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★大阪開催★『環境・CSRの日本と世界の最新動向から、自社の今後を考える』

2016月10月14日 更新
開催終了レポート
 
開催日 2016年10月13日(木)
対象

・イーズ未来共創フォーラムの企業(団体)パートナーの皆さま

・オブザーバーでのご参加希望の皆さま

ゲスト
ファシリテーター

枝廣 淳子

参加人数

10社・団体15名

開催レポート

大阪フォーラムでは毎年恒例、東京開催内容の一年間のエッセンスをエダヒロが解説し、併せて今研究しているテーマについてもご紹介し、さまざまな内容でワークを進めました。

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 1.<問題意識や課題の共有> グループディスカッション

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まず、「自社 (環境・CSR以外含め)」「自部門」「自分」について、それぞれ今一番取り組んでいるものと、悩み・課題について考え、そのなかか、悩み・課題について共有しました。

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<エダヒロのコメント>

課題、悩みを聞くと、それぞれ別の立場にも関わらず、「つなぎ方」「伝え方」など共通したキーワードが多かった。

例)他部門への働きかけ方法、何をどこまで伝えるのか、モチベーションのキープのしかた、共通認識をつくりかたなど。

  • 解説:影の統合-ユング(心理学者)

マンダムさまの自社の活動紹介のなかでの「黒歴史-白歴史」のお話から、心理学者<ユング>が説いた人間の心のありようのひとつである、「影の統合」についてご紹介しました。

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 <影の統合>

人は誰でも、二面性があり、「光」と「影」という、正反対の方向性の心をかならず持っています。そして、「光」が強ければ強いほど、「影」の部分も強く濃くなる、とユングは言います。

人と同じように所属する企業・団体についても直視しにくい、隠しておきたい部分(=影)があります。
企業や組織は外に対し「良い面や得意なところ(光)で企業ブランド(価値)を知ってもらう」活動をすると思いますが、一方で、隠したいところや直視しにくい課題(影)についても誠実に向き合い、いかに企業・組織として姿勢を示していくのか--。これが、ユングの言う「影の統合」です。もちろん、人生の午前(ユングの言う「若年期」の概念)の間は「光」だけを追っていくことも悪くありませんが、経験を重ねる人生の午後(熟年期)では、「影」と対峙して、「光」と統合していく覚悟が必要になっていくことが重要です。そういう意味で、マンダムさまがしっかりと自社の歴史に真摯に向き合ってこられたことは、まさに「影の統合」と言えるでしょう。


 2. パリ協定について

~第38回 COP21パリ協定の意味と世界の企業の動き~日本企業はどう動くべきか? ~WWFの気候変動オフィサーに聞く、COP21の現場と企業動向~

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<ポイント>

法的拘束力はあるが、削減目標は義務ではない。ただし、以下は義務とした(すべての国が参加する法的枠組みを作るため)

1)削減目標の提出

ただし、パリ協定における主要国の国別目標をすべて足しても目標の2度未満に抑える事はできないため、5年ごとに削減目標の見直しを図ることを仕組みに組み込んだ。

2)削減達成のための国内施策の導入

各国政府の政策として、「炭素への価格付け(1:炭素税 2:排出量取引制度)」がある。
価格付けの意図・目的は、化石燃料を燃やすことの真の社会的・環境コストをより正確に伝えていくため。

2014年5月の世界銀行報告書によれば、すでに価格付けを導入をしているのが、<約40カ国>。計画中は23の地方管轄区。
中国では地域レベルで7件の排出量取引のパイロット事業が進行中。2016年に、国レベルの排出量取引制度を本格展開を予定。

つまり、 世界中の炭素排出量のおよそ1/4に価格が付くことに!

 ★押さえておくべきキーワード★

  • 51 / 93 炭素:吸収量/排出量(億トン)

    自然が年間吸収できる炭素量(森林や海洋など)より、排出している量(石油・石炭・天然ガスといった化石燃料を燃焼して大気中に排出)が圧倒的に多い現実。つまり、「93億-51億トン=42億トン」の炭素が毎年吸収されずに大気に残ってしまい、溜まっていくため、これが温室効果をもたらし、温暖化を引き起こしている。

    ※IPCC第5次報告より

  • 実質ゼロ(脱炭素)

今の世の中は低炭素ではなく、脱炭素が潮流。パリ協定では、実質のCO2排出量はゼロに。世界の主流になりつつある。吸収できる範囲に押さえる。海の吸収量は減っていくため、出す量が減ると、吸収できる量もどんどん減る。

  •  1トン1万円(炭素税)

例)現在排出しているCO2排出量に1トン1万円を掛ける(※実勢価格ではありません)。今後、その費用がかかる可能性があるので、シナリオを考える。

<炭素税や排出量取引制度は経済的負担ではない ~各国の事例より~>

いずれもCO2は減ったが、経済成長に影響はないことを証明している。

【事例1】<カナダ:ブリティッシュ・コロンビア州>

2008年:1トンあたり10ドルの炭素税を導入、2012年までに1トン辺り30ドルに引き上げ。
併せて、Bads課税:悪い物に課税、Goods減税:良い物に減税を実施

【導入前】経済成長への多く影響が予想された。

【導入後】Bads課税、Goods減税の施行により、他の所得税や事業税を減税、化石燃料価格の上昇を相殺できた。ガソリンなどの石油商品の1人当たりの消費量は15%(全国値の3倍)減少、経済は国内の他の舅同じペースで成長を続けている。

 【事例2】<アイルランド>

2010年:天然ガスと石油の消費に対して炭素税を実施(同国のGHGのおそよ40%がその対象に)。

【導入後】2013年までに経済成長したが、CO2排出量は6%減となった。

 【事例3】<米国>

2009年:地域温室効果ガス・イニシアチブ(RGGI)の排出量取引制度に北東部と中部大西洋岸の9州が参加。

【導入後】電力部門の排出量18%減。9州全体の経済成長率:排出量の削減がわずか4%だった残り41州を上回る。

※データは~2013年まで

  3. RE100

再生可能エネルギー100%での事業運営を目指す企業連合のサイト。2014年に欧州とアメリカで始まり、中国・インドにも広がる。国別・地域別のなかに日本がない。

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(ワーク)CO2、温暖化、パリ協定を受けて-自分が変えたい先(経営層)への提言を考える

  • 世界の情勢と動向
  • 自社の現状、経営層の認識
  • このままいくと・・・?
  • 何が必要か?
  • メリットとデメリット

(感想の共有:一例)

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・経営層の意識を高める必要性(炭素税となると負担がいくらになるかを経営層に伝えること)。課題としては、短期的に再生エネルギーを設備投資するためのキャッシュフローへの一時的に収益の圧迫、株主への説得が必要。ただし、長期的に見れば、回収ができる。

・各社の経営層がこのフォーラムへ参加できれば。

< 中長期的にだいじなことがなぜ、日本で進まないのか ~3つの理由~ >

1.炭素税、排出量取引がない

だからこそ、炭素にお金がかかっていない余力のある今、投資しておくべき(今は猶予期間と思い、準備して再エネに投資しておく)。

2.社長の在任時間が短い(=時間軸が短い)

株価・株主に左右される。企業が短期視点になってしまう構造的な問題。

3.生活者・消費者の意識が低い

格差・生活防衛の影響もあり、環境への意識の低さ(年々関心が下がってきている)。

もしかしたら、日本の石炭火力はじめ、資源が座礁資産(※)になる可能性もあり、事業が立ちゆかなくなるかも知れない。今後投資・生産するものが、座礁資産にならないようにするためにはどうしたらよいのだろうか。

(※)座礁資産とは・・・
そこにあるのに使えなくなってしまった資産のこと。帳簿に載っている、地下にある石炭などの資産で、実際は使えない資産。

< 変化を少しずつ起こしていくために・・・・>

外部の長期的な視点・やりとりを増やす(例えば、NPO/NGO)。社会課題を解決するために事業で貢献していくならば、時間軸が長く、専門性の高い研究している活動をしている団体と接点を持ち、新たな視点でともに考えていくことが重要。

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時間の関係で、「水」問題については、以前お送りしてる音声・資料でご確認いただきました。詳細は第39回 世界の「水」問題~沖大幹先生と考える、日本企業にとってのリスクとチャンス~をご覧ください。第40回 企業の環境・CSRを考える:学生との意見交換会は、東京都市大学の学生にアンケートを行い、回答や傾向について、簡単に報告させていただきました。

 4. ESG投資について
第41回 ESG投資の動向~2050年のあるべき市場と経済の姿を考える~

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○【ESG投資の意義――資本主義の3つの限界】

「新しい資本主義」の可能性ーー「資本」概念の拡張、新しい資本主義の形

○【具体的論点】

    • Aiming for A 
    • ポートフォリオのカーボン・フットプリント
    • 工場的畜産(factory farming)
    • 持続可能な漁業
    • サプライチェーンの人権問題:現代奴隷法(強制労働の排除)
    • パームオイル・違法伐採
    • 経営者の報酬の妥当性

【ESG投資をする理由】

    • 超過収益(α)の追及
    • リスク回避
    • 受益者共通の価値
    • ユニバーサル・オーナー

※詳細の解説は「第41回 ESG投資の動向~2050年のあるべき市場と経済の姿を考える」をご覧ください。

○【遅れる日本】

    • 世界のESG投資の残高(2014年):21兆ドル
    • 世界の全投資額の30%(欧州:59%、米国:18%、日本:1%未満!)

ようやく......

2015年9月GPIF(厚生年金と国民年金の積立金、約130兆円を運用)が国連責任投資原則に署名、ESG投資に乗り出す。

5.枝廣の研究・報告

米国の中でも先進的なライフスタイルで知られるポートランド・ユージーン・フッドリバーに訪問(2016年5月)

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<ポートランドのスーパーのようす>
・徹底的な量り売り(マヨネーズ、ドレッシング、油も!)、ローカルな食材を調達。
・安いスーパーでもオーガニックフードが多い。
・サステナブル調達を表示されている例もある。
(例)抗生物質フリー、成長ホルモンフリー、人道的に育てられたお肉 の表記
・一般的なファストフードと値段差もそれほどない。冷凍せず、地元の酪農家と契約をしてお肉を仕入れているところもある。

<学び>


【ポートランド
志のある生産者を育て、広げるネットワークのしくみができている(教育・研究・加工場ネットワーク)。認証機関も間に入り、消費者・NGOともつながっていて、有機的な広がり方を実現している。


ひるがえって、、

【日本】
志ある生産者、思いのある消費者はつながっているが、研究者や国レベルはバラバラ。

→ 個別の取り組みではなく、いかに有機的につなげ、"システム"にしていくことがポイント。

○ 持続可能なしくみ例:CSA(Community Supporte Agriculture:地域支援型農業)※幸せ経済社会研究所キーワード解説より

「CSA」は地域の住民が地元の農業を支えるための仕組みのひとつ。消費者が会員となって生産者に一定額を前払いすることで財政的に支援し、生産者は農作物を消費者と共有します。消費者はCSAへの参加によって、新鮮な野菜などを手にすることができるほか、農業生産に直接参加できる満足感や土地とのつながりを感じることができます。一方、生産者にとっては、天候などにより収穫が左右されやすいオーガニック農業でも財政的な安定が得られるほか、直接販売により高い収益性が得られる、消費者と近い関係性が築ける、市場活動の負担が軽減されるなどのメリットがあります。

→日本の産直システムはCSAのひとつといえます。

その他)CSI:Industry、CSP:Printing(読みたい本を印刷)、CSB:Brewery など事例多数。

【アニマルウェルフェア】動物福祉

動物が意識ある存在であることを理解し、たとえ短い一生であっても、動物の生態・欲求を妨げることのない環境で、適正に扱うこと

例)・ペット生態販売、化粧品の動物実験、ファームアニマル(畜産動物を人道的に飼っているかどうか:認証制度)

 

The Business Benchmark on Farm Animal Welfare 2015 Report

家畜の育て方について正しく企業が実施できているかどうか判断するレポートで、この内容を参考に投資家は、企業と対話(エンゲイジメント)している。

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<調査および結果>

  • 世界の主要食品企業90社(前年より11社増)
  • 食品小売・卸売/飲食店/食品生産者
  • 17カ国(北米・欧州が多く、オーストラリアと中国も入っているが、日本はゼロ)

<アニマルウェルフェアへの方針を公表>

  • 2012年の46%→2015年には69%
  • アニマルウェルフェアの目的・目標を公表:2012年の26%から2015年には54%

 <企業のランクづけ>
23問の問いへの答えによって6グループに分類

1. Leadership >80%
2. Integral to Business Strategy 62 - 80%
3. Established but Work to be Done 44 - 61%
4. Making Progress on Implementation 27 - 43%
5. On the Business Agenda but Limited Evidence of Implementation 11 - 26%
6. No Evidence that on the Business Agenda <11%



冒頭、会場提供いただいた、マンダムさまから自社の活動について、ご紹介いただきました。

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<懇親会のようす>

 

 

 

参加された方の声から

☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか☆

新しい情報、現状の把握。

自分の取り組みを進めるためのヒント。

自分の拡張できている部分を知ること。

異業種の方の環境に対する考え方を勉強できることです。

普段つきあいのない業種、企業の方が環境、CSRに対してどのような考えをもっているのか。

環境に関する最新情報や今後の動向の分析。日本国内ではなく世界の動向情勢。

自分と社会との関係性を知りたくて!

自分のモチベーションを高める。

CSRの世界的な流れなどの情報。

バラトン合宿での議論、最新動向。

意識のリフレッシュ、最近の社会世界の動向へのcatch-up。

世界の動向へのキャッチアップ。自身のモチベーション、好奇心の向上。

CSRの最新情報について知ること、参加企業の皆様の取り組みやご意見を知ること。

☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください☆

世界と日本の差を改めて実感できた。炭素税など、国単位で動かなければ変わらない。個人として何ができるか、できるところから真摯にやっていく。

勉強になりました。いろんな方の意見が聞けて気づきもありました。

期待していたことが得られた。あくまできっかけであるが、広げ方を学んだと考える。

初めての参加であるが、グループディスカッションは発言の機会が生じる点はありがたい。また、海外の動向など、最新の情報も普段入手できないような
枝廣教授からの報告レクチャー情報がたいへん参考になりました。ワークショップの時間は少ないほうが(なくても)よいと思います。

低くなっていた意識を少し盛り返すことができました。

大阪開催はいつも新鮮です。

ストーリーを立てた企画の考え方が必要だと感じました。どのように社内や経営層に伝えていけばよいか参考になりました。

[良かった]振り返り、検討の時間があり、考えながら聞くことができた。[悪かった]ディスカッションの時間をもう少しほしい(二次会で、かもしれませんが)。

World CompactやESGなど、会社全体を動かすために使えそうな概念について学べた。

水やESGなど勉強したいと思えることができた点、committed visionとaspirational visionの違い、ESG投資の初歩的なイントロダクションを理解できた点。

前回の大阪開催でも感じましたが、短い時間でいろいろと考えることが必要なので少し疲れましたが、中身の濃い勉強会だったと思います。


☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください☆

ホームページの更新と会社をもっとアピールして知ってもらうこと。もっとCO2削減でできることは何か? 調達材料の方法の再検討。

当社に座礁資産になりそうなものはないか、確認したいと思いました。

「学び方」そのものを関係者に展開し、自社のパラダイムの転換に活用したい。

情報を発信しつづけること。数値化を行い、説得力のある行動に移すこと。

社内で考える機会としたい。

社内浸透のために使いたい。

情報開示の情報収集について知りたい。

CSA、CSB、CSIがとても新鮮に感じた。地域の仕組みづくりの大切さ、必要性。

生産者としての情報発信だけでなく、消費者としてのコミュニケーションを強めていかねばならないと感じています。

上記(ストーリーを立てた)を意識して企画を立てていきたいと思います。

現在進めている企画。

具体的なRE100 Factoryの実現へ向けた動き。

1万円/t-CO2の根拠を学びたい。ポジティブなトレンドだけでなく、ネガティブなトレンドも学びたい→いろんな情報を統合し、社の中長期ビジョン設定に活かしていきたい。

社内のCSR環境推進を担う部署として、省エネルギーは少し古い考えで、脱炭素に取り組まないとリスクとなることを伝え、活動に活かせたらと思います。

次回のイベント・フォーラムの予定

 

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