開催日 | 2019年10月24日(木) |
---|---|
対象 | ・イーズ未来共創フォーラムの企業(団体)パートナーの皆さま ・お試しでの参加希望の皆さま |
ゲスト | |
ファシリテーター | 枝廣 淳子 |
参加人数 | 14社・団体16名 |
2019年の異業種勉強会も海洋プラスチックから始まり、長期戦略懇談会の提言、企業の気候変動対策、そしてSDGsx地域課題・社会課題 実践編まで、多様な内容で1年間皆さんと学んで参りました。大阪フォーラムでは東京で開催された異業種勉強会(5回分)の内容をポイントでまとめ、2時間に凝縮してお伝えする回ですが、今回は2019年の年初に予想した流れと10ヶ月近く経った今と比べてどうだったかについても振り返りつつ、「2019年への展望」につながるような追加の情報提供とディスカッションも行いました。
この一年注目してやってきたこと、今後重要になっていくと思うこと
※話の流れから、第53回を最初にお話ししました。
年初のフォーラムは、ゲストをお招きするのではなく私が講師を務めています。前年の振り返りをしながら、今年度の企業経営・環境経営を考えるうえで、押さえておくべき国内外の最新動向や事例、大事なポイントやキーワードについて解説をしました。今年も2018年自社としてできたことや力をいれていること、逆に手が打てなかったことや新たな課題について考えたり、環境メールニュースの読者(約1万人)対象に調査した、地球・世界・日本でのレベルでの「2018年の持続可能性に関わる10大ニュース」や「2019年、持続可能性に関わる注目の動向」などの結果報告も紹介しながら、参加者と2019年を考える機会としました。
- 第53回詳細レポートはこちら
開催から一年近く経って内容を見てみると、SDGsがもっとあがってきている。1年といってもかなり変化が出てきている。
<トレードオフを超えて、全体最適へ>
2.第52回 環境省担当者に聞く「海洋プラスチック問題」~企業はどう対応すべきか】(2018年11月開催)
ゲストスピーカー:
環境省 環境再生・資源循環局 リサイクル推進室 係長 井関 勇一郎氏
- 第52回詳細レポートはこちら
(エダヒロの解説)
<プラスチック問題>
<プラスチックの本質的問題>
→プラスチックが便利だったこともあり、プラスチックが生まれて100年余りの間に生産量が激増し、本質的な問題が大きくなってきた。
<EUのプラスチック戦略>
日本ではプラスチック問題は環境問題(=環境省担当)だが、欧州では産業政策。欧州ではサーキュラー・エコノミーという大きな流れの中で位置づけられている。使い捨てプラスチックへの規制:拡大生産者責任、使用禁止(2021年~)。
<日本政府の動き>
プラスチック資源循環戦略から:バックキャスティングで海洋プラスチック憲章より高い目標を定めるというところから始まっている。
ヨーロッパ:産業政策が入り口。今後原材料がどんどん高くなり、入手困難になる。産業界が安価で安定した産業用の原材料を確保するためには、バージンのものではなく、リサイクルのものの循環を作る必要がある(=入口の確保)。
日本:ごみの埋め立て地がなくなるから、ごみをできるだけ最終処分場に持っていかないようごみを減らすのが元々の始まり。出口を減らす。
【日本企業のうごきと姿勢】
3.気候変動
今回「温暖化の悪循環からの脱出」というプレゼンデータを作成し、PDF版をウェブにアップしている。台風の勢力が強くなり、被害が拡大した今年。これが温暖化と何か関係があるのか、つながりがどうなっているのかについて解説しているので、もし使える場面があれば自由に使っていただければと思う。-----------------
4.第54回 長期戦略懇談会の提言と企業・地域にとっての意味合い
ゲストスピーカー:
- 第54回詳細レポートはこちら
<長期戦略懇談会>
パリ協定下で日本の長期戦略を考えるための委員会を安倍首相が立ち上げたもので、エダヒロも委員として参加した。昨年の8月に立ち上がり、今年の4月に提言を行った。今回、合同事務局を担った3省(外務省、環境省、経産省)にゲストに来てもらい、長期戦略懇談会の提言の意味合いについて話してもらった。
<ポイント>
「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を日本でつくっていく」ということ
長期戦略懇談会の提言が企業の中に直接影響がまだ感じられないかもしれない。「温暖化の目標では日本は2050年で80%削減、そのあと後半のできるだけ早期に実質ゼロ」を現状うたっている。
・カーボンプライシング
