ホーム > 異業種勉強会 > イベント・フォーラム > 第54回 長期戦略懇談会の提言と企業・地域にとっての意味合い(2019年5月16...

異業種勉強会 イベント・フォーラム

第54回 長期戦略懇談会の提言と企業・地域にとっての意味合い(2019年5月16日(木)開催)

2019月04月03日 更新
開催終了レポート
 
開催日 2019年5月16日(木)
対象

イーズ未来共創フォーラム 企業・団体パートナーさま
オブザーバーの皆さま

ゲスト

外務省 国際協力局 気候変動課長 孫崎 馨 氏

環境省 地球環境局総務課 低炭素社会推進室長 木野 修宏 氏

経済産業省 産業技術環境局 環境政策課長 飯田 健太 氏

ファシリテーター

枝廣 淳子

参加人数

22企業・団体30名

開催レポート

54forum_JE.jpg 54forum_title.jpg

今回のフォーラムでは、「長期戦略懇談会の提言と企業・地域にとっての意味合い」というテーマで、皆さんと考えます。

長期戦略懇談会には、私も10人の委員の一人として参加し、議論を重ねてきました。そして、4月に第5回会合が開かれ、最終提言をまとめました。安倍首相に提出したその内容は、かなり踏み込んだ野心的なものになっていると思います。

今回はこの内容について、3省(経産省、環境省、外部省)が連合して務めた長期戦略懇談会の事務局の担当者をお招きして、じっくりお話をお聞きします。提言や戦略案の解説だけではなく、資料だけでは読み解くことのできない意味合いについても伺います。また、私からもこのプロセスに委員として参加していた枝廣の見る「大事なポイント、今後に向けての読み」をお伝えします。

今後の企業経営や地域にとって、どのような意味があるのか、提言を受けて、何がどのように変わっていくのか、自社や自分たちの地域の長期戦略を考えてみる機会になればと願っています。

6月末に開催されるG20大阪サミットに向けて、大事なポイントがどのように政策に落とし込まれるかもしっかり注目していたいと思います。


. 問題意識や課題の共有

フランスやイギリスでは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると宣言、ドイツでも同様の議論をスタートさせると発表した。パリ協定を受けて、欧州勢の気候変動対策への動きが加速している。対して、日本の長期成長戦略をどうなるのか。国策としての動きは企業や地域にとっても大きな意味を持つ。

これまでは環境対応と言えばコストアップで、マイナス要因として考えられてきたが、時代は変わり、成長戦略と同軸と考えられるようにはなってきたが、実際の足下ではどう捉えられているだろうか。

 ・問い:パリ協定を受けて、日本の長期成長戦略について、どう考えるか。疑問と思うことは何か。聞きたいことは何か。

 2.概要と解説「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会 提言」
環境省 地球環境局総務課 低炭素社会推進室長 木野 修宏 氏

 <懇談会設立背景>

・パリ協定とは、途上国を含む全ての主要排出国が対象となる内容で、日本の中期目標は、2030年までに2013年度比26%削減となっている。そして、協定で掲げる長期目標は、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることである。これを達成するためには、今世紀後半までに世界でのカーボンニュートラルを実現しなければならない。

 ・パリ協定では、この目標を達成するための取組の一つとして、各国にいわゆる長期戦略の策定を要請している。そこで日本では、安倍総理からも昨年の未来投資会議の場で、これまでの常識にとらわれない長期戦略策定に向けた新たなビジョン策定の指示があり、そのために設置されたのが、有識者懇談会である(正式名称:パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会)。メンバーは産業界・金融界・学会など各界の有識者のほか、地域の視点から、森富山市長からなる10名の委員と、事務局として外務省、環境省、経産省、内閣官房の関係省庁が連携して、検討作業を進めてきた。

 <流れ
・懇談会では、2018年8月から5回開催し、基本的な考え方について議論を行い、今年4月2日に提言を安倍総理に提出。その後、政府においてその提言を踏まえた、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)」(案)を作成した。この案に対し、広く国民からの意見を募集し、必要に応じ反映した上で、6月末に開催されるG20大阪サミットまでに提出することになっている。

(配布資料1)

54forum_shiryo1.png

54forum_shiryo1_1.png

<~解説~「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会 提言」の内容について>
(参考:提言書 配布なし)

・全体として、提言に盛り込まれた各分野のビジョンと政策の方向性に添って、政府の立場で政策を具体化、肉付けする形で長期戦略案を作っている。

・第一章「気候変動に関わる最近の情勢及び変化」及び第二章「長期戦略の策定に当たっての視点」では、問題意識とどのような思いで戦略案を作っていくのかという意思が込められている。

資料2 ~パリ協定長期成長戦略案のポイント(横)~

 54forum_shiryo2.png

第1章:基本的な考え方

野心的なビジョン:脱炭素社会を目指す。実質排出ゼロを掲げる。

2050年までに80%の温室効果ガス排出削減に取り組むことは、現在の政府決定を踏襲。懇談会提言を踏まえ、脱炭素社会を「今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指す」という言葉が入ったのは、大きなポイント。

実現に向けた基本的考え方としては、ビジネス主導の非連続なイノベーションを通じた「環境と成長の好循環」を実現すること、また、CO2削減を希望の持てる明るい社会像を描き行動を起こすなど。社会像は、戦略案では敢えて国が具体化せず、地域ごとなどの関係者とニーズに応じて具体化していくことになるが、SDGs達成、地域循環共生圏、デジタル社会を要素として入れている。

3.枝廣が考える大事なポイント、今後に向けての読み~委員として参加して~
委員の間で意見が分かれた論点について

1)野心的なビジョンをどこに定めるのか

2)IPCC1.5℃レポート

3)石炭火力の位置づけ(国内、海外への輸出)

4)国内の削減と海外の貢献をどう考えるのか

5)カーボンプライシング

4)外務省の視点:解説と質疑応答
外務省 国際協力局 気候変動課長 孫崎 馨 

会場質問:「G20大阪サミットが終わったら、それでおしまいではないですよね」に対し、

→この戦略は、6年程度を目安として、情勢を踏まえた検討を加えるとともに必要に応じて見直すことになっているので、レビューと実践をおこなっていく。

 <戦略案が物足りない、という意見に対して>

個別の論点で物足りない意見はもちろんあるので、そこをどうやっていくのか考えていかなければならない。例えば、河野大臣は、海外の石炭火力発電の建設への支援を「国際的な流れを踏まえ、必要に応じて見直す」と述べているので、そういう意味ではこの提言も出して終わりではなく、進めて行く中でより注力していくものもあれば、そうでなくなってしまうものもあるだろう。

 <ガス業界について>

厳しい立場のガス業界については、TCFDにヒントがあると考えている。先行きが見通せない時であったとしても、気候変動を踏まえた、財務情報の開示をする際に、自社のビジネスチャンスの説明ができる企業は投資価値が上がるのではないだろうか。ビジネスチャンスを見つけられれば、企業としてもリスクが小さくなるし、施策を進めていく際も、金銭面でもレバレッジが効いてくるのではないか。

 <補足>

環境省 地球環境局総務課 低炭素社会推進室長 木野 修宏 氏

 <本気度について>

6月のG20大阪サミットを目的にしているだけではない。長期戦略を作ること自体は、G20が具体化する前からの既定路線であって、しっかりしたものを作ろうと準備をしてきた。

「脱炭素社会」と表記されたのは本当によかった。例えば、2年前であれは「カーボンニュートラル」と言う言葉が政府の戦略、計画で使われる雰囲気はなかった。一年半前くらいから少しずつ世の中の受け止めが変わってきている。政府だけなく、懇談会の議論も経て産業界も含めて「脱炭素社会を目指す」と言えたこと、今回の大きなポイントでもある。

 <地域創生について>

環境省として「地域から脱炭素社会を考えたい」と思っている。地域環境共生圏を各地域で具体化し、実現していきたい。CO2を減らすことのみが目的ではなく、ありたい地域の姿を実現する過程のなかで、結果的にCO2を減らしていければよいというスタンスを持ちつつ対話を進めたい。

 <枝廣のコメント>

地域の視点を提言に入れるよう繰り返し話をしていたので、入っていてうれしい。

また、「脱炭素」という言葉が入ったのは画期的。委員会では、「低炭素」ではないか、という意見も出たが、究極の姿を目指すならば、「脱炭素」社会ということで盛り込まれた。脱炭素社会とは、カーボンニュートラル、排出量・吸収量を均衡となること。その途中(2050年)で、80%削減を目指すことになっている。

5.経産省の視点:解説と質疑応答
経済産業省 産業技術環境局 環境政策課長 飯田 健太 

<今回のポイント「2050年」>

これまでは、90年比の京都議定書、2012年、30年など、時間軸が短いものが多かった。

目の前の守らなければならない目標という意識で、できるか、できないかの議論になっていた。今回は、2050年ということで、積み上げでないビジョンとして先の議論をしている。もちろん、今ある技術そのままを使っていては、2050年の目標を達成できるものはないので、方向感を持って、経産省、環境省、そして外務省とともにしっかりやっていこうとしている。

異なる立場であるため、違う言い方があっても、同じ方向性で同じ事を言っていると思っている。

<大きな方向感を持って進める>

長期懇では、2050年を設定した時には積み上げて議論するのではなく、大きな方向感持って進めていくことが大事な根幹になっている。個々の取り組みが十分か、不十分か、という話のレベルではなく、社会全体として80%削減、ゼロを目指していく取り組みをしていこう、という中身になっている。目標を達成できなかったからといって、罰則はない。これはターゲットではなく、ゴール。「Just started journey」。

6.会場提供企業さまより、ご活動紹介:

  • 味の素さま クライアントイノベーションセンターについて バイオ・ファイン研究所 高野さま

昨年6月オープンした施設。商品ではなく、アミノ酸をコアとした技術を展示している。最新のICT技術を導入し、ビジネスパートナーとの新価値・新技術を共創することにより、「健康なこころとからだ」「食資源」「地球持続性」における社会課題解決への貢献を目指している。

 【主な施設内容】

(1)  イントロダクションスペース
当社の歴史や当社グループの技術を通じた社会課題解決に貢献する取り組みなどを映像で紹介。

(2)  テクノロジースペース
当社グループが保有する技術との融合により創出される、社会やビジネスパートナーが抱える課題に対するソリューションをイラストや動画、体感などを通じわかりやすく紹介。社会課題解決への貢献につながる当社グループの食品・アミノサイエンス事業全領域の内、14のカテゴリーの37の代表的な技術。

 (3)  デジタルアイディエーションスペース
社会やビジネスパートナーが抱える課題を共有し、解決に向けて、最新のICT技術を導入し、新価値・新事業の共創を目指した討議を深め、研究テーマを創出。

 (4)  コンベンションホール
講演会やポスターセッションの開催が可能なコンベンションホールを併設し、最先端の研究内容を社内外と共有するとともに交流を推進。


 <事務局よりお知らせ>

参考URL

<つながりを読む>

「パリ協定長期成長戦略懇談会」提言までの5回の会合の振り返りと主な論点 (2019年04月03日)

「パリ協定長期成長戦略懇談会」提言のエダヒロ解説<内容編>前編 (2019年04月04日)

「パリ協定長期成長戦略懇談会」提言のエダヒロ解説<内容編>後編 (2019年04月13日)

江守正多さん「地球温暖化対策 なぜ1.5℃未満を目指すのか-IPCC特別報告書を読む」(2019年04月23日)

<エダヒロの共創日記>

 第54回イーズ未来共創フォーラム異業種勉強会を開催しました!(2019年05月23日)

 ◇ 次回フォーラムの予定

次回は7月18日(木)の開催を予定しています。脱炭素化社会実現に向け、企業の気候変動対策はどうあるべきかをテーマに、ゲストスピーカーは、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(以下、JCLP)で事務局をされている、松尾雄介さまをお迎えします。奮ってのご参加をお待ちしております。

54forum_konshinkai_NEW.jpg

        懇親会のようす

参加された方の声から

☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか☆
長期懇策定までの議論の過程について

日程、「70年」記事の意味について

各省庁の立場での戦略の視点

地域とパリ協定(長期戦略)との関わり方

自分では読みきれない資料の読み解き

パリ協定に対する日本政府の取り組みの姿勢について

色々な企業の方たちとの対話(複数)

パリ協定について深く学ぶ

提言そのものの解説

プロセスにおけるこぼれ話

異業種の方と同じ課題についてお話してみたかった

さまざまな角度の人たちからの意見、考えを期待している

政府の長期目標について詳しく知りたい

パリ協定達成に伴う政府戦略の実情について、手ごたえを感じたい

政策と方針、ビジョンの理解

長期戦略策定における文字から読めない所を聞きたい

要点と裏話を期待する

提言の文言の背景事情

各省庁の見方の違い

懇談会内の議論の状況

長期成長戦略への思い

環境問題への対応に向けた3省の具体的政策

枝廣さんご自身から提言作成の裏話と、「提言」と「戦略案」が違うというコンプレインを伺いたい

☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください。☆

異業種勉強会ということもあり、様々な視点からの意見を聴く良い機会になった

グループワークにより、他業種の方の考えを知ることができて良かった

虫の目、森を見る視点、両方大切ですが、具体的なアクションを起こすにはたくさんの事例も学びながらと思います。気づきもありました。

3省庁の方の素直な意見

長期戦略の背景まで聞くことができ、勉強になった

対話する時間が少なかった

枝廣さんのコメント、言葉が入らなかった経緯、etc. 大変おもしろかった

本当に様々な業種の方とお話しすることができて、とても勉強になった。各立場からの話を聞け、それぞれの考えがあると思う。もっといろいろな企業がつながり、協力しあっていけると、より良い社会になっていくと思う

国、企業、双方の意見を聞けて良かった。それぞれの考え方、意識のギャップの埋め方を聞けるとさらに良かった

勉強不足であったため、今後の筋道が見えてきて良かった

実際に参加企業の方とのディスカッションをしてみて、勉強になった。ゲストスピーカー、枝廣さんの話も実際に戦略を作られた実感がリアルに伝わってきた

戦略案の資料を読むだけでは分からないポイントが理解できて、大変有意義だった。ありがとうございます。最後のセッションでの飯田課長のお話が大変良かったです。企業に対して「甘えんな!」ってことですね

各省庁が一同に会する機会は貴重で、興味深く聞いていた

ビジョンと目標(計画)がなければ、物事は進まない(ビジネスの基本では?)

難しい話だったが、対応しなくてはならない

横のつながりでアイデアをもらえた

枝廣さんから懇談会の中身が聞けたのが良かった

各省庁の各立場からの意見を聞けたこと、METIもいい方向に変わってきたように感じる

カーボンプライシングについてもう少しお話を伺いたかった(味の素様には会場案内等、大変感謝いたします)

3者の考え方、方向性を一度に伺えた

戦略に向けた方策以外の話(そもそも論など)

☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください。
実現に向けたイノベーション技術を考えていくといったワークショップなどがあると良いのかなと思った

自社の環境戦略の立案に役立てたい

社内でのセミナー、クライアントへの提案に活用させていただきます

まだ知識がうすい部分があると感じたので、勉強したいと思った

自分のまわりでまず何ができるか?

地元、北海道経済同友会の提言(再エネ普及に対する)に生かしていきたい。6月中旬に発表予定

今までの自分と関わることができなかった方と関われたので、視野が広がった。視野を持って取り組みたいと思う

自らのサーキュラーエコノミーの法人活動へ生かしたい

サービス展開に活用したい

現場側(工場、市民等)の意見が聞ける場が欲しい

他者にも話を推進して、さらなる勉強を継続したい

飯田課長が言っていたように、企業としては競争ととらえていきたい

大変刺激を受けたので、ぜひ社内に広め、今後の業務に生かしたい

中長期計画に提言を出したいと思う

事業戦略のヒント

イノベーションについて何が行えるか考えてみたい

地方ガス会社として、将来を真剣に考えるフェーズにあることを改めて痛感した

自社の環境、温暖化方針への反映

次回のイベント・フォーラムの予定

次回は7月18日(木)の開催を予定しています。『脱炭素化社会実現に向け、企業の気候変動対策はどうあるべきか』をテーマに、ゲストスピーカーは、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(以下、JCLP)で事務局をされている、松尾雄介さまをお迎えします。奮ってのご参加をお待ちしております。

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