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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2016年09月17日

企業と地域が力をあわせて"双方にプラスを創り出す"~信州伊那里自給楽園とHSBCとの取り組み(2016.09.16)

新しいあり方へ
 

温暖化をはじめ、私たちが直面している多くの問題は、一社や一個人だけでは解決できません。そこで、「イーズ未来共創フォーラム」は、業種やセクターを超えて「共創力をはぐくむ場」を提供し、「共創のための作法と力」を身につけるお手伝いをしています。

現在50社・団体を超える企業・団体パートナーのみなさまが「持続可能な社会」の実現に向けて取り組んでいる、さまざまな事業や、CSR活動を通してのメッセージなどをまとめて掲載しています。ぜひご覧ください。
http://www.es-inc.jp/network/index.html

未来共創フォーラムの活動の中心の1つが「異業種勉強会」です。年に5回、そのときに大事なテーマを取り上げ、ゲスト講師をお招きしたりして、単に聞いて終わるセミナーではなく、自分たちでみっちり考え、意見交換し、深めていく時間を持っています。

次回の異業種勉強会は、9月29日(木)に、高崎経済大学の水口剛先生をお招きして、『ESG投資の動向 2050年のあるべき市場と経済の姿を考える』をテーマに開催します。
http://www.es-inc.jp/network/forum/2016/nwk_id008579.html

また、10月には恒例の年1回の大阪での異業種勉強会を開催します(10月13日(木)13:30~予定)。テーマは『環境CSRの日本と世界の最新動向から、自社の今後を考える』で、講師は私が務めます。
http://www.es-inc.jp/network/forum/2016/nwk_id008598.html

初回に限り、企業・団体パートナー以外の企業の皆様にもオブザーバーとしてご参加いただけますので、是非どうぞ!(詳細・お申し込みについては、それぞれのURLからご覧下さい)

この異業種勉強会の参加企業同士、企業とNGO、企業と地域の間で、さまざまな共創の取り組みが展開しています。これこそ、未来共創フォーラムを主宰している大きな目的の1つなので、とてもうれしく思っています。

