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第45回 環境省担当者に聞く「世界のサーキュラー・エコノミー動向」~21世紀の 企業の競争力の源泉にするために(2017年5月17日開催)

2017月04月12日 更新
開催終了レポート
 
開催日 2017年5月17日(水)
対象

イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま

ゲスト

環境省
廃棄物・リサイクル対策部
リサイクル推進室 室長補佐
井上 雄祐 様

アクセンチュア株式会社 戦略コンサルティング本部
サステナビリティグループ シニア・マネジャー
髙橋 信吾 様

ファシリテーター

枝廣 淳子

参加人数

16社・団体20名、枝廣ゼミの学生6名

開催レポート

※パートナーおよびオブザーバー参加の皆さまには、プレゼン資料とともに詳細レポート(ウェブは簡易レポートです)を別途お送りしております。

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1月のフォーラムでは、2017年を展望するための重要なポイントの1つとして紹介した、「サーキュラー・エコノミー」を今回はメインテーマとして取り上げました。

 欧州では、サーキュラー・エコノミーを単なる環境政策ではなく、産業や雇用などの国家的政策としての位置づけにしており、うごきが活発化しています。今年3月に欧州視察に行かれた環境省の井上雄祐さんから、最新動向や内情について、また、リサイクル政策を中心に日本が進めていくためのポイントなどを教えていただきました。その後、ビジネスの視点でアクセンチュアの髙橋信吾さまから、実際にサーキュラー・エコノミーを動かしていくための5つのビジネスモデルや実現している事例などをご紹介いただきました。

 サーキュラー・エコノミーが21世紀の 企業の競争力の源泉の1つとなっていくために、考えていくべきことはたくさんあります。本日の学びをきっかけに異業種の壁を越えて共に考え、日本でもたくさんの事例を創造していけたらと考えています。


 

1. 講演 「サーキュラー・エコノミー(循環経済)~国際的な潮流と日本」

環境省 廃棄物・リサイクル対策部 
リサイクル推進室 室長補佐 井上 雄祐 氏

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 井上 雄祐 氏

1.「サーキュラー・エコノミー」の概要

これまでの経済モデルは、天然資源の「調達」→「製品の製造・販売」→「消費」→「廃棄」という一方通行的な「直線経済(Linear Economy)」のことを示していたが、「循環経済(Circular Economy)」は「製品の製造・販売」→「消費」の後行程が異なる。「廃棄」ではなく、廃棄物を回収・管理をおこなって再資源化し、資源循環させる経済のことをいう。今後、天然資源の確保・供給が難しくなることを考えると、天然資源の輸入への依存や利用を減らすことはもちろんのこと、製品や資源の価値を限りなく長く保存・維持し、廃棄物の発生を最小限化することが重要である。日本においても、持続可能で低炭素かつ資源効率的で競争力のある経済への転換が今求められている。

<EU全体の方向性>

【廃棄物指令の見直し内容】

2030年までに家庭ごみのリユース・リサイクル率を65%へ(現行では40%)
2030年までに容器包装廃棄物のリユース・リサイクル率を85%へ
2025年までに容器包装プラスチックのリユース・リサイクル率を55%へ(現行では35%)
※達成できない場合にはペナルティーを科す。

【産業界の反応】

循環経済については、産業界も長期の資源調達リスクへの対応につながるため、賛同している。

【EUサーキュラー・エコノミー行動計画】

循環経済アクションプラン数は、54の取り組みからなり、包括的に進捗状況をみている。

【サーキュラー・エコノミーによって見込まれるEUへの効果】

<2030年までに>
【GDP】+7%
【コスト】74兆円の削減
【雇用】17万人の直接雇用(2035年までに)
【温室効果ガス排出】2~4%削減

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2.循環経済に向けたEU等の取り組み

  • 【プラスチック・食品廃棄物の削減】(フランス)
  • 【容器包装リサイクル】(ドイツ・フランス)
  • 【家庭ごみの一括選別システム】(オランダ)
  • 【家庭ごみの高効率エネルギー回収システム】(ドイツ)
  • 【コンパウンド】(ドイツ、フランス)

3.我が国の循環経済のポテンシャル

<市民の高い分別意識>

日本全国の家庭ごみの分別区分数は平均して10~13分別。ペットボトルと容器包装プラスチックの分別は他の国では行われていない。また、中身を洗浄してきれいにしてから出すことも日本独自であり、大きな強みの1つである。

<容器包装リサイクルフローと資源価値>
これらのことから、日本が今後進めていくべき点は少なくとも二つあると考える。

①    世界の循環経済に向けた対応やマーケットをしっかりと見定め、我が国の強みを生かしながらリサイクルなどの3Rを徹底させていくなど更なる進展を図っていくこと

②    工程プロセスがシンプルなヨーロッパにおいて既に価値が出ていることから、それをヒントにコスト削減や合理化できるところを探る

2.問題意識有・井上さんの講演を伺っての気づきや質問

Q.サーキュラー・エコノミーモデルだとなぜ、経済効果があるのか?

Q.日本は諸外国に比べて分別がしっかりしている、EUはリサイクルしたものが循環している。日本がリサイクルしたものを循環することが上手くできていないはなぜか?

Q.日本の再生材の価格が安価であるのはなぜか?また、需要はどうなのか?

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3.【講演】「サーキュラー・エコノミー -潜在価値から利益を創造する新成長モデル-」

アクセンチュア株式会社 戦略コンサルティング本部 
サステナビリティグループ シニア・マネジャー 髙橋 信吾氏

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サーキュラー・エコノミーが求められる背景

3つの社会的な背景が存在している。

1.社会環境:

資源制約・環境制約が厳しくなる一方で、未利用の廃棄物・副産物や低稼働率の製品や設備の潜在価値が莫大に存在している。

2.消費者意識:

特に若い世代を中心に、モノ消費からコト消費への消費に対する価値観の変移が起きていることと、機能・デザインに対する強いこだわりや圧倒的に安い価格のお得さを求めるようになっていること。

3.技術の進化:

IoT/AI等のデジタル技術の発達により、顧客、サプライヤー等のステークホルダーと幅広くつながることが可能になり、従来に比べて、情報伝達にかかるコストが小さくなっている。資源制約、消費者の価値観の変化、デジタル革命の状況下において、未利用潜在価値を顕在化させて成長できる新たなビジネスモデルが求められている。

サーキュラー・エコノミーモデルに転換した時の経済効果として、2030年までに約4.5兆ドル(507兆円)の経済効果が見込まれている。

サーキュラー・エコノミーの5つのビジネスモデル

  1.  循環型サプライ
  2.  回収とリサイクル
  3.  製品寿命の延長
  4.  シェアリング・プラットフォーム
  5.  製品のサービス提供

<参考図書> 2016年11月出版

サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略

ピーター・レイシー、ヤコブ・レクトヴィスト著 アクセンチュア・ストラテジー訳

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4.枝廣からの解説・共有

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【日本海ガスさまの取り組みの紹介】
パートナー企業でもある日本海ガス株式会社(本社:富山県 以下、日本海ガス)様が「サービスを売る」取り組みをしています。

通常は都市ガスやガスファンヒーターなどを販売していますが、2001年9月より、「あたたかさ」を販売することを始めました。ガスファンヒーターは、季節品のため、冬場以外の保管に場所もとり、メンテナンスも大変です。
そこで、日本海ガスでは10月~4月末までのシーズン期間、ファンヒーターを3,000円の定額で貸し出しを始めました。
配達・取り付け・回収もすべて日本海ガスが行うため、利用者は収納場所や初期投資、手間などは一切不要。また、日本海ガスにも4つのプラスの効果がでています。

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<まとめ>
この事例からわかることは、「製品のサービス化」をしたことで、新たな売上げや地元の雇用創出につながっているだけでなく、全社員がお客様と直接向き合うことで、関係性が深くなり、教育効果や新たなビジネスモデルづくりにつながっている。また、自社でサーキュラー・エコノミーについて考えるポイントとしては、業界やセクターを超えて考えることが重要です。当然ながら、自分の業界の廃棄物は同業界では不要で価値がないものだが、その廃棄物に価値を見いだしてくれる他の業界を探し、つながることが大事。このイーズ未来共創フォーラム異業種勉強会の場をぜひご活用してください!

5.共有タイム:バードフレンドリーコーヒーについて

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住友商事株式会社 サステナビリティ推進部
森 優子さま

住友商事が取り組んでいる、コーヒー1杯から始められる環境保全事業。一般的なコーヒー農園は生産性を重視し、木を伐採してコーヒーを栽培しますが、バードフレンドリーコーヒーは、渡り鳥の住処となる木を伐採せずに、木陰でコーヒーを栽培している。そのため、バードフレンドリーコーヒーの農園は通常のコーヒー農園に比べ、4倍以上の生物多様性と渡り鳥の保護につながる。また、木陰で適度に豆にストレスがかかることで、ゆっくりと熟成し、芳醇で香り高いコーヒーとなる。収益の一部はアメリカのスミソニアン研究センターに送られ、渡り鳥の研究・保護に使用されている。

  

<参考>

○エダヒロの共創日記 (第45回異業種勉強会を開催しました

2017年5月10日(水)開催:幸せと経済と社会について考える読書会『サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略』を読む

 <事務局よりお知らせ>

  • 今年はすべてのフォーラムに東京都市大学 環境学部枝廣研究室のゼミ生が参加させていただくことになりました。お世話になりますが、どうぞよろしくお願いします。
  • 次回は7月19日(水)で、「SDGs」を予定しています。ぜひ、奮ってのご参加、お待ちしております!

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      ゼミ長挨拶              懇親会のようす

参加された方の声から

☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか(抜粋)☆

サーキュラーエコノミーのもたらす企業、社会の変化(成果)について学びたかった

日本とEUのサーキュラーエコノミーの違い

日常では学ぶことができない情報

サーキュラーエコノミーや国内外のリサイクル動向について最新動向を把握するため

サーキュラーエコノミーの本当の姿を知る、理解することです

資源循環リサイクルのこれからを知りたいと思っていました

サーキュラーエコノミーと住宅の関係

サーキュラーエコノミーについて海外の動向の把握と日本の影響

「サーキュラーエコノミーとは何か?」を本質的に理解したい(4件)

ヨーロッパの動向、日本の現状について知りたいと思いました。

サーキュラーエコノミーという言葉について、何となくのイメージ(3Rみたいなもの?)しか持っていなかったので、その定義と具体的な事例を知りたかった。

日本で進めていくうえでの課題ポイントを聞くこと

具体的な取り組みや難しさ

企業、行政、市民のそれぞれの役割

☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください(抜粋)☆

早速仕事に活かしたいと思います(企業への提案や今後の企画について)

何が本当に効率化につながり、持続的な社会を構築できるか

具体的にはすぐに浮かばないですが、かなり、これからの生き方に影響があったと思います。

サーキュラーエコノミーについて考える視点を学ぶことができたので、より深く考えていきたい

自治体としてどのように取り組んでいけるのか、法制度が変わっていく可能性があるのか、さらに学んでいきたいと思います。

まず社内にサーキュラーエコノミーについてフィードバックしたい(2件)

「サーキュラーエコノミー」の考え方で、新しいビジネスについて企画してみようと考えています。

消費者のマインドは何によって変わるか?法律なのか?企業なのか?消費者自身なのか?また、それらはどう一丸となれるのか?

「製品からサービスへ」をより具体的に考えていきたい

「サービスとしての製品」について、自社の場合であればどんなことが出来るか考える。

「私たちは何を売っているのか?」について自問することから始めたい

自社へ持ち帰り、何ができるか、求められるかなどディスカッションしたいと思います。
わかりやすく伝える(特に危機感)

次回のイベント・フォーラムの予定

次回は7月19日(水)開催します。テーマは「SDGs」を予定しています。ぜひふるってのご参加をお待ちしております!

 

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