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2014年09月27日

信州伊那里自給楽園とHSBCとの共創の取り組み (2014.09.27)

新しいあり方へ
 

2014年8月8日に発表された、内閣府の「農山漁村に関する世論調査によると、都市に住む人で、農山漁村地域への定住を希望する人は約3割にのぼります。2005年の前回調査時の20.6%から、31.6%へと大きく増えています。
http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-nousan/index.html

また、都市と農山漁村の交流の必要性については、「必要」が約9割(「必要」56.5%+「どちらかというと必要」33.4%、前回調査78.4%)にもなり、近年、地域との関わりや田舎暮らしへの興味・関心がますます高まりつつあるといえます。

今日は農村と都市企業との共生を目指す、長野県のNPOの実際の活動事例をご紹介します。私の主宰するイーズ未来共創フォーラムのメンバー同士の共創の取り組みでもあります。この活動体験から、今後の地域と都市企業の共生のあり方について考えるきっかけにできればと思っています。

NPO伊那里イーラは、長野県の南、伊那里地域(宮田村・駒ヶ根市・飯島町・中川村)で活動する、まちづくりNPOです。都市と農村の交流を深め、都市からの移住・定住を促進し、人口増加を図ることを目的に、2009年から活動しています。

活動の特徴は、中央アルプスと南アルプスを望む信州伊那里の里山資源をいかしながら、多くの地元の人が主体的に企画・運営する豊富な交流体験プログラムがあることです。年間で農作業や田舎暮らしを体験できる地域の施設と連携し、200余りのプログラムを実施してきています。

これら地域のネットワークとノウハウを活用し都市企業と農村との交流をすすめる事業・信州伊那里自給楽園を今年からスタートさせました。都市企業にはこうした伊那里の多様な資源を環境・CSRや社員教育の一環として利用し、信州伊那里と共生パートナーになってもらいたい、と考えています。

今回、信州伊那里自給楽園とコラボレーションしたのは、英国系金融機関 HSBCグループ(以下、HSBC)。毎年行っている、里山保全活動の活動先を探していたところ、豊富な独自体験プログラムと受け入れ態勢がしっかりしていることが決め手になり、今回の1泊2日の里山保全プログラムが実現しました。

当日の参加者はHSBC社員と家族47名(1歳~60代)。東京からはJRあずさで乗り継ぎ2時間半、茅野駅下車後、車で約1時間です。

1日目はトレッキング、陣馬形山山頂での景観観察、夕食づくり、星空観察会。2日目は信州伊那里自給楽園でのキャベツの苗植え、ナスやジャガイモのもぎとり、竹割りと竹を利用した流しそうめんづくりの体験など。

最初のオリエンテーションの後、さっそくプログラム開始です。1日目のトレッキングも単なる登山ではなく、地元のインタープリターと呼ばれる方による解説がついています。山道に植生するきのこの見分け方をしったり、虫の幼虫や抜け殻を見つけて、住みかを探すポイントを探したり、こどもたちも楽しみながら、学ぶことができたようです。

また、昔は松茸も採れていたが、人が減り、山に入らなくなり、変わってきてしまったようすや鹿や熊の獣害が増えて困っている、という話は、大人にとっても、実際の里山の状況を自分の目でみることで、ワガコトとして考える機会になりました。

登り切った山頂では、美しい中央アルプスと南アルプスの絶景や、天竜川沿いのまちなみを望むことができます。また、山頂では、農家さんが育てた14種類の新鮮な野菜と果物をいただけるサラダバーや自作のエコストーブをつかってのカレー作りを行いました。食事の準備・後片付けなど、多くの時間をHSBC社員と地域の方が、共同作業をおこなうことで、自然と地域の方との会話や交流が増えていきました。

翌日は、「信州伊那里自給楽園」での実際の苗植え、夏野菜の収穫体験です。もいだナスを「ひとくちかじってごらん」と野菜について解説していただいた北原さん。「洗わなくていいの?」と心配そうなこどもたち。

無農薬だからこそ、採れたてを安心して食べることができること、葉っぱに穴があるのも、たくさんの虫が生きていて、虫たちにとってもおいしいからだという説明をきいて、安心してがぶり。貴重な体験になりました。大人にとっても、育てる野菜だけでなく、土と土の中の生き物のつながりを知る、よい機会になりました。