その共創事例の1つ、信州伊那里自給楽園とHSBCとの取り組みの広がりをご紹介させていただきます。

~~~~~~~~~~~~ここからご紹介~~~~~~~~~~~~~~~

【経緯】
全国の地方が抱える課題、人口減少や産業衰退の悩みを同じように持つ、長野県の南に位置する、伊那里地域(宮田村・駒ヶ根市・飯島町・中川村)。

NPO伊那里イーラ(以下、伊那里イーラ)は、この地域で活動する、まちづくりNPOです。伊那里イーラでは地域を元気にするために人口を増やすことを目的とし、その前に都市との交流人口をふやそうと、2009年から200以上の交流体験プログラムを実施してきました。

プログラムの多くは自然環境に恵まれたこの地域で、農作業や環境教育、食育、田舎暮らしを体験でき、またそれに関わっているのが地元の方々が主体的に運営を担っていることです。

これらの地域のネットワークとノウハウを活用し、都市の企業と農村との交流をすすめる事業が、信州伊那里自給楽園です。

都市企業との関係づくりや、NPO・自治体・企業などセクターを超えて共に課題解決をめざすため、イーズ未来共創フォーラム異業種勉強会にご一緒いただくこととなり、いくつかの企業さまをご紹介しました。

その時、英国系金融機関HSBCグループ(以下、HSBC)が、CS(CorporateSustainability)活動の一環で、ちょうど里山保全プロジェクトの候補先を検討していたため、お互いのニーズがマッチし、2014年8月にHSBCグループ社員・家族約50名が参加する、体験プログラムを実施しました。

【初交流 2014年8月】
具体的には、1日目は地元の方によるガイドを聞きながら生き物や環境について学びながらのトレッキング、陣馬形山からの景観観察、地元野菜をつかった夕食づくり、星空観察会を行いました。

2日目は信州伊那里自給楽園でのキャベツの苗植え(HSBCでのマルシェでも販売されました)、ナスやジャガイモ収穫、竹割り体験と流しそうめんづくり体験などを行いました。

当日の詳しいようすはこちらからどうぞ
○信州伊那里自給楽園とHSBCとの共創の取り組み(2014年09月27日)
http://www.es-inc.jp/insight/2014/ist_id005372.html
○伊那里イーラさんサイト(当日のようす)
http://gqrakuen.net/blog.html&p=7

【活動結果について】
実施した里山保全活動については、参加したHSBC社員のみなさん、そのご家族からも高い評価をいただく結果となりました。

主な評価ポイントは以下のとおりです。
・魅力ある里山フィールドの提供
・季節感あふれる活動内容の提案と作業内容の作り込み
・適切な安全管理体制(小さなこどもも参加するため)
・企画を円滑に進める実務能力・臨機応変の対応力

HSBCでは社員ボランティアとして、環境保全・教育活動に長年たずさわってきた経験があるため、自然と活動内容を見る目も養われています。そのような状況でも、伊那里イーラの提供するプログラムや人びとの魅力は、期待以上の内容だったようです。

【新たな展開(1) 2015年~】
2014年の評価から、里山保全活動は、翌年から年2回の活動(1回目は田植えの時期、2回目は収穫時期)になりました。さらに、野菜の収穫時期にも併せ、HSBCの社屋で、「HSBC*信州伊那里の新米・新鮮野菜」としてマルシェで販売も実現しています。

今では、伊那里の野菜を社員食堂でも使うようになり、スムージー、おにぎり、お味噌汁といった、メニュー開発も順調に進んでいて、交流の好循環がうまれています。

【新たな展開(2)】
さらに、里山保全活動以外でも新たなうごきが2つスタートしました。ひとつは、以前からHSBCがサポートに関わっている、大阪の児童養護施設の子どもたちを伊那里地域に招いての田舎暮らし・自然体験活動と、もうひとつは、今年の夏から始まる、国内外の高校生を招いての英語/ボランティア/ビジネス体験を行う『高校生グローバル体験キャンプ』(NPO法人NICE(日本国際ワークキャンプセンター)協力)です。

ここでは、『高校生グローバル体験キャンプ』についてご紹介します。

HSBCでは、未来を担うこどもたちが、英語でコミュニケーションができるようになること、チームで課題に取り組めるようになること、そして、グローバルな視野をもった人材に育ってもらいたいという思いから、これまでも東北復興活動の一環として、2013年から、高校生グローバル体験キャンプを陸前高田市で実施してきましたが、今年は、その場を広げ、信州伊那里でも開催することになりました(2016年8月下旬)。

信州伊那里で抱える地域の課題を、地域の産業が元気になることで解決するため、高校生の視点で、信州伊那里をPRしていくことが今回の目的です。

内容としては、国内外から集う高校生約30名が参加して、信州伊那里で活動する地元企業を訪問し、経営や、地域課題について学びます。また、高校生たちの視点で商品開発をし、PR内容を日英二カ国語で考え、実際にオンラインで販売を行う企画も考えます。

2泊3日のスケジュールはすべて英語、HSBCの現役社員のみなさんが英語で高校生のマーケティングをサポート、こどもたちに必要な経験・感覚を養いつつ、伊那里の地元企業のみなさんにも新しい視点から商品を見てもらう機会にします。

【HSBCが積極的に地域投資をおこなう理由~地域の持続可能性と自社の持続可能性~】
里山保全活動から、こどもたちの教育まで、さまざまな活動を通して伊那里イーラと共創をつくりだしていくHSBC。なぜ、HSBCはこれだけ地域への投資を積極的に推し進めてきているのでしょうか。下記にHSBCの「企業の持続可能性」の概念にヒントがありそうです。この考え方について、許可を得てご紹介します。

