開催日 | 2016年5月13日(金) |
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対象 | イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま、オブザーバーとしてご参加の企業・団体の皆さま |
ゲスト | 沖 大幹 さま |
ファシリテーター | 枝廣 淳子 |
参加人数 | 26社・団体37名 |
今年1月に公表された、世界経済フォーラム(いわゆるダボス会議)でのグローバル リスク報告書(2016年度)によれば、今後10年で懸念されるグローバルリスクの第1位が「水危機」です 。今後の企業経営にとって大きな課題となるで あろう「水」について、現状と世界の動向を知り、しっかり考えなければなりません。
今回、水問題に関する世界の第一人者である、東京大学 生産技術研究所の沖 大幹先生をお招きして、地球の水循環システムや水文学(すいもんがく)(※)の視点から、企業の水リスクと備えの最新動向、そして社会経済の視点からの「水」についてお話しいただきました。
業種業態によって関わり方が大きく変わる水。沖先生の新刊本『水の未来――グローバルリスクと日本』を基礎にして、水不足解消への手立て、洪水のリスクに備えること、海外進出の際に認識しておかなくてはならないこと、ウォーターフットプリントやLCAの必要性など、水を軸にあらゆる視点からお話をうかがい、ディスカッションしました。
(※)水文学(すいもんがく)とは
地球上の水循環を考える学問。地球規模の水資源の循環、森羅万象について。
一例)
沖先生にもご講演前に課題について見て頂きました。
東京大学生産技術研究所教授 沖大幹先生
水の問題は確かに深刻だが、歴史的にみて、今まで乗り越えようと思って行動し、結果として乗り越えてきた。悲観論者の言い分が間違いになるように、みんなで努力していくことが大事ではないだろうか。地震、食料、エネルギー、世界同時不況、気候変動、核戦争など、水を含めてさまざまなリスクが存在するが、どれにもしっかりと対応する必要がある。リスクを全てゼロにする投資は不可能なので、リスクは受け入れていくという認識が必要である。
水道水の単価は非常に安く、1トンで約1ドル。これほど安いものはなく、ダムを作って水を貯めるのに莫大なコストがかかる上、かさばって重いこともあり、輸送コストもばかにならない。それなのに大量に消費するので、遠方に輸送するのは割に合わない。水は運べないし、食べることができない。ある地域で渇水が起きても、他の地域で節水したかといって解決にはならない。故に「水はローカル」なのである。
生物として必要な水の量は、1人1日2リットルあればよい。ところが、実際に使用している水道水はその100倍。
風呂、洗濯、皿洗い、トイレなどで大量に使っている。水を利用する目的は、生命を維持することではなく、実は尊厳を持った人間らしい生活を送るために使っている。つまり、水を「量」ではなく「質」を得るために利用しているのだ。
水の供給能力がないと、水が足りなくなる。インフラをきちんと整備し、しっかりと管理すれば水は足りる。雨が増えたから、水が足りているわけではない。今、水が足りない地域とは、政情が不安定でインフラの整備ができていない場所だ。
企業活動が大きくなるにつれ、環境への負荷が甚大になり、対応がせまられる状況になった。環境への負荷を小さくする取り組みとして、さまざまな指標が誕生した。なかでも水に関する指標で代表的なのは、ウォーターフットプリント、LCA、バーチャルウォーターだろう。
ウォーターフットプリントとは、カーボンフットプリントと同様、地球環境にどれくらい負荷をかけているかを測るもので、その数値が大きいほど環境への負荷が大きいことを示す。ただし、ウォーターフットプリントの推計方法は、さまざまあってまだ統一されていない。製品などを生産するために使用した水の量を評価するだけでなく、水の「豊富な場所/稀少な場所」のどちらで取水したものなのか、クリーンな状態で排水しているか、なども評価の対象にする必要性があり、現在は評価軸の策定に尽力しているところだ。
<洪水>
災害対策として「洪水」について備えようという考えは、日本であまり洪水が発生しないために意識が希薄だが、海外(特にインフラ整備や災害対策があまりできていない場所)に進出する際には、経営層の危機意識とともに洪水対策が必要である。
<風評リスク>
大企業は悪であるという風潮が、いまだに存在することがある。ある国に飲料工場を造ったが、やがて水不足が起きた。近隣住民は工場が大量に水を搾取したせいで水不足になったと噂したが、実際は多数の住民が水を使用したために水不足が起こった。その土地の人々にとってみれば、自分たちの資源を奪っているという感情が理論よりも先にたつ。水に関して企業は、こうしたリスクも起こりうることも想定に、特に慎重に取り組んで対応しなければならない。