また、この地域では竹を使った里山保全・地域活性を考えています。このあたりは昔、養蚕が盛んで桑畑が広がっていましたが、時代とともに衰退、人口も減り、桑畑は荒れ地になりました。代わりに繁殖力が異常に強い樹種の孟宗竹が広がり、竹害に悩まされるようになりました。

この"やっかいもの"の竹をなんとか資源活用できないか調べたところ、安全な植物性肥料になることがわかり、今回、国からの里山整備の補助金も活用し、肥料化を実現、この自給楽園でも肥料として使われています。今後、竹の肥料を販売し、その売上金で竹林整備や里山保全を進めていきたい、と考えているようです。

今回は、伐採した竹を使って、流しそうめん台づくりも行いました。こどもたちも長い竹を縦半分に割る作業から支柱づくりまでお手伝い。みんなで作ったそうめん台でいただく流しそうめんはこどもたちにとっても、一生の思い出になったようです。そうしてお昼までの約4時間、里山を感じながら、ゆったりと時間を過ごし、全行程が終了しました。

最後は、外で地域スタッフの方とHSBC社員で車座になり、2日間の振り返りをしました。

(HSBC社員・家族の方の振り返りを、許可いただいて抜粋・掲載します)

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・自然とのふれ合いに加え、地元の方々との交流が素晴らしかったです。星空観 察会、キャンプファイヤーと普段経験の出来ないことを子供に体験させること ができ、こどもの教育にも素晴らしい企画でした。移住したいくらいです。

・想像していたローカル地方での生活が、中川村に来たことにより、より深く理 解することができた。今後、人生を豊かに生きるためのヒントになると感じま した。貴重な体験ができました。

・地元の方もとても熱意を持ってこの村をアピール・活性化しようとしているの が感じられました。顔の見える野菜をHSBCファーマーズマーケットとして ときどき、オフィスに売りに来ていただけたら。継続的なやり取りをしていき たいです。ありがとうございました。こどもにも野菜の出来るまでの過程を見 て、自発性が感じられ、なにか大きくなった時に残るものがあればいいと思い ます。

・HSBCでこのようなすばらしい機会をつくっていることに改めて感謝。(社員と して)担当者をもっと応援・バックアップしたい(車座での口頭振り返りより)

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HSBCは、これまで7年間で100回を超える社員の環境保全・教育ボランティア活動を実施してきています。そんな経験豊富な担当の大畑さんも今回の内容について、「期待以上の内容だった。受け入れ体制がしっかりしていたので、安心してお任せできた」とのこと。

すでに帰り際に新たなプロジェクトのコラボを考えているようで、地域も都市も共生する一歩が着実に進んでいることを感じた気がしました。

NPO伊那里イーラの下平理事長ご自身も、「まずは喜んでもらえてうれしい、これをきっかけに農村を身近に感じてもらい、いろいろな機会で、都市との共生を考えてもらえれば」と仰っていました。

これを一回限りのよい体験で終わらせないようにするには、HSBC社員の方の振り返りにヒントがあったような気がします。主体的にどれだけ体験し、またその時どれだけ多くの時間、現地の方や社員とコミュニケーションできたかで、ひとり一人が、農村と都市企業との共生について長いスパンで考える機会になるのかもしれないと思いました。

今回のようすは地元メディアにもとりあげられました。長野日報:都市企業の「ふるさと」に 東京から47人農業体験・中川(更新:2014-8-4 6:00)
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=31970

信州伊那里自給楽園とHSBCは、イーズ未来共創フォーラムメンバーでもあり、そのつながりから、今回の共創を生むことができました。とてもうれしく思っています。このように、さまざまな活動主体をつないだり、相互の活動を応援・サポートができるような役割をしっかり担っていきたいと思います。

信州伊那里自給楽園での農業体験や社員研修・環境教育などにご興味のある方、ぜひご連絡下さい。おつなぎいたします~! また、さまざまな業種やセクターの60近い社・団体主体者が参加して、学びつつ、つながりをはぐくんでいるイーズ未来共創フォーラムにご興味のある方もぜひご連絡ください。

次回の異業種勉強会は10月27日(月)大阪で開催します。オブザーバー参加(1社・1回限り)もできます。
http://www.es-inc.jp/network/forum/2014/nwk_id005366.html

東京での次回開催は11月です。テーマは「環境コミュニケーション」の予定です。ご興味のある方、ご案内を差し上げますので、ご連絡下さい。

各地でいろいろなつながりが生まれ、ひとつの組織・地域ではできないことを生み出す「共創」の事例が広がっていくことを願っています。

 

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