~~~~引用ここから~~~~

HSBCでは、企業の持続可能性を「Corporate Sustainability(CS)」という概念でとらえています。

これは、まず企業として、「株主のために収益を上げ続けること」が考え方のベースがあったうえで、「お客様との長期的な関係を保ち続けること」、 「意欲ある従業員に報い続けること」、「自然環境への負荷を抑え続けること」、そして「地域へ投資し続けること」が、HSBCの企業としての持続可能性の 包括的概念ととらえています。

同時に、高収益であるだけでなく、これら全てを達成する企業責任があると考え、このうち、株主に代わって地域支援プロジェク トに投資するのが「地域への投資」であり、これが地域の持続可能性につながるものとして活動をしています。

~~~~引用ここまで~~~~

この「地域投資」、実際のCS活動を進めるうえでも特徴ある基準を設けています。

たとえば、利益水準に連動した一定額でのお金(寄付)での支援をすること、今回の伊那里イーラとの協働のように、多くの時間直接社員が関わること、また、支援先に直接の見返り(短期的な)を求めないことなどをはじめとして、いくつか基準があります。

このうち、最後の「支援先に直接の見返り(短期的な)を求めないこと」の理 由は、環境や教育支援の効果を短期間で直接的な見返りをはかっても効果が見えづらいことにあります。長期的に支援をした結果、ようやく効果として見えてく ることが多いため、そもそも短期的リターンを目的としていないことが理由です。

そしてここにはありませんが、もうひとつの特徴として、多くの社員が多くの 時間、CS活動に関わると、「社員のエンゲージメント」が高くなる、という相関関係です(ただし、これはCSの概念のなかでは、あくまで副次効果であり、 主な目的ではないため書かれていません)。 【社員エンゲージメント】年間1万時間を超える、社員ボランティアの効果は、地域の方々との交流がはじまることで、支え合い・感謝の思いがつながる、そしてそれをきっかけに社内で は、家族ぐるみでも仕事上でも部門を超えた関係性がはじまる。

また、こうした誰か(地域)の役に立つ機会を提供してくれる企業や担当者への感謝にもつなが り、さらにイキイキと積極的に会社に関わるようになる、という好循環につながっているとのことです。

この事例は、地域の持続可能性=自社の持続可能性であることを、点ではなく面で、時間軸も短期ではなく長期で考えているからこそ、「=(イコール)」として捉えて実践しつづけている、好事例といえます。

【地域としての効果】
伊那里にとってのメリットは当然ながら、こうした活動で交流人口が増えるのはもちろんのこと、信頼が高くなることで、ますます内容に深みと厚みが増し、新たな個人的なビジネスやお付き合いなど、さまざまな展開につながっているとのこと。そのような中で、長い目でみて、本来の目的である、定住人口増につながればと考えています(すでに検討されている社員もいるとのこと)。

【課題と今後】
人口減少や高齢化など、課題が似ているようで、各地域さまざまな課題があり、試行錯誤が続いていますが、こうした企業と地域の共創の芽が、全国あちこちでではじめているのはとてもうれしいことです。

私たちイーズとしても、今後も多くの企業と地域の共創事例を紹介し、お手伝いしながら、社会へのインパクトにつなげられたらと思っています。正解のない時代に、共に未来を創っていくためには今回のようなセクターを超えたつながりで、考え・実践していくことがますますだいじになっていきます。そんな「つなぐ」「つながる」事例を取り上げていきますので、ぜひ参考にしていただけたらと思っています。

~~~~~~~~~~~~ご紹介ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

地方創生が叫ばれる今日、企業が地域と組んで双方にプラスを創り出すことが求められています(単なる社会貢献では持続可能ではないので)。私たちが縁結びに一役買うことができたこの事例は、ひとつの好事例として、多くの企業や地域の参考になるのではないかと期待しています。

そして、これからも未来共創フォーラムで、たくさんの業種やセクター、地域を超えた共創事例を創り出すお手伝いをしていきたいと思っています。

 

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