< グローバル企業自体の意識変化>
以前は、政府に環境規制を甘くして欲しい、というおうかがいを立てていたが、今や環境保全を積極的に参加・対応していくほうが、長期的な投資を考える上で重要と考える企業が増えてきている。その中にはCDPをはじめ、さまざまなプライベートスタンダードが立ち上がったことや、投資家の関心の変化が大きな一因にある。
20世紀前半は、干ばつが原因の飢饉で死亡する数は、数千万人規模にのぼった。だが、20世紀後半になると、飢饉の件数はあまり変わらないのに、死者数は激減している。
降雨量の多いときと少ないときで、穀物の収穫量に変化がある地域は、生産が安定しない。だが、水の量が少ない国でも、経済的に豊かであれば他国から食料を輸入すればいい。水はローカルであることを考えれば、バーチャルウォーターの輸入は、食料不足を補える。
飢饉は、天気まかせで食料を生産しているような、しかも経済的に貧しい国で起こっている。こうした国は農業だけに頼らずに、他の産業でキャッシュを稼ぐことを早急に考えていかなければならない。
グローバル企業の水への関心が高まった理由のひとつは、関わっている第三国での影響が、すぐ自分たちに返ってくるようになったからと考えられる。トリプルボトムライン(経済・環境・社会)を軸に、バランス良く持続可能性を考えることが重要だろう。
水問題は解決可能。水だけではなく、さまざまな問題に同時に取り組んでいくことが、持続可能な世界につながる。「未来は「どうなるか」ではなく、「どうするのか」の問題」なのである。
3.<グループディスカッション>
沖先生のお話を受けての感想や意見、さらに聞いてみたいことについてグループディスカッションしました。
その後、沖先生と枝廣の対談形式で、回答を頂きました。
Q.気候変動で降雨量が変わることが、グローバル水リスクを大きくするということに対し、企業はどれくらい意識するべきでしょうか?
Q.グローバル水リスクを、逆にビジネスチャンスにしている企業はありますか? 新しいビジネスは?
Q.風評リスクについてですが、逆に一般の人たちが企業に良いイメージで認識を持っていれば、企業は動きやすいと思うのですが、いかがでしょうか?
4.<パートナーさまよりご案内>
会場提供をいただいた、昭和シェル石油さまより活動のご案内、彩生舎さま、日本経済新聞社さまからイベントのご案内をいただきました。
米国オレゴン州のポートランドへ出張で赴いた際の報告をしました。ポートランドで取り組んでいるエシカルな消費や持続可能な消費などについて、スライドをお見せしながら説明しました。
今回開催のフォーラムについて、彩生舎 西村さまのブログでもご紹介いただきました!(リンクからご覧ください)
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懇親会のようす@昭和シェル石油さま社員食堂
次回は7月20日(水)開催を予定しています。テーマは「企業の環境・CSRを考える:学生との意見交換会」(東京都市大学環境学部枝廣研究室との合同ゼミ)です。
参加された方の声から
☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか☆
企業の視点でのグローバルな水リスクについて情報を得ること。
水の問題を気候変動、エネルギー、燃料などの視点から、自社に自分にどうかかわっているのか、ヒントを得たい。
企業が何すべきか、何が出来るかという点を知りたかった。
「水」のリスクについて、あまり勉強をしたことがなかったので、学びたいと思っていました。
水についての意識を高めたいと思っていた為。最近「水リスク」について聞かれることが多い為。
他社の水リスクに対する問題点や考え方、LCAにおける“水”の位置付け。
新たな事業の開拓につながる情報、ネットワーク。
日本企業が水リスクに対して中長期的に取り組むべき事は何か、が明確になること。
水リスクの問題、企業の取り組む理由を学ぶこと。
水リスク、他、自分の業務課題解決のヒントを入手する。
異業種の方との交流、情報交換。
企業(事業会社)さんが水リスクに対してどのような捉え方を行っているか知ること。
当たり前にあると思っている水のテーマについて知りたいと思いました。
ウォーターフットプリントの進歩。
水リスクの現状や世界の状況を知ることで、自分の業務のイメージをつける。
水への健全な危機意識。
社会的に水事情が今後どのように変化するのか学びたかった。
以前、ウォーターフットプリントについて知り、その後何らかの取り組みが進んだのか知りたかった。
水リスクを踏まえて、自社で取り組む課題を見つけ出し、方向性を把握したい。
海外の水リスクの事業への影響。
☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください☆
多角点に水リスクに何云、勉強になりました。
とても勉強になりました。ウォルマートの取り組みやLCA、気候変動等、まだ勉強不足であることを感じたので、本日いただいた本を読んで勉強したいと思います。
本の内容に沿ってご説明頂いたので、大変分かりやすかったです(事前に少し読んでおりました)。
異業種での意見の出し合いは、普段気付かないことも見えて、大変参考になった。
沖先生より、たくさんの知識を学ばせていただくことができ、大変よかったです。
「水」単体で考えない、という当たり前のことがわかった。
水リスクのレベル感を皆が共有できるのだろうか。楽観、悲観、どちらも間違っていないような気がした。
水リスクの事実が客観的に明示されたこと。
大変勉強になり満足しています。こぼれ話的なお話が良かったです。
水リスクの問題、企業の取り組む理由がわかりました。
沖先生、枝廣氏、shellさん発表他、グループディスカッションにて専門的な情報~異なる視点まで入手できた。
地球規模の水リスクについて考える良い機会となった。LCAは改訂ISOで考え始めたところだが、業種によっては以前から常識だったりする事もある。
ウォーターフットプリントの概念の詳細を紹介いただけたのが良かった。
企業側もわりと手探り状態だというのが判明した。
ウォーターフットプリントや仮想水輸入量など、今まで考えたことのない視点に気づかされた。
考えながら進められる進行がよかった。
コンサル会社の話を聞く機会が今までは多かったが、また違う観点での話を聞くことができてよかった。
環境影響の定量化、指標のイメージが難しい。
バーチャルウォーター、ウォーターフットプリント、ISO、WFPを比較するのは分かるが、それで何なの?という感じ。
テーマが多彩ですべてを追いかけきれなかった。
沖先生のお話が大変興味深かったです。「水はローカル」「日本が水不足になりにくいのはインフラが整備されているから」等。
普段は殆ど全く関わりの無い業界の方(水商社の方、建築コンサルの方、NGOの方、など)とお話できたことで自分の勉強不足が分かるとともに、新たな知識を得ることができました。
沖先生の話はとても面白く、有為でした。質疑応答では、枝廣さんの質問は面白くもありましたが、企業視点でいえば参加者からの質問もとってほしかたです。
視点が多かったのか、幅が広かったのか、話の展開が早くて少し付いていけませんでした。
ウォーターフットプリント自体の概念は世界で進んでいるようだが、国内ではまだまだと思った。水は「質」を使っている(確かに気づきにくい盲点でした)。
他社の関心事が大体同じであることが分かった。
もう少し、企業観点での取り組みを共有できたら良いと思う。
基本的には環境負荷低減、LCAで総合的にやればいいことがわかった。「水地球環境問題特別研究会」の存在を知ったこと。
自分の勉強不足から、期待していた内容についてあまり理解できなかった。
☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください☆
自社の水リスクの特定、今後の計画に生かしていきたいと考えております。
私どもは途上国の水問題と取り組むNGOなので、今後企業とパートナーシップを構築していくために活用したいと思います。
水はローカル、今までなんとなく感じていたことが論理的に明確になりました。これらを含め、なるほどと思われたことが多くありましたので、1つでも多く社内のメンバーに伝え、水に対する認識を深めて行きたいと思います。
水リスク評価の施策を実現したい。
自分の会社において、なにか「水」について変えられることがないかどうか、考えてみたいと思います。
皆さんが同じように手さぐりだとわかったので、他社さんの動きも参考にしていきたい。
会社に持ち帰り、水の問題をどのように伝えるか、悩ましいところです。カーボンもほとんど対応できていないので。
問題の共有、リスクの共有、志向の共有が難しいと思うので、どこに力を入れるべきかが、多少クリアになった。
ウォーターフットプリントと紙については社内で勉強していきたいと思います(今は森林認証対応で大忙しです、早めの対応が必要ですね)。
部署で共有、自分の業務課題解決に活用。
国内だけでなく、海外からの影響を考慮しながら、企業BCPの見直しに活用したい。
水の課題をどうビジネスチャンスにつなげるか考えたい。
水リスク評価業務を行うことにあたっての土台になった。
技術部門に、自社で使用している水の水源の場所と数を確認したいと思います。
今日、分からない単語が沢山あることに気付きましたので、そこから復習したいと思います。
今後の水戦略に役立てたい。
LCA、CDP、CDP waterの活用。
将来のビジョン、活動目標の立案。