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第62回 コロナ禍に考える、経済と環境の両立の実現~EUタクソノミーから学び、日本企業のチャンスにつなげるには(2020年9月9日(水)開催)

2020月08月05日 更新
開催終了レポート
 
開催日 2020年9月9日(水)
対象

イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま、お試し参加希望のみなさま

ゲスト

・CSRデザイン環境投資顧問株式会社 代表取締役社長
堀江 隆一さま

ファシリテーター

枝廣 淳子

参加人数

16社・団体19名

開催レポート

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コロナ下で先が見えず浮き足立つ中、集中して前に進むことが難しくなっています。

しかし、だからこそ今学びを止めてはならないと考えています。

時代的にはチャンスでもあり、平時ではなかなか変化を作り出すことが難しかったことが、今ならしがらみや構造に縛らずに変えられることもあるでしょう。

EUでは、もともと温暖化・環境については競争力の源泉としていて、環境政策でありながら産業政策として進めてきているという歴史があります。コロナ下でのグリーンリカバリーやSDGsなどの動きもその一つです。

本日のテーマの「タクソノミー」はその中でも一番新しいかたちです。私たち日本企業がグローバル経済の中で生き残っていくためには、世界の潮流をしっかり捉えつつ、社会や自社のあるべき姿をバックキャスティング的に考えると同時に、どうやって進めていくべきかを考えていかなければなりません。

異業種勉強会に参加する皆さんの中には、海外と繋がり、こうした大事な動きを社内に伝える役割の方も多いと思います。

今日の議論を通じて、ご自身がタクソノミーを理解するのと同時に、タクソノミーの位置づけや意味をどう社内に伝えていくのか、そしてどう企業の行動につなげていくかも合わせて考えてもらえたらと思います。


1.問題意識の共有(グループディスカッション)

・自己紹介~参加の理由、内容への期待

・タクソノミー含め、環境・社会・SDGs等 課題、不安、知りたいことなど

<参加者のみなさんからのシェア(一部抜粋)>

  • EUタクソノミーは非常に厳しい基準と聞いていますが、EUは本当に実現できると考えているのか?現実性はどうでしょうか?
  • 今日学びたいこと--タクソノミーによって世界のビジネネス・金融環境がどう変わっていくか、それが社会に、そして日本にはどんな影響を及ぼすか、を知りたいと思ってきました。タクソノミーの戦略的な意図と、本質的に目指している未来の両方を知りたいと思います。
  •  グローバルな動きとフィールドとしての地域の課題解決策とのギャップ、特にグローバルマネーの方向性と地域金融の意識とのギャップが障壁となっている!
  •  環境に興味のない社員の心を動かすには経済効果について教えてあげることが有効なのではないかと思い参加しました。伝えたら良いポイントなどありましたら、ご教示お願い致します。
  •  プラスチックを例に挙げると、日本はバイオ・再生プラの活用がメインストリームになっているが、EUは使用に罰則を設けたり捨てさせない仕組みを作ったり、洗濯で流れるマイクロプラスチックを問題視してきています。日本は周回遅れです。タクソノミーに関してもEUの動きにキャッチアップして遅れないか気になります。

2.ご講演 『コロナ禍に考える、経済と環境の両立の実現~EUタクソノミーから学び、日本企業のチャンスにつなげるには』

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CSRデザイン環境投資顧問株式会社 代表取締役社長
UNEP FI 不動産WG アドバイザー 堀江 隆一さま

本日はタクソノミーの話とともに、それにより日本企業がどのように影響を受け、どこにビジネスチャンスがありうるか、議論の話題提供ができればと思う。

◎ESGを巡るうごき

【背景①】ESG投資がメインストリームに

昔「なぜESG投資をするのか?」

  ↓↓↓

今「なぜESG投資をしないのか」を説明しなければならない時代

【背景②】世界の経営者が注目

【背景③】長期投資に軸足が動き始める

【背景④】公的・政府セクターによるESGの推進

◎EUタクソノミー

<EUアクションプランの目的>

  • 資本の流れをサステナブルな経済に振り向ける(グリーンエコノミー)
  • 気候変動等への財務リスクを管理する(TCFDを意識)
  • 財務・経済活動の透明性や長期主義を促進する

