最近、企業からいただくご相談が増えています。海洋プラごみ対策やコミュニケーション、社員の行動変容などに関するご相談もありますが、ここ数ヶ月は圧倒的に気候変動対策についてのご相談が多くなっています。
前号でも書いたように、管首相のカーボンニュートラル宣言が「脱炭素競争!」の号砲となり、業界を問わず、企業の脱炭素の動きが急激に活発になっています。本日就任式を迎えるバイデン氏が大統領に就任すれば、米国の動きも急激に加速し、先を行く欧州や中国もさらに先に行く動きが出てくるでしょう。
日本企業もグローバルな脱炭素競争に勝ち残っていかなくてはなりません。しかし、足元では? コロナ禍に苦しんでいるのは他国も同じですが、欧米のように、コロナ禍からの経済回復と脱炭素を重ねていくという、グリーン・リカバリーやグリーン・ニューディールを促進する動きもあまりなく、コロナ渦以前からの人口減少や高齢社会、地方の疲弊などの課題もますます大きくなりつつあります。
2021年は、どの企業や組織にとっても、いろいろな意味で難しい舵取りが必要とされる年になりそうですね。どこを見て、何に向かって、何に気をつけて進んでいけばよいのでしょうか。これまでの連続線上に未来がないことが明らかな今、生き残る企業と生き残れない企業の差はどこから出てくるのでしょうか。
50社ほどのパートナー企業・組織と行っている異業種勉強会では毎年、年が明けて最初の回は私が講師役となって「この1年をどう展望するか」をテーマに、自分の見立てや考えをお話しし、みんなで議論する回としています。
今年は1月27日にオンラインで開催します。上記のような問いに対する自分なりの考えをお伝えできればと思っています。パートナー以外の方もオブザーバー参加していただけますので、よろしければぜひ一緒に考えてみませんか。
詳細とお申し込みはこちらからご覧下さい。
第65回 2021年・年初に考える~これからの時代をどう生き抜くのか(2021年1月27日(水)オンライン開催)
さて、昨年12月に、恒例のアンケート「2020年を振り返って~持続可能性に関わるアンケート」をお願いしました。200人近くの方々が回答を寄せてくださいました。ありがとうございました! 結果をお伝えしたいと思います。
環境問題やSDGsなどに関心の高い方々がどのように見ているか、感じているか、ぜひご覧下さい。
~~~~~~~~~~~~ここからアンケート結果~~~~~~~~~~~~~~~
(1)2020年を振り返って、以下のそれぞれについて、どのように感じています
か?それぞれ選び、そう思った理由をいくつでも挙げてください。
a.地球環境
良くなった:1%
少し良くなった:25%
変わらない:17%
少し悪化した:20%
悪化した:37%
○「悪化した・少し悪化した」と思う理由
台風など自然災害や異常気象の増加(59人)
コロナ禍の悪影響(20人)
プラスチックゴミ問題(8人)
生物多様性の喪失(5人)
○「少し良くなった・良くなった」と思う理由
コロナ禍による経済停滞(39人)
b.世界の持続可能性への取り組み
良くなった:6%
少し良くなった:47%
変わらない:23%
少し悪化した:12%
悪化した:12%
○「悪化した・少し悪化した」と思う理由
コロナ禍の悪影響(23人)
自国第一主義(9人)
○「少し良くなった・良くなった」と思う理由
SDGsの盛り上がり(17人)
米国大統領の交代(15人)
危機感の高まり、意識の変化(13人)
コロナ禍での良い変化(9人)
ESG投資(8人)
グリーンリカバリー(7人)
報道内容の変化(7人)
日本政府の2050年脱炭素宣言(7人)
c.日本の持続可能性への取り組み
良くなった:4%
少し良くなった:42%
変わらない:29%
少し悪化した:11%
悪化した:14%
○「悪化した・少し悪化した」と思う理由
コロナ禍の悪影響(16人)
原発依存、再稼働(7人)
菅政権の姿勢(6人)
○「少し良くなった・良くなった」と思う理由
政府の2050年脱炭素宣言(45人)
SDGsの浸透(13人)
企業の取り組み(6人)
(2)2019年の「持続可能性に関わる10大ニュース」を選ぶとしたら、どのようなものが挙げられるでしょうか?
※挙げられた順位に関わりなくカウントしました
コロナ禍(109人)
日本政府の2050年脱炭素宣言(82人)
米国大統領の交代(64人)
地球温暖化の影響(森林火災、異常気象、豪雨災害など)(50人)
プラスチック(レジ袋有料化、海洋プラゴミ問題など)(45人)
SDGsの取り組み(34人)
EVシフト、脱ガソリン代車(28人)
食(食品ロス、農業、海洋資源など)(28人)
テレワーク、生活様式の変化(23人)
米国のパリ協定復帰、環境政策転換(16人)
中国の動向(16人)
3R、循環経済(15人)
再エネ関連(14人)
原発関連(13人)
生物多様性(12人)
(3)2020年、持続可能性に関わるどのような動向に注目しますか?
エネルギー関連(再エネ、蓄電池、水素など)(67人)
脱炭素社会、エネルギー政策など(59人)
食(食品ロス、農業、海洋資源など)(43人)
コロナ禍の行方(38人)
プラスチック問題(海洋プラゴミ問題、脱プラの動向など)(24人)
米国、バイデン政権(22人)
SDGsの取り組み(21人)
EVシフト、脱ガソリン車(21人)
地域の取り組み(21人)
原子力発電関連(18人)
政治や行政の動向(18人)
気候変動、自然災害(17人)
テレワーク、働き方(15人)
人権、共生社会(15人)
(参考:回答者の属性)
男性:62%
女性:37%
回答しない:1%
20代:4%
30代:9%
40代:19%
50代:28%
60代:26%
70代:12%
80代:2%
北海道:8%
東北:2%
関東:49%
中部:12%
近畿:16%
中国:4%
四国:2%
九州:6%
海外:1%
~~~~~~~~~~~~~アンケート結果ここまで~~~~~~~~~~~~~~~
改めて、アンケートに答えてくださったみなさま、ありがとうございました!
管総理のカーボンニュートラル宣言、バイデン氏の大統領就任が好感されていることがわかります。
ただ、「宣言」も「就任」も型でしかありません。大事なのは「実」をどうしていくのか、ですよね。
[enviro-news 2772]バイデン氏の気候対策に関する選挙公約(2020.11.08)
で書いたように、バイデン氏は、選挙公約のなかで、気候変動に対して、数十ページにわたる詳細なプランを述べています。具体的な実弾をいっぱい持っての登場!です。
THE BIDEN PLAN FOR A CLEAN ENERGY REVOLUTION AND ENVIRONMENTAL JUSTICE
一方、管総理のカーボンニュートラル宣言は、政府の中からも「寝耳に水でびっくりした」という声が聞こえてくるほどで、具体的な「実」はこれから大急ぎでつくっていくような感じです。政府内のいろいろな動きも随時お伝えしていければと思います。
「環境NGOの戦う場と戦い方」も変わっていくのでしょうね。企業や産業界、政府が自ら進もうとする時代が到来したとしたら、環境NGOにはどのようなあり方が求められるのでしょうか。どのような活動をしていくことが社会と自分たちのミッションに資するのでしょうか。
2021年――いろいろな意味で大きな転換の年になりそうです! その転換を少しでも良い方向にプッシュできるよう、自分には何ができるのか、何をすべきなのか、考え続けていきます。