの意見をきちんと反映させるべきとの御指摘を踏まえて本資料を作成しております。また、寄せられた意見について、丁寧に精査し、エネルギー基本計画の政府の原案をとりまとめました。
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~
また、私の意見でもありますが、「そもそもどのくらいのエネルギーがいるか」から考えるべき、という意味で、
(経済成長を最優先とせず、エネルギーの需要を抑える持続可能な社会を目指すべきである)
というコメントがいくつも寄せられていることがわかります。
しかし、これへの「考え方」は......
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(経済成長を最優先とせず、エネルギーの需要を抑える持続可能な社会を目指すべきである)というコメントに対して
調査会意見第2章第1節1.に記載されているとおり、エネルギーは人間の「あらゆる活動を支える基盤」であると考えております。政策の基本的な視点として、経済成長の視点も重要であり、「経済負担の最小化を図りつつ、エネルギーの安定供給と環境負荷の低減を実現していくことは、既存の事業拠点を国内に留め、我が国が更なる経済成長を実現していく上での前提条件」だと考えております。このため、こうした点をエネルギー基本計画の政府の原案の第2章第1節1.に記載しています。
~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~
経済成長の位置づけについて問うているのに、「経済成長を実現していく上での前提条件」と、経済成長は所与のものになってしまっていて、まったくかみ合っていませんね。。。
このエネルギー基本計画、与党の了解を経て、来月にも閣議決定され、確定することになるようです。
なお、ご参考までに、私が提出したパブリックコメントは以下の通りです。特に、
> 「広報」「情報発信」だけではなく、双方向型のコミュニケーションや対話を進めてもらいたい。
> 原発の新増設をどうするのか、つまり、日本はこれから原発をどうしていくのか、
> エネルギーをどうしていくのか、という本質的な方向性の話を、時間がかかるこ
> とを前提に、先送りせずに、しっかりと議論し、対話し、進めていってほしい。
強く強く望んでいます。よかったらそのやり方も一緒に考えます!
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
○石油など化石燃料の位置づけと説明の比重が大きくなっている。化石燃料につ いてこれぐらいしっかりと書き込むのなら、再生可能エネルギーについても、 もっとしっかり書き込めたのではないか。 ○「広報」「情報発信」だけではなく、双方向型のコミュニケーションや対話を 進めてもらいたい。
○「高レベル放射性廃棄物について、国が前面に立って取組を進める」というこ とについて。
・今後脱原発をしたとしても、すでにある核廃棄物をどうするかという問題は残 るので、いずれにしても最終処分地はつくっていかないといけない。
・ときどき原発推進派から「すでに核廃棄物があるのだから、原発を動かしても 同じ」という、"毒を食らわば皿まで"的な意見を聞くが、原発を使い続けれ ば、核廃棄物が増えていく。
・処分方法も場所も決まっていない現在、核廃棄物を増やし続けるべきではない。 処分方法と場所が決まってから、今後も原発を使うかどうかを考えるべき。
・最終処分地について、自治体に任せて待っていても手が挙がらないだろう、進 まないだろうという認識はおそらく正しいと思う。ただ、現在の進め方には3 つ問題がある。
・1つ目は、「待っていても進まない」という認識は正しいが、「それはなぜか」 という分析は正しいのだろうか? 「自治体が住民にちゃんと説明できていな いからだ、自治体では住民の不安を鎮められない」という見立てで、「国がき ちんと科学的に説明すれば納得するだろう」と思っているとしたら、違うので はないか。
・自治体の住民への説明が不足・効果的でないという以前に、根本的に、これだ けの地震国の日本で、原発を維持して増え続ける核廃棄物を地層処分すること への不安や不信が根本にあるのではないか。
・「国が科学的に説明しますから、ここでやりましょう」と言われても、根本的 な不安とか不信は払拭できないだろう。
・地層処分の科学的な説明だけでなく、日本は原発をこれからどうしていくのか、 という大きな枠組みが不確定な間は、話が進まないのではないか。
・2点目は、今回、自治体に任せていられないということで、国が前面に出るわ けだが、短期的に進めるつもりだったら失敗するだろう。逆効果になるおそれ がある。
・最終処分地を決めることができた世界の数少ない例であるフィンランドにして もスウェーデンにしても、何十年という時間をかけて、徹底的に情報公開して、 信頼関係をつくって、それで受け入れが決まった。
・国が今回、「国が前面に出る」といったとき、長期的に腰を据えて、しっかり と国が住民が向き合って、情報開示をして、対話をしていこうというのだった らよいが、「治体ではなかなか決まらないから、短期間に決めるために国が出 ていく」ということだと、うまくいかないだろう。
・基本問題委員会の時にも繰り返し言った(そしてほとんど通じなかった)こと だが、人々が何かを受け入れるのは、理性的な説明や説得の一方的な受け手と なる時ではない。説明されたことに対して、能動的にワガコト化して、自分に 引き付けて考え、「こういうときはどうなんだろう?」といった問いを発しな がら、情報を求め、考えて、自分の意見を口にして、ほかの人の意見を聞いて、 また考えるという、対話のサイクルがあってはじめて、何かを受け入れること ができる。
・対話のサイクルには時間がかかる。国がそのかかる時間もわかったうえで、 「前面に出て進める」つもりなのだろうか。その覚悟があるのだろうか。
・3番目は、高レベル放射性廃棄物の定義そのものについて。日本では、「高レ ベル放射性廃棄物」といったとき、いわゆる使用済み核燃料を指すのではなく、 使用済み核燃料を再処理した後の廃液やそれを固めたガラス固化体を指す。・つまり、再処理と核燃サイクルを前提とした上での高レベル放射性廃棄物の最終処分地ということになる。
・原発の今後に関して、再処理や核燃サイクル自体をどうするかを考え直す必要 がある現在、それを前提として話を進めることはおかしいし、問題だと思う。
報道によると、今回の基本計画に「原発の新増設」を盛り込むべきだという委員意見もあったが、「国民感情的に今はそのタイミングではない」と外したとのこと。
本当に原発を新増設する必要があると信じているなら、たとえ国民感情が逆風になったとしても、しっかり打ち出し、説明し、説得すべき。「いまは出さない方がよい」という"距離感"で政策を操作するのはおかしい。
原発の新増設をどうするのか、つまり、日本はこれから原発をどうしていくのか、エネルギーをどうしていくのか、という本質的な方向性の話を、時間がかかることを前提に、先送りせずに、しっかりと議論し、対話し、進めていってほしい。