 <EUアクションプランの内容>

タクソノミーの確立は、その他のアクションプラン全てに関わるため、最重要項目と位置づけられた。

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<タクソノミーとは>

「環境に良い活動とは何か」を示す分類

【目的】企業が「グリーンである」という定義の一貫性がなかったため、投資家がこれまで判断がすることができなかった。グリーンウォッシュの可能性もあり、それを防止するために真のグリーンを定義する。

<EUタクソノミーにおける定義>

経済活動は、以下4項目をすべて満たした場合、環境面でサステナブルである

1.6つの環境目的の1つ以上に実質的に貢献する

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2.6つの環境目的のいずれにも重大な害とならない(DNSH)

例)気候変動への緩和に資すると言うことで、太陽光発電を作るために森林破壊をしていないか

3.最低安全策(人権等)に準拠

4.専門的選定基準を満たす

現在は、「緩和」がメイン。水資源以降の内容の議論はこれから

<ポイント>EUタクソノミーの策定にあたっての考え方

  • タクソノミーは、2050年にネットゼロエミッションを達成することを目標として作成される
  • タクソノミーの基準は、将来的に徐々に厳格化されるべきものである
  • 現状ではまだ低炭素でないものも含み、ブラウンからグリーンへのトランジションをサポートする
  • ライフサイクル全体を考慮する

< EU以外のタクソノミーの検討>

カナダ、マレーシア、中国など(現実に即した議論はカナダやマレーシアなどは行っている)

コロナ禍とグリーンリカバリー 更新版サステナブルファイナンス戦略の焦点

<焦点を当てる3分野>

  • サステナブルな投資の基盤の強化
  • 市民、金融機関、企業によるサステナビリティにポジティブインパクトを与える機会の増加
  • 気候・環境リスクを金融全体のリスク管理とどう統合していくか

そのほか、社会的インパクトを意識した投資の概念、投資のスペクトラム(ESG投資とインパクト投資)、日本国内の事業におけるインパクトニーズなどについて詳しくご紹介をいただきました。

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3.グループディスカッション・共有・質疑応答

※こちらでは質問のみ記載

Q:EUタクソノミーが進む中、日本政府はどう動いているのか? 日本企業が対応できるように動いるか?

Q:タクソノミーは気候変動を軸にして動いているけれど、生物多様性やサーキュラーエコノミーはどういう基準で今後進んでいくのか?イメージがつかない

Q:日本のスケジュールが見えていない。どうして遅れているのか?

 

<各グループからのシェア(コメント)>

【グループ1】

企業として目標を立てる時に、国が指針を出してくれないと動けない。バックキャスティングをするにしても、解決策が出ていないと、なかなかできない。国によって不利な事、ローカルな条件が無視されていってしまうというのは意識している。

【グループ2】

生物多様性について主に話した。6つの内、1つしか決まっていないのか。一般的に取り組みにくいのが生物多様性だ。基準ができると、一歩前に進みだすのではないだろうか。

【グループ3】

タクソノミーが、いずれグローバルスタンダードになる。日本はタクソノミーがかかげている「あるべき姿」を目標にするのが苦手である。「目標達成が可能」という基準から目標を設定する日本の気質は、変わらない。環境関連に対して、まわりを見ると温度差がある。グローバル企業は、それでも変わらざるを得ないと思う。事業は、サステナビリティも一緒にしたゴール設定にしないといけないが、現場では利益を追わないといけないこともあり、ギャップがある。

【グループ4】

市民の意識が政府を動かし、企業を動かすというお話を受け、日本の市民の意識はどうなのかという話になった。食品関係の方からは、瓶だった商品を紙パッケージにしたところ好評を得ているという話がある一方、住宅関係の方からは、ゼロエネルギー住宅の販売は伸び悩んでいるという話をお聞きした。

消費行動からは意識の変化はみられるけれども、社会的な意識が堅調になりつつある過程という印象がある。

タクソノミーを定めたEUについては、市民に社会的な商品やサービスの選択肢が多いことと、教育で社会的な意識を育む意識が高いことがベースとしてあるのでは、という話が出た。

4.枝廣の締めのコメント(皆さんの発表を受けて)

