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来月7日にモロッコで開かれる国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)でのパリ協定批准国の会合に向けて、メディアからコメントを求められる機会が増えてきました。そこで、私がこのパリ協定について今年どのように考え、発信をしてきたか、あらためて振り返ってみました。パリ協定って何?? そして、日本はどうなっているの???という方、ぜひどうぞ。
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【其の1:2015年12月28日発信】
昨年、暮れも押し迫った12月28日に「COP21とパリ協定のおさらい」と題したメールニュースを発信しました。同月に開催されたCOP21でパリ協定が成立したことを受けて、それまでの動きをまとめてお伝えしたものです。
「COPとは?」からCOP21に至るまでを教科書のようにお届けしていますので、まずはこちらを読んでいただけるといいかなと思います。
「COP21とパリ協定のおさらい」 ~環境メールニュースより~
【其の2:2016年1月27日発信】
COP21では、全世界で「2℃以下」という目標を定めることになりました。ではなぜ「2℃以下」という数字なのか。国立環境研究所の江守正多さんがYahoo!ニュースの「個人オーサー」でわかりやすく解説されていたので、ご本人のご了解をいただいて紹介させていただきました。グラフや図もぜひリンク先のウェブからご覧ください。
「世界平均気温は上昇を続け「+1℃」到達:COP21の背景にある「+2℃」目標の意味とは?」~イーズ未来共創フォーラム「つながりを読む」より~
【其の3:2016年2月26日発信】
2月、COP21が開催されたパリから会議の進行をレポートしてくださっていた、WWFジャパンの小西雅子さんをお迎えして異業種勉強会を開催し、国際交渉の現場のようすやパリ協定が企業にとってどのような意味を持つかについて、具体的にお話いただきました。
協定というと難しいイメージもありますが、考え方のポイントを絞って小西さんがわかりやすく解説してくださったので、参加者の方からも大変好評いただきました。企業にとってはビジネスチャンスをどう活かすか、世界の動きに乗り遅れないようにするにはどうするか、という感想が多かったのが印象的です。小西さんのお話は、勉強会のレポートをご覧ください。
「COP21パリ協定の意味と世界の企業の動き~日本企業はどう動くべきか? ~WWFの気候変動オフィサーに聞く、COP21の現場と企業動向」~第38回 異業種勉勉強会レポートより~
【其の4:2016年4月18日発信】パリ協定で設定された「気温上昇を2℃より低く抑える」という目標達成のために必要なことは、ズバリ「化石燃料、特に石炭との決別」です。私はこれまでさまざまな媒体や書籍を通じて、繰り返しその必要性を訴えてきました。世界の動き、日本の遅れ・・・短いコラムでお伝えしたものをどうぞ。
「パリ協定の意味」~ガスエネルギー新聞「賢人の目」連載コラムより~
【其の5:2015年12月~現在発信中】
さて、1~4ではCOP21とパリ協定の基本、有識者の方々の解説、日本に求められている視点などをご紹介しました。現在寄稿させてもらっている一般財団法人ベターリビング『ブルー&グリーンプロジェクト』の連載コラムでは、それらの点を踏まえて企業が取り組むべきことなど、私の考えをお伝えしています。
ちょうど連載がスタートしたのが昨年の12月でしたので、これまで3回にわたりお届けしました(もうすぐ第4回もアップされる予定です)。全体の流れを通して把握したい方におススメです。
【其の6:そしていま・・・】
いま、私が最も危機感を感じているのが日本の動きです。
9月末にEUが「一括批准」という異例のプロセスでパリ協定を発効する運びになりましたが、当時日本政府は批准手続きが遅れていました。日本政府、経団連をはじめとする経済界の皆さんに向けて、私は危機感を訴えました。
「パリ協定」発効目前の今、経団連のすべきこと~Yahoo!ニュースより~
そして、10月20日現在、日本はまだ批准に至っておらず、来月開かれるCOP22に締約国として参加できないことになりました。日本は議決権や発言権がない「オブザーバー」として参加することになります。
発効後の国際的なルールづくりに日本が参加できないということは、グローバルな土俵で戦わざるを得ない日本企業にとっては大きな痛手です。パリ協定に限ったことではありませんが、環境問題という一面だけでなく、経済・産業対策、国際社会の一員としての役割といった全体としてのつながりを見て、動きを読む姿勢が今後も重要になるでしょう。
日本企業も政府を頼ってばかりはいられません。自分たちがすべきことは何か、世界に遅れをとらないためにも最新の動きや情報を得ていく必要があります。私もあきらめずに次の一歩、いや2~3歩先を考えていきたいと思っています。
さかのぼること約1年前になりますが、昨年12月のビジネス情報誌『エルネオス』では、COP21を前に、私は日本のリーダーシップの発揮を訴えていたのですよね。
「COP21に向けてのリーダーシップを!」(PDF)
~ビジネス情報誌『エルネオス』「枝廣淳子の賢者に備えあり」連載コラムより~
状況は変わってしまいましたが、私の考えは変わりません。
目の前の短期的な解決策だけでなく、そして温暖化対策は余裕ができてから、ではなく、中長期の時間軸で、気候変動への取り組みを考えてほしいと願っています。もし取り組まなかったとしても、温暖化も世界経済も進行していきます。だとしたら一日でも早く、私たちも動かない理由はありません。
【其の7:こちらも大事!】
パリ協定と同じく大事な動きがもう一つ、昨年9月に国連サミットでありました。持続可能な開発目標(SDGs)が国際社会の合意となったことです。こちらもぜひ注目しておいていただきたいので、最後にご紹介させていただきます。
SDGsがどのような背景で作られたのか、バラトングループの仲間でもあるアラン・アトキソン氏らの「17goals」というサイトをメールニュースでお伝えしました。
持続可能な開発目標(SDGs)がつくられた背景~環境メールニュースより~
日本の動きを世界に発信するJFSでは、SDGsのサイトを立ち上げ、日本の最新情報や政府の取り組み、JFSの関連記事を紹介しています。
JFS:持続可能な開発目標(SDGs)サイトより
http://www.japanfs.org/ja/projects/sdgs/index.html
そして先日、英語版のサイトも完成しました!
JFS "Sustainable Development Goals" (SDGs)
http://www.japanfs.org/en/projects/sdgs/index.html
少しでも早く皆さんにお届けしたいと思い、まずはサイトの公開を優先しましたが、まだまだこれから情報を更新してきますので、ぜひこちらもご活用いただけたらうれしいです。
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パリ協定は、発効は「ゴール」ではなく、「スタート」です。上記のコラムなどにも書いていますが、現在、各国が出している削減目標を足し合わせても、全体の目標には達しません。今後、見直しをしながら、削減目標自体も引き上げていくプロセスが、パリ協定のしくみ自体に含まれています。
そういった意味でも、パリ協定の今後と、各国や産業界、市民社会の動きを、これからもウォッチしていってください! 私もできるだけ伝えていきたいと思います。