このときにもうひとつ大きな議論は、最終的に提言に入らなかったものでカーボンプライシング。本当に大きく減らそうと思うとカーボンに価格を政策的につけることをしないと、心持ちや気合いだけでは減らせない。「出す人は払う」いう形にしないといけない。カーボンプライシングについては提言の中では両論並記になって結論としては出せていない。ただ、カーボンプライシングは早晩、政府の中では議論が始まってくるだろうと思う。
・企業としては考えておくべき事
欧米のカーボンプライシングの価格や、社内でカーボンプライシングをやっている企業の価格は現在大体30ドルから35ドル位。世銀の報告によれば2℃目標を達成するためには50ドルから100ドルのカーボンプライシングが必要だという研究結果が出ているので、10,000円ぐらいで計算し、コストとして見積もっておくこと。これだけ温暖化の被害が顕在化してくればそうした動きも加速するだろう。
・石炭火力発電の扱い
先進国の中で石炭火力を増やそうとしているのは日本だけ。計画中ものがもし全部稼働するとなるとCO2が1割増えるとも言われている。 委員会では、海外への石炭火力発電への支援も止めていくべきという強い意見と、それは提言に入れるべきではない、という意見が分かれたところでもある。
-------------------
5.第55回 脱炭素化社会実現に向け、企業の気候変動対策はどうあるべきか
ゲストスピーカー:
- 第55回詳細レポートはこちら
昨今、COPなどの気候会議には、グローバル企業の経営者が来るようになっている。理由は、気候変動について経営課題、危機感を感じているから。ユニリーバの前会長ポール・ポールマンは、「気候変動が進み、社会の格差が広がるところでは安定したビジネスはできない。気候変動を止めて格差を減らすということは、地球市民としての責任だけではなく、ビジネスとして必須だという心持ちでやっている」と言っていた。
カーボンバジェット(炭素予算)
二酸化炭素は2011年までに515Gt排出してきた。2℃の上昇で止めるためにはカーボンバジェット(炭素予算)で言うと残りは275Gtしか出せないことになる。現在1年間に10Gtcずつ出ているので、結構上限に近い状況にある。
化石資源資産への投資家の厳しい評価
化石資源の資産は、帳簿上に計上されているものの燃やせない(掘り出せない)ため、過大評価(バブル)といわれている。掘り出せないリスクから、投資を引き上げるダイベストメントという動きがでてきている。
→地球を守ろうというよりも、自分たちの投資を守る、という冷静な判断で投資引き上げる大きな動き
<企業にとってのリスク>
・物理リスク:新幹線・工場が水没して動かなくなるようなリスクが高まると保険がかけられなくなる事態や、保険会社の倒産がでてきている。
・移行リスク:今後、脱炭素の世界に移行していくとすれば、これまでのやり方を続けると今後売れなくなる時代になる。例えば石炭火力。普通、火力発電所は数十年稼働できるものなのだが規制強化で使えなくなる(=CO2が出せなくなる)。そうすると投資分を回収する前に閉鎖しなければならなくなる。社会が移行することに伴う移行リスクが非常に大きいと言われている。
・責任リスク:カルフォルニア最大の電力会社PG&Eが、山火事に関連して破産。温暖化で気温が上がり、乾燥するため、木が燃えやすくなる。加えて、落雷が増えて、山火事がいまあちこちで起こっている。1℃あがると落雷が8%増えるといわれている。PG&E社の電力網が古くなっていたことも山火事につながっている。そしてPG&E社は3兆円の賠償を求められて破産した。こうした気候変動に関連した訴訟が増加している。
気候リスク(チャンス)見据える。現在の各国目標では2°Cには不足。再エネ革命、EV政策、脱石炭といったあたらゆる努力を続けるとともに、カーボンプライシングや世論の喚起をしていかなければ、2℃シナリオは実現しない。
・JCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)
"気候変動は、社会への脅威"という共通認識の下、脱炭素への転換期において、求められる企業を目指すグループ。
【ポイント】
・多様な企業が脱炭素化実践へ知見を結集。海外の最新知見もいち早く取り入れる
・RE100等の実践・普及を推進しつつ、需要側のニーズを市場や政府に発信
イーズ未来共創フォーラム異業種勉強会パートナーからは、旭化成ホームズ、イオン、富士通、リコーが宣言をしていて、参加20社で日本の消費電力量の約1.4%、購入額1300億円の推計(=需要がある)。現在は29社
対象は年間電力消費100GWh超等の大企業のため、問い合わせの多い意欲のある中小企業、自治体が入れなかったため、RE Actionという受け皿を用意した。
→43企業・団体、総消費電力量約320GWh(大企業3社分、2019年12月現在)
※中央省庁、都道府県、政令指定都市はアンバサダーとして再エネ宣言RE Actionの活動を応援できる。
(参加要件)
日本の場合は市場の問題だけではなくて、送電網の問題等まだまだ解決しなければならないことがあるが、こうした動きがある。
<グループワーク>
温暖化への取り組みで、次のチャレンジは何か。超えるためには何があればいいか。
ゲストスピーカー:
- 第56回詳細レポートはこちら
<ワーク>
SDGs、地方創生、社会課題、このあたりで今までどんな取り組みをしてきたか、もしくはどの辺りに課題がありそうか、今後どんなことをやろうと考えているか
----------------
<リコー経済社会研究所>リコーの取組むSDGsと地域活性化について
2019年の経営方針の中の一つに「社会課題解決を経営の根幹に」→すべての事業活動でSDGsに貢献するとあり、5つの重要課題でも触れている。
・地域活性化ソリューションの中に7つのまちづくりがある(安心・安全、環境、シニア、男女、産業、学び、にぎわい)
(エダヒロの視点)
リコーの技術を提供し、地域活性化ソリューションはビジネスとしてやっている。SDGs的なものは社会貢献とかブランドイメージ的に良いものの、それだけでは続かない。かといって地方とかNGOからお金をいただくのは実際難しいため、よほどの工夫が必要。大きな収益にはなっていないかもしれないが、持続可能なかたちで色々試行錯誤されていると。
------------
<ゴールドウイン>障がい者スポーツとSDGs
障がい者スポーツとSDGsについて。当初は東京オリンピック・パラリンピックが決まったことがきっかけで、スポーツを「する人」「支える人」「応援する人」の3つに絞りサポートをはじめた(企業PRとして)。
→企業PRとしては成果がでたが、選手の課題解決はできていない。
→2017年 障がい者スポーツ用ユニフォーム開発再開(ひとり一人に合わせたもの) →障がい者スポーツを通じて、SDGsの基本的な考え方を学び、CSR活動につなげている
------------
<気仙沼市>気仙沼市とSDGs-持続可能な地方を創る-
日本各地と重なる課題:少子高齢化(自然減)。若者が外に出て行ったきり、外から入ってこない(社会減)。仕事があれば戻りたいと考えている人は多いものの、仕事は少なく、あっても賃金が低い。
1.持続可能な産業の基盤づくり:
インフラの強靱化、地域を牽引するリーダーの育成(人の基盤を作る)
→成果:85名リーダー輩出(3年間)
インドネシアに再生アスファルトを普及/気仙沼市内にムスリムのための簡易礼拝所建設
2.環境との共生への取り組み:
木質バイオマス発電への挑戦、公共施設を中心に、エネルギー地産 地消率7割を目指す、海洋プラスチック汚染対策・施策
(課題)市内でうごくプロジェクトに外部とのコラボレーションやパートナーシップを組みたいが、どこにどう伝えていけば良いのかがわからない。
→異業種勉強会の場が使えるとよい。
------------
<キッズドア>日本の子どもの貧困と解決に向けて
・日本の子どもの貧困の現状:
→東京を中心に無料学習会を開催。大学生・社会人OBがボランティアをしている。夕食を提供し、居場所作りもしている。高校進学率は100%、大学受験もし、合格している子もでてきている。
→企業との協働:ソーシャル・ウェンズデー プロジェクトへの働きかけ。毎週水曜日(ノー残業デー)は、仕事を早めに切り上げて地域活動や社会貢献活動などへ参加をしようという、社員のボランティア参加を促すプロジェクト。
<最後のワーク:来年・来年度、力を入れていきたいことは?>
6.会場提供企業さまより、ご活動紹介:
八千代エンジニヤリング株式会社
大阪支店 環境部 本田 一彦さま
CSRレポート2019 みどころ
河川・ダムの整備を主力事業とする企業。関連する環境整備をどうしていくのかを考えているのが環境部。
<SDGsとの関連>
社会での貢献:
海外でのインフラ整備・教育について:現在はまだ現地の利便性を優先しているため、日本の知見・経験は反映できていない。今後貢献していきたい。
環境での貢献:再エネ、バイオマスエネルギーの利活用
7.事務局よりお知らせ
◇ 次回フォーラムの予定
次回は11月26日(火)、「地方創生への企業の役割」をテーマに開催いたします。奮ってのご参加をお待ちしております。
フォーラムを終えて
懇親会のようす
三原市のおみかん(お裾分けいただきました~皆さんでおいしくいただきながらワークをしました!)
参加された方の声から
☆本日のフォーラムに参加するにあたり、期待していたことは何でしょうか(抜粋)☆
他業種、異業種との交流と情報
最新の環境問題の動向を理解する
脱プラ、気候変動、地方創生、すべてのお話を聞きたいと思っておりましたので、満足です
大人とは
枝廣さんは、今どのようなことに課題意識を向けていらっしゃるのか伺いたいと思いました
昨年と今年のふり返りと、新しい情報の収集、国際社会から見た日本の立ち位置に関する情報など
2時間で、これまでの勉強会の概要を知ること。次に何をすべきか検討するきっかけとする
プラスチック問題についての知見
環境、地域創生の最新情報を学べること
社会、環境動向の再確認
気づきを得る。コミュニティ。これから何をしたいか、にたどり着く
情報共有、勉強、他業種の取り組み状況のヒア
3/14の70周年記念講演のテーマを絞り込むこと。現在の社会課題の概観の機会
最近の情勢のアップデート
☆また、実際参加されて、いかがでしたでしょうか。よかった点、よくなかった点を含め、何でもご自由にコメントください。☆
プラスチック問題の話は、断片的にしか聞いてなかったので、多くの知らない話など聞けて参考になった
みなさんとお話できる機会が、さらなる学びになりとても良かったです。時間が欲しかった!です
情報量が多くて頭の中が整理できないので、まとめられないですが。良かったです。楽しかったです。これからを見つめなおす1日になりました
質問2の期待(枝廣さんは、今どのようなことに課題意識を向けていらっしゃるのか伺いたい)は、満たされました。2017、2018年と、どんなことを考えていたかのレビューから始めてくださったのも良かったです
他の業種の方々との意見交換ができ、視点、考え方、社会への貢献、取り組みの違いなど、を知ることができて良かった
沢山の情報量で全体を俯瞰的に確認ができたのが、ありがたかったです。また、枝廣さんご自身が体験されたこと、気づいたことをお話されるので、印象深くお聞きできました
情報量がとても多かったので、きちんと把握して再整理したいと思います。情報として、資料をお待ちしています
ディスカッションを通して、異業種の方と様々な意見交換ができた
改めてトレンドの再確認と情報のインプットができて良かった
聞くだけではなく、自分の話す時間も多くあり良かった。グループワークは、司会とタイムキーパーを決めたほうが良かったかもしれない
プラスチック問題、特にマイクロプラスチックの発生についてはショックでした。テーブルで共に学ぶ仕組みが良かったです
情報量が多く、消化が大変です。資料をゆっくり見ながら復習します
東京開催で参加した気候変動、SDGsは復習になり良かったです。プラ問題は、ブックレットを読んではいましたが、深刻さを痛感しました。バイオプラと生分解性プラの違いを認識しておかなくては、と思いました。地域循環、共生圏のお話をもう少し聞きたかったです
☆今日学んだことを、どのように活用したいと考えていますか。また、さらに学びたいことなどもありましたらご記入ください。
教育、福祉、人権とつながることが、多々学べた
自社内で進めていくことも含め、いろいろな仕掛けを考えていきたい。他社や他セクターへの働き掛けも、仕掛けづくりを進めていきたい
持ち帰って社内シェアし、業務にも生活にも活かしていきます
いろいろな情報をまずは集めて、自分や社会にどう落とし込むか考えていきたいです
社内への働きかけ(特に、社会との接点の作り方)
実際の業務の中で社会的なサステナビリティ、人の幸せ、人とのつながり、といったことに焦点をあてて活動したいとおもっています
自社の取り組みに活かしていきたいです
枝廣先生の講演をいただき、より多くの方と問題や課題解決の共有を行っていきたい
プラスチック問題の今後について
まず何がしたいか? できるかを実行!
今後の業務に反映
自社製品でプラスチックごみの発生源となる素材の変更を研究して、新製品の開発に結びつけたい
社内へのフィードバック
今日のワークであった「これから力を入れて取り組みたいこと」を、しっかりやっていきたいと思います。長いスパンで見直したり、考えたりできる機会をいただけるので、ありがたいです