  •  目標設定と社内への伝え方

いろいろな目標が、いろいろな時間軸で出ているため目標設定が複雑で難しくなっていると感じる。市場も日本だけでなく、欧州や米国、そしてアジアなどそれぞれに合わせて目標を作っていく必要があるが、全社的にはどうしていくのかも合わせて考えていかなければならない。

タクソノミーでも今後の気候変動以外の内容は、トレードオフの関係になってくると思われる。

例えば、「環境に重大なダメージを与えない」という活動のタイプでも、その「重大な」というのはどのような定義で、どう測るのか。そこは今後の推移をきちんと見て把握していく必要がある。

 異業種勉強会に参加する皆さんは、こうしたさまざまな外部の情報や重要な動きを社内に伝える立場の方も多い。皆さんが論理、根拠をしっかり組み立てて「『我が社』としては、こういう時間軸で目標を設定していかなければならない」と社内に伝えて変化を促し、議論していくことが必要になってくる。

  • 目標を実現していくために

日本はこれまでの経験からできることを積み上げていく「フォアキャスティング」型の目標の作り方だった。しかし、20年後、30年後、50年後の中長期を考える時には「バックキャスティング」型で、あるべき姿を描いていくべきで、それにはまず各企業がこれまではどういう方法で目標を立てて実現してきたのかを振り返り、今後もその目標の立て方で本当に通用するのかを考えなければならない。


※当日のようすはイーズのサイト「エダヒロの共創日記」でもご紹介しています。

オンライン異業種勉強会を開催しました!

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      (当日のようす)

参加された方の声から

☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか☆

・EUタクソノミーの理解と日本・自社への影響

・タクソノミーについては詳しいことがわかってないので、この辺りをしっかり学びたい

・そもそも「タクソノミー」の概念とここまでに至った経緯

・生物多様性での基準についてある程度議論がされているのではと思い参加いたしました

・新しいフレームワーク(タクソノミー)を知る

・EUでの動向についての情報

・環境に関心のない社員を動かす経済への効果情報を得たかった

・タクソノミーの基本的なこと、最新情報を知る

・EUタクソノミーの欧州での進捗状況


☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください。☆

・堀江さんのご説明が包括的かつ詳細は簡潔で非常にわかりやすかったです。一枚目のスライドは、これまでカオスだった私の知識が整理されました

・堀江さんの話が体系づけらえてとても分かりやすかった。INDEXの部分も整理できました

・この間の議論の経緯が大変分かりやすく頭の整理になりました

・オンラインで議論の時間が少ない感想を持ちました

・最新の話を分かりやすく、ご説明頂きとても有益でした。また、ディスカッションも企業の方の話を聞けて勉強になりました

・学びや気づきが多かったです。とてもスムーズな運営だったと思います

・大変網羅的にお話しいただきました。ありがとうございました

・自分にとってはレベルが高かった

・途中ついていけなくなりそうでしたが、講演が非常にわかりやすかったです

・講師の先生も専門家でよくご存じで有ったので正確な情報が得られ、非常に良かった

・非常に勉強になりました。ありがとうございました

☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください。

・当社として再度取り組まねばならない事を整理します

・活用以前に、地域社会を取り巻くステークホルダーとの意識のギャップに苦労しますが、地道に自分のフィールドからやれることからやって参ります

・社内で今日の情報を共有する予定です

・枝廣さんが言われる「あるべき姿」を、自分のいる場所で、自分の立場で行動に移していこうと改めて思いました

・やはり、会社でも個人でも発信していきたいですね

・本日お話がありました生物多様性についてのグローバル動向

・もっと環境について勉強しなければいけないという気づきになった。さらに学びたいことは社内外へのコミュニケーション方法

・EUタクソノミー自体がすぐ日本に来なくても、欧州的な考え方のトレーニングになりました。TCFDやSBTの考え方にも似ています。社内でチームに共有し今後当社が取りうる行動を検討してまいります

・社内関係者に早期に共有し、今後の方向性を考えていきたい

・社内に展開し、今後の戦略を考えていきたいと思います

次回のイベント・フォーラムの予定

次回10月28日(水)に開催します。テーマは「地方創生」「プラスチック問題」「コミュニケーション」のいずれかの内容で検討中です。詳細は追ってご連絡をしますが、ぜひ次回も奮ってのご参加をお待ちしております!